10連けん玉、ツボ押しこけし……東京ギフト・ショーで見つけた工芸品が想像の斜め上を行っていた件

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10連けん玉、ツボ押しこけし……東京ギフト・ショーで見つけた工芸品が想像の斜め上を行っていた件

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国内最大級の雑貨の見本市「東京ギフト・ショー」が、2020年2月5日(水)~7日(金)の日程で開かれています。おしゃれでシックな新商品が居並ぶなかで、逆に目を引くのは「古き良き日本の伝統」を意外な方向へ進化させた面白グッズ。懐かしさも相まって、ついつい欲しくなってしまいそう――?

おしゃれ商品の中で、異彩を放つ面々を発見

 けん玉、こけし、習字、折り紙――。子どもの頃に慣れ親しんだ日本の伝統工芸や伝統文化が今、思わぬ方向へと“進化”を遂げています。令和時代のニーズに応えてか、伝統を後世へ残すための次善策か、はたまた作り手の遊び心か……? 誕生の背景を思わずにはいられない半面、商品そのものとしても実に魅力あふれる顔ぶればかりです。

「それら」に出合ったのは2020年2月5日(水)、東京ビッグサイト(江東区有明)で開幕した「第89回東京インターナショナル・ギフト・ショー 春2020」の会場です。

 出展社数約3000社を誇る国内最大級の見本市で、雑貨をはじめ文房具、キャラクターグッズ、アパレル用品、美容グッズ、日用品、家具、家電……などなど、ありとあらゆる分野の斬新な商品が一堂に会する一大イベント。おしゃれで洗練された新顔の数々が居並ぶなか、「それら」は別の意味で独特の存在感を放っていました。

10個の玉を一度に操る、超高難度のけん玉

 まずは「けん玉」。

 子どもの頃なかなか上達せず悔しい思いをしたけん玉といえば、穴の開いた「玉」がひとつと十字型の木製の剣(けん)が糸で結ばれた形状だったかと記憶していますが、会場で見かけた10連けん玉は、なぜか10個の玉と10個の木製の「皿」部分で構成された不可思議な形状。横幅は実に62cmにも及びます。

「10連けん玉」を手に持つ梅津社長。その場での実演では7個の玉が皿に載った(2020年2月5日、遠藤綾乃撮影)



「遊び方は至ってシンプル、この10個の玉をひと振りで一気にそれぞれの『皿』に乗せるのです。一見難しそうに見えますが、練習すれば案外できるようになりますよ」

 そう話すのは、出展社である山形工房(山形県長井市)の梅津雄治社長。聞けば同社は「競技用けん玉」生産量が日本一という、業界では知らぬ者のいない企業なのだそう。

 けん玉といえば3年連続でNHK紅白歌合戦に取り上げられるなど、ここ数年で再び存在感を表しています。日本けん玉協会(千代田区神田神保町)が主催する競技大会は毎月のように開かれていて、10級~1級・初段~6段までの認定制度には世代・性別を問わないけん玉愛好家たちが挑戦中。ちなみに梅津社長は4段の実力者です。

「この10連けん玉ができるようになれば、珍しさも相まって相当自慢になるはず。ぜひ宴会などで披露してほしいですね」(梅津社長)

 もちろん、10連だけでなく一般的な形状のけん玉も、競技用規格品をはじめ多数製造しているとのこと。集中力・バランス感覚を鍛えることにもつながる点が魅力というけん玉にあって、10連タイプはその究極体とも言えそうです。

自宅で超手軽な写経が可能になる?

 続いて見つけたのが「習字」。

 当然ながら普通の習字ではありません。カートリッジタイプの特殊な顔料(インク)の入った筆ペンでラミネート加工されたツルツルのオリジナル和紙に文字を揮毫(きごう)。少し時間を置いてからティッシュでふけば、見る見る文字が消えていくではありませんか。

 こちらはエポックケミカル(埼玉県久喜市)のその名も「消せる筆ペン」。いわば「ホワイトボードの習字版」のような商品です。消せるボールペンは大手文具メーカーが10年以上前に発売し大ヒットを飛ばしましたが、消せる筆ペンもあったとは知りませんでした。

達筆の担当者が「消せる筆ペン」を使って揮毫(きごう)した文字(2020年2月5日、遠藤綾乃撮影)



 売りは何といっても、硯(すずり)を用意して墨を擦るといった手間を掛けずに、手軽に何度でも習字の練習ができるという点。穂先には獣毛を使用して本格的な書き心地を再現しています。

 同社の担当者いわく、「もともとはお子さんの練習用として開発した商品なのですが、意外にも大人たちに受けています。自宅で気軽に習字をたしなみたいというニーズが想像以上に多かったみたいですね」

