よくある若い男女の恋愛話と思いきや、実は人間と動物が結婚しちゃうディープなお話『お若伊之助』【連載】東京すたこら落語マップ(7)
2020年2月18日
知る!TOKYO落語と聞くと、なんとなく敷居が高いイメージがありませんか? いやいや、そんなことないんです。落語は笑えて、泣けて、感動できる庶民の文化。落語・伝統話芸ライターの櫻庭由紀子さんが江戸にまつわる噺を毎回やさしく解説します。
人間が人間以外の存在と結婚する話
「異類婚姻譚(いるいこんいんたん)」とは、人間が人間以外の動物と結婚する話です。世界中に分布し、日本でも御伽草子や民話などにみられます。
落語にある異類婚姻譚は、三遊亭圓朝(えんちょう)原作だと言われている「お若伊之助」。今回は「お若伊之助」の舞台を中心に、谷根千落語散歩とまいりましょう。
※ ※ ※
日本橋は横山町の生薬問屋「栄屋」。ここのお若というお嬢さんが女ざかりの17歳。小町と呼ばれるほどの美人。親御さんも大層かわいがる箱入り娘であった。
そのお若さんが一中節を習ってみたいという。母親はかわいい娘のいうことだから習わせてやりたいのは山々なのだが、若い娘のこと間違いがあってはいけない。
そこでとび頭である初五郎に相談すると、元武士で師匠の“菅野伊之助”を相談された。元武士であり、頭のお墨付きなら固い人だろうと、伊之助を日本橋の家に呼んで一中節を習わせることにした。
ところがこの伊之助は、涼しげな目の様子の良い25歳。そんな若い男女がひとつの部屋で過ごしているのだから、間違いが起きないわけがない。お若の母がこれ以上深い仲になってはいけないと、伊之助に25両の手切れ金を渡し、ふたりを別れさせた。

お若は「根岸御行の松」近くに住む、母の兄にあたる高根晋斎叔父さんの剣道場に移された。周りは武骨な男ばかりで話し相手も居ない。伊之助への思いは募るばかり。ついにお若は、恋煩いで寝たり起きたりの状態となってしまった。
根津の桜が舞うある日、お若が縁側で入り江の鐘が鳴り、花びらを手に取り会いにこない伊之助を恨みながら淵川に身投げをしようかと考えていると、向こうに伊之助がたたずんでいる。部屋に招き入れたことをきっかけに、お若は再び伊之助と逢瀬(おうせ)を重ねるようになった。
おすすめ

New Article
新着記事
Weekly Ranking
ランキング
- 知る!
TOKYO - お出かけ
- ライフ
- オリジナル
漫画