外国人に人気の観光地、100年前と比べていったいどのように変わったのか?

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外国人に人気の観光地、100年前と比べていったいどのように変わったのか?

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内田宗治

フリーライター、地形散歩ライター、鉄道史探訪家

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外国人観光客が年々増える一方で、彼らに人気の観光地も大きく変化しています。旅行ジャーナリストの内田宗治さんが解説します。

伏見稲荷大社が6年連続で1位

 英国人が明治時代に書いた日本の旅行案内書を読んでいて、驚いた箇所がありました。京都の案内ページで、伏見稲荷大社が詳しく紹介されていた部分です。1ページ半も割いて紹介しています。京都の見どころの中で7番目に多い行数で、いわばそれだけおすすめのスポットとしているわけです。

明治時代(推定)の芝増上寺三解脱門の様子。ドイツで発行の絵はがきより(画像:内田宗治)



 同書は外交官として活躍したアーネスト・サトウ(編著)による『明治日本旅行案内』(庄田元男訳)で、原書は1884(明治17)年の出版です。近年では、伏見稲荷大社は2013年頃から急に人気となった神社です。それより前は、初詣などを除けば、ほとんど訪れる観光客はいませんでした。旅行ガイドブックでの扱いからみる人気の度合いなら、京都のベスト100にも入らなかったでしょう。

 その伏見稲荷大社を2013年以降、人気の地に押し上げたのは外国人旅行者でした。大人気の発端は、世界十数か国で翻訳出版、アニメ放映された漫画『NARUTO―ナルト』によるとも、SNSでの相乗効果とも言われます。

 旅行口コミサイト大手のトリップアドバイザーによる「外国人に人気の日本の観光スポット」調査で、なんと2014年から6年連続で1位を獲得しています。日本で一番魅力ある観光地だというわけです。

 ここを訪れた外国人が口々に衝撃的だというのが、実際には約1万基あるという朱色の「千本鳥居」がトンネルのように連なる光景です。この光景に外国人は、100年以上前も現在も、日本人以上に心の琴線にふれるようなのです。
 
 日本の観光地では100年以上前と今とで、相変わらず変わらない人気のスポットと、大きく変わったスポットがあります。東京の例を見てみましょう。
 
●明治時代
1位:芝増上寺
2位:浅草寺
3位:池上本門寺
4位:上野寛永寺
5位:徳川家御霊屋(芝)
6位:目黒不動
7位:博物館
8位:宮城(皇居)
9位:二子玉川(鮎釣り)

※『明治日本旅行案内』での記述ページ数の多さより判断

●現代
1位:新宿御苑
2位:浅草寺
3位:明治神宮
4位:東京ディズニーシー
(3位):両国国技館
(4位):東京都庁舎
(5位):根津美術館

※トリップアドバイザー「外国人に人気の日本の観光スポット」2019年全国ベスト30のうち東京の中での順位。()は2018年の順位。東京ディズニーシーは千葉県だが東京都に隣接なので含めた。

 明治時代、現代ともに登場するのが浅草寺です。みやげ店が並ぶ仲見世なども含め、今も昔も外国人に人気の地です。明治時代は寺社と博物館、宮城(皇居)といった、欧米人にとってオリエンタルな魅力を感じる所が並んでいます。

 一方現代は、新宿御苑が1位になっているのが印象的です。東京に住んでいる人でも新宿御苑に行ったことがない、という人も多いのではないでしょうか。外国人に東京のおすすめのスポットを聞かれたとき、自信をもって新宿御苑と答える人がどれだけいるでしょうか。

自然が楽しめるスポットに関心

 外国人に好まれる理由は、都心なのに広い「自然」「緑」があるためです。

2016年3月時の伏見稲荷大社の様子(画像:内田宗治)



 2015年に、東京都が外国人に対して「外国人が東京でしたいこと」について行ったアンケートがあります。それによると、

1位:日本食を楽しむ
2位:自然を感じる
3位:伝統的な街並み・施設の遊覧

となりました。かなり大ざっぱなアンケートですが、外国人は日本人が想像する以上に、東京で自然が楽しめるスポットに魅力を感じていることがわかります。100年以上の歳月を経て、外国人の東京での関心が伝統的なもの、オリエンタルなものから、日本食や自然へと移ってきたといえるようです。京都・奈良はどうでしょうか。

●明治時代
1位:京都御所
2位:西本願寺
3位:東大寺
4位:法隆寺
5位:知恩院
6位:北野天神
7位:御室仁和寺
8位:春日大社
9位:東寺
10位:清水寺
11位:伏見稲荷大社

※出典などは上記東京と同様

●現代
1位:伏見稲荷大社
2位:東大寺
3位:三十三間堂
4位:金閣寺
5位:奈良公園
6位:愛宕念仏寺
7位:京都駅ビル
8位:平等院
9位:永観堂禅林寺
(6位):サムライミュージアム

※同

 明治時代は寺社を細かくみていくと、たとえば金閣寺がなぜないのかなど気になる点がありますが、明治時代も現代も、ベスト6に寺社(および奈良公園)が並んでいます。明治時代の金閣寺は1950(昭和25)年の焼失前のもので、昭和の大修復後の現在のように金ぴかでなかったのもランク外になった理由かもしれません。

 いずれにせよ現代では日本の伝統的なものは東京ではなく京都で、といった結果になっています。

日本全体でのランキング結果は?

 最後に、日本全体での外国人にとっての人気観光地ランキングを挙げておきます。

●明治時代
1位:東京
2位:京都
3位:日光・中禅寺湖
4位:箱根
5位:富士山と富士登山
6位:鎌倉・江ノ島
7位:奈良・法隆寺

※出典は上記と同じ

●現代
1位:伏見稲荷大社
2位:広島平和記念資料館
3位:宮島(厳島神社含む)
4位:東大寺
5位:箱根彫刻の森美術館
6位:新宿御苑
7位:三十三間堂

※出典は上記と同じ

 明治時代は東京や京都のほか日光や箱根といった東京から近い保養地、日本のイメージを代表する富士山が入り、現代から見ても納得の結果ではないでしょうか。現代はかなりバラエティに富んできているのがわかります。

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