80~90年代のアイドルと芸能界が描いた「空っぽな東京」

1980年代後半、空前のバブル景気を東京で目の当たりにした人たちは今、同じ東京で何を思い、何を感じ、どう生きているのでしょう。その時代を知る編集者の中川右介さんが、アイドル評論家・中森明夫氏の著作をベースに当時の東京を振り返ります。


「新宿区歌舞伎町」でなければ、描かれなかった物語

 この『青い秋』も1970年代後半に三重県から上京した青年が、東京でさまざまな人に出会っていく物語で、その意味でも「東京物語」ジャンルの王道をゆく小説です。

 東京の私立高校に入った「私」が最初に住むのは「東中野のアパート」で、同郷の友人は住むのは「清瀬」(どうでもいいけど、中森明菜が生まれ育った市です)。

 フリーライターになってからは「三鷹の風呂なしアパート」に住み、仕事の相手である出版社があるのは都心。「西麻布の薄暗い隠れ家バー」とか「新宿の路地裏」とか、作中の「私」がいる場所が、全て実名で記されていきます。

 8編のなかには前述の『四谷四丁目交差点』のほかに『新宿の朝』というタイトルもあって、この新宿というのは歌舞伎町のこと。ちょっと怪しく、怖い世界が描かれます。東京は光り輝く都市であると同時に、闇もまた抱え持つ街であることが表現されています。

人影のない朝の新宿区歌舞伎町(画像:写真AC)

 人物は仮名なのに地名は実名なのは、この連作が東京以外では成立しない物語だから。「S区のK町」ではなく「新宿の歌舞伎町」としなければ描けない世界が、ここにはあります。

 作者・中森明夫の分身である「私」は、テレビ局や大出版社の社員ではなく、フリーライターという立場でマスコミの世界を生き、そこでのさまざまな出来事を描いています。「オタク」という言葉を命名したことでの騒動もあれば、宮沢りえ・後藤久美子を思わせる少女たちとの交流も。

 東京そのものが虚構性の高い都市ですが、マスコミはその中でも最も虚構性が高い――というよりも、虚構を生み出す装置です。

 そのマスコミの世界は人間関係が薄いのか濃いのか分からず、「仕事」で知り合い「仕事」で付き合うドライな人間関係でありながら、それゆえの熱さもあったりします。それぞれの「個性」をぶつけあう世界だからでしょう。

 その人間関係の儚さと脆さと虚構性は、欺瞞がゆえに真実であるという、屈折した世界を示しています。

今も東京にいる彼の、「未完の東京物語」


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