 言われてみれば、「お寺での写経が静かなブーム」という話題は数年前から耳にしていたように思います。本品を使えば、それが自宅でより手軽に味わえるということのようです。

 そしてもう1点、本品の特性インクは衣類に付いても墨汁と比べて跡が残りにくいそうで、子どもの頃習字に苦手意識を持った最大の要因が「墨汁で服を汚してしまい家に帰って怒られる」だった身としては、それなら挑戦してみたい、と二十数年ぶりのチャレンジ意欲を駆り立てられた商品でした。

こけし「私たち、かわいいだけじゃないんです」

「こけし」といえば外国人観光客はもちろん、会員制交流サイト(SNS)で「#こけ女」というハッシュタグが広まるほど若い女性からも支持を集める今や和グッズの代表格。日本人らしいチンマリした目や口、表情、鮮やかな彩色が人気の理由のようです。

 しかし丸和貿易(愛知県尾張旭市)のこけしは、ひと味違います。足首のあたりでパカッと台座と本体に分かれて、本体の底面にはツボ押しができる球体が取り付けてあるのです。

台座が外れて、ツボ押しボールが現れるこけし。姉妹品で「舞妓(まいこ)さん型ツボ押し」もある(2020年2月5日、遠藤綾乃撮影)



「ぱっと見では、まさかツボ押し器とは思わないはず。職場のデスクなんかに置いて、同僚に自慢してほしいですね。色付け作業はひとつひとつ職人の手でやっていますから、こけしとしての表情にも満足していただけると思いますよ」(同社の担当者)

 ちなみに当初は外国人観光客向けにと開発した新商品。市場に出回るのはこれからですが、今回のギフト・ショーでは日本人向け商品を取り扱う業者などからも多数の声が掛かったといいます。「こけ女」の皆さん、コレクションのひとつにツボ押し器付きを1体加えてみるのはいかがでしょうか。

パラパラ漫画も日本固有って、ご存じでした?

 会場にはこのほかにも、昔懐かしい文化をベースにした斬新な商品であふれていました。

 例えば青幻舎(京都市中京区)の「自分で作るパラパラブック」は、各ページにシンプルな要素だけが印刷されているミニブックに、自分なりの絵を描き足して色を塗り、自作のパラパラ漫画を完成させるというもの。

 担当者によると、パラパラ漫画は日本固有の遊びらしく、日本のキラーコンテンツであるアニメとも通じるその魅力から外国人観光客にも人気の商品なのだとか。

青幻舎の人気シリーズ「折りCA」。おばけ、こけし、猫など種類もいろいろ(2020年2月5日、遠藤綾乃撮影)

 同社の「折りCA」は、日本の七福神や力士、東京タワーなどを簡単な手順で折り上げられる折り紙カードブックで、こちらもお土産需要の高いシリーズだそうです。

進化を続ける日本の創意工夫と緩さの行方

 それらの商品を見ていて、ふと思い出した言葉がありました。「ジャパナイゼーション(Japanization)」、海外から渡ってきたさまざまな文化を吸収し「日本らしく変えていく」「日本化させていく」といった意味の造語です。

「ジャパンドールハウス」を出展していたビリー(大阪府池田市)の浅見益行代表はこう話していました。

「ドールハウス発祥のイギリスでは、小道具のひとつひとつまで細部にわたって厳密な縮尺にのっとって作るのが決まりのようです。でもそれだとちょっと全体が寂しくなってしまうので、当社の商品はお菓子とかお花のような作品のアクセントになるものは、実際より大きめに設計しているんです。ほら、全体に華があって生き生きして見えるでしょう」

ビリーの「ジャパンドールハウス」。手前は、浅見代表おすすめの駄菓子屋さん(2020年2月5日、遠藤綾乃撮影)



 かつて中国の中華麺をラーメンに、インドのカリーをカレーに、そして英国のドールハウスを「ジャパンドールハウス」に。従来の姿とは異なるものへと“進化”させてきた日本の工夫の力と(いい意味での)緩い規範が、今度は日本古来の伝統にも新たな価値を加えるアップデートを試みているのかもしれない――。「10連こけし」やら「消せる筆ペン」やら「ツボ押しこけし」を見ながら、そう感じさせられたギフト・ショーでした。

 この先私たちをワクワクさせてくれるのはきっと、まだ見ぬ新商品や海外の目新しいグッズだけではありません。日本のお家芸「アップデート」がどんな品物を生み出すのか、楽しみにしながら街の雑貨店を巡ってみるのはいかがでしょうか。

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