女性に「牡蠣好き」が多いのはなぜ? まっ昼間から「牡蠣食べ放題」しながら考えた
牡蠣、お好きですか。「牡蠣好き」というと女性が多いイメージがあるのですが、実際はどうなのでしょうか。「自粛ムード」の今、あえて食べ放題 連日、新型コロナウイルス関連のニュースばかりで街を歩けば人通りもまばら。東京都内のイベントは軒並み中止や規模縮小を余儀なくされて、いつもより早く閉店してしまう飲食店も多くなっています。そもそもお客さんの入りが平素のように見込めないのでしょう。 とにかく元気のない日本と東京ですが、なぜか今この時期に「昼から牡蠣(かき)の食べ放題」サービスを始めたお店があると聞いて、訪れたくなりました。 記者はもともと牡蠣が好きで、猫もしゃくしも「自粛」な世間にあえてあらがう「攻めの姿勢」に粋(いき)を感じ、自分も乗っかってみたいと思ったのです。 プリップリの身が魅惑的な生牡蠣(2020年3月10日、遠藤綾乃撮影) 訪れたのは東京駅の八重洲地下街にある「ザ・カーブ・ド・オイスター」(中央区八重洲)。平日の13時半過ぎ、100席ほどの店内は約半分が埋まっています。オフィスカジュアル風の服装をした、20~40代くらいのお客さんたち。 聞けば普段なら、平日ランチタイムは満席で一巡するほど来店があるそう。ところがやはり新型コロナウイルスの影響か、今は半分ほどの入りだといいます。 新幹線の乗降客より、駅周辺のオフィスで働く会社員たちがメイン層というお店がら、在宅勤務などによっていつものお客さんたちがいなくなってしまっているのが一因だとか。 少しでも客足を取り戻そうと始めたのが、今回の「ランチタイムに牡蠣食べ放題」です。ディナータイムに人気のこのプランを、2020年3月いっぱいまで昼にも展開することになったそうです。 見渡せば、目立つのは女性客?見渡せば、目立つのは女性客? 食べ放題メニューは全6品。生牡蠣(真牡蠣)、牡蠣の素焼き、牡蠣の香草ガーリックバター焼き、カキフライ、ウニと牡蠣じょうゆの焼き牡蠣、牡蠣のワイン蒸し。 こうして文字に起こすだけでヨダレが出てきてしまいそうな顔ぶれですが、やはり実際プリップリの生牡蠣がかち割り氷のお皿に盛られて運ばれてきたときの感慨はひとしおです。 ツヤツヤの白い肌に、お箸からこぼれ落ちそうなほどの弾力感。別名「海のミルク」たるゆえんのクリーミーな味わいと、わずかな潮の香。 牡蠣の魅力をしみじみ味わいながらふと店内を見渡すと、あることが気に掛かりました。 全体的に、女性客が多いのです。 牡蠣を見ているだけでうっとりした気持ちになるのはなぜなのか(2020年3月10日、遠藤綾乃撮影) 記者のように、ひとりでランチを楽しんでいる女性。3~4人のグループでいる女性たち。それから彼氏らしき男性と差し向かいで食事する女性。イメージとしては、街のちょっとおしゃれなパスタ屋さんと同じような客層構成です。 もちろん男性客もいますが、少なくともこの日の昼時の多数派は女性たちでした。 果たして牡蠣好きは、男性より女性の方が多いのか? 同店を運営するゼネラル・オイスター(中央区日本橋茅場町)広報課長の高瀬繭さんに尋ねたところ、同店来店客の男女比はだいたい6対4で、女性が多いとのことでした。 男性が圧倒的に多い業界を擁する東京駅周辺で、この女性率はやはりなかなか高いのでは。だとすればなぜ、牡蠣好きは女性が多いのでしょう。 栄養素もさることながら栄養素もさることながら「そうですね。私自身ももちろん大好きですし、牡蠣好きの女性は多いですよね……女性にとってうれしい栄養素がたっぷり含まれているから、というのもひとつの理由かもしれませんね」と高瀬課長。 確かに、牡蠣には亜鉛やグリコーゲン、鉄、必須アミノ酸、タウリンなど、健康や美容によいとされる成分が豊富に含まれているといいます。 一方で、そんな理屈を飛び越えて、女性を引き付ける何かが牡蠣にはある気がしてなりません。 そう考えていたところ、あることを思い出しました。2019年、「牡蠣事変」とでも呼ぶべき出来事が、食ではなくファッション業界で起こり、女性の注目を集めたのです。 1856年創立のイギリス老舗ブランド・バーバリー。2019年の秋冬コレクションのなかに牡蠣の絵柄を全面にあしらったブラウスやスカーフ、牡蠣の殻をかたどったイヤリングがあったのです。 ネット上では女性たちから「なぜ牡蠣!?」と驚きの声が上がるとともに、「ぐうかわ(ぐうの音も出ないほどかわいい)」「かわい過ぎてのけぞった」「良い意味でぶっ飛んでる」と称賛の声が上がりました。 2019年に世の女性たちを驚かせたバーバリーの牡蠣ブラウスと牡蠣イヤリング(左)、フェリシモの牡蠣クッション(画像:(C)BURBERRY、フェリシモ) 続けて登場したのが同年11月、個性的なオリジナルグッズに定評のある通販大手フェリシモ(神戸市)の牡蠣のクッションとミラー付き牡蠣コンパクトです。 写実的で高質なデザインのバーバリーとは対照的に、フェリシモのアイテムはとてもキュート。しもぶくれのぷっくり感、ひだひだのフリフリ、もっちりとした触感のクッションは牡蠣の特長をかわいくデフォルメしていて、何でもキャラクター化してしまう日本らしさ満点です。 こちらの商品も大ヒット。牡蠣にまつわるこの「波状攻撃」を受けて、女性たちは、ついに気づいてしまったように思うのです。牡蠣は、味はもちろん形状もまた何とも言えず「好きなタイプ」だということに。 むしろスイーツのような口当たりむしろスイーツのような口当たり もちろん、何より魅力は味です。 それひと粒でクリームソースのように深く濃厚な味わい。口当たりはむしろスイーツのように優しく、それでいてうっすら香る塩味はキリッと締まったのどごしを作り出してくれています。 ネットを検索してみると、牡蠣好きの女性たちが食レポやコラムを投稿する「KAKIGIRL(カキガール)」なるサイトまで発見。 なぜ牡蠣が好きなのか、といった「牡蠣哲学」こそ語られていないものの、とにかくあちこちのオイスターバーやレストランへ出向いて実食した様子が多数報告されており、熱過ぎるほどの牡蠣愛が画面からにじみ出ていました。 ネットサーフィンで発見したサイト「カキガール」(画像:KAKIGIRL) ちなみに今回の「ランチタイムに牡蠣食べ放題」は3690円(税抜き)は、90分制(60分ラストオーダー)です。2020年3月31日(火)まで、東京都内を中心にゼネラル・オイスターグループ18店舗で実施中。2日前までの予約制です。 この日に食べた牡蠣の数は、6種のメニューで計19粒。オレンジジュース1杯を含めたお会計4576円(税込み)は、もちろん自腹で支払いました。 定価ならあり得ないほど思いきり牡蠣を食べられて大満足。とはいえ昼食に4500円オーバーですから、「特別な日の、特別なランチ向き」のメニューかなーーというのが庶民としての正直なフトコロ感覚です。 牡蠣好きの皆さん、自粛ムードの今こそ「特別な日」と称して昼から牡蠣食べ放題へ繰り出してみるのはいかがでしょう。もちろん、牡蠣好きの男性もぜひ。
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