都内「小学校プログラミング教育」で生じる、期待と現実の大きすぎるギャップ

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都内「小学校プログラミング教育」で生じる、期待と現実の大きすぎるギャップ

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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2020年度から始まるプログラミング教育。東京都の現状について、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

自治体任せの現状

 新しい学習指導要領が2020年4月から始まります。その目玉は、小学校での英語教科化とプログラミング教育といっても過言ではありません。

 英語は小学3、4年で外国語活動として、小学5年以上では教科として扱われ、成績がつけられるようになります。しかし、もうひとつの目玉であるプログラミング教育は新たに教科が設けられるわけではありません。

プログラミング教育のイメージ(画像:写真AC)



 文部科学省は2017年度に学習指導要領の改定を告示しましたが、具体的な授業内容や対象学年などが提示がされておらず、各自治体任せの状態が続いているのです。

 そこで今回は、新しい学習指導要領の下、東京都が小学生にプログラミング教育をどのように教えようとしているのかを紹介します。

明確な規定がないプログラミング教育

 プログラミング教育と聞くと、多くの人はパソコンやタブレット端末を使った授業を想像するでしょう。また日本政府は、公立小中学校の生徒ひとりに対してICT(情報通信技術)機器1台を推し進めていることから、そのようなニュースを見聞きすれば、誰もが「新しく始まるプログラミング教育用のため」と思うはずです。

 しかし現実的に考えれば、教職員の激務が問題視され、働き方改革待ったなしの状況の公立学校で、パソコンやタブレットを使った授業に関する研修を実施することは極めて困難です。場合によっては、教職員よりプログラミング教室に通っている生徒の方が操作するのも説明するのも上手という可能性があるのです。

プログラミング教育のイメージ(画像:写真AC)

 新しい学習指導要領の中には、「プログラミングを体験しながら論理的思考力を身につける」という文面が数回登場しており、その一環としてパソコンなどの使用を強制することは明確に書かれていません。

 そのため、通常の授業内で論理的思考力を学ばせる――と解釈することもできるのです。東京都も2020年度からスタートするプログラミング教育を、そのような解釈で乗り越えようとする向きがあります。

ICT機器を使わない都の教育研修

 東京都が設置する教職員の研修機関「東京都教職員研修センター」(文京区本郷)のウェブサイト上にある「児童の情報活用能力の育成 - 小学校段階におけるプログラミング教育の推進を通して -」(2018年度)には、公立小学校3校で実施されたプログラミング教育の研修内容が報告されています。

 実際に研修が行われた科目は総合や音楽、算数、社会など。学年も2年生、3年生、5年生など多岐に亘っています。

プログラミング教育のイメージ(画像:写真AC)



 その内容は、授業を通じて生徒が考えたり意見を述べたり、理解を深められたりできるよう指導することを意識しており、実際の教育現場ではICT機器に頼らず論理的思考を伸ばそうとしているのです。

 すなわち、パソコンルームで機器と向き合って授業をしたり、何らかのプログラミング言語を扱ったりするのではなく、従来の授業内でプログラミング教育を行おうとしている意志が読み取れます。

成果が見えにくいプログラミング教育

 公立小中学校でプログラミング教育が行われると決まってから、プログラミング教室の開校ラッシュが続きました。しかし東京都教職員研修センターの報告書を読むに、初年度からICT機器を多用した授業が行われないのは間違いなく、騒いでいるのは世間だけといった印象を受けます。

プログラミング教育のイメージ(画像:写真AC)

 その一方で、東京都教育委員会(新宿区西新宿)はプログラミング教育の推進校を認定し、企業や支援団体と連携して子どもたちがよりよく論理的思考力を伸ばせるよう、取り組んでいます。

 自治体任せであるがゆえ、これには成果の差が出やすい面があります。そしてなにより、英語と異なり、プログラミング教育は本当に力がついたのか、はっきりとわかりにくいのです。

 数年間をかけて、いったいどのような成果や問題点が出てくるのか――文部科学省や東京都に公表義務を課せるべきです。

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