今やライブビューイングも体験可能、カラオケルームはなぜここまで進化したのか?

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今やライブビューイングも体験可能、カラオケルームはなぜここまで進化したのか?

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金江広

季刊カラオケエンターテインメント編集長

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かつて「歌う場」として利用されていたカラオケルームは現在、「歌い、観て、体感する場」へと変貌を遂げています。いったいどのようになっているのでしょうか。その背景と最前線について、季刊カラオケエンターテインメント編集長の金江広さんが解説します。

ハード・ソフトの「差別化」が課題に

 全国カラオケ事業者協会(品川区上大崎)が2019年6月に発刊した「カラオケ白書2019」によると、2018年度のカラオケ施設数は9265店舗で、前年の9300店舗と比べて35店舗減少しました。これでカラオケ施設数は3年連続で「微減」となり、2019年もその傾向は続くと予想されます。

カラオケルームのイメージ(画像:写真AC)



 カラオケ業界は2018年6月にシダックスグループが、「カラオケシダックス」を全国展開する子会社シダックス・コミュニティー(練馬区向山)の持ち株81%を「カラオケ館」のB&V(同)に譲渡したことが話題となりました。

 これによって既存のシダックス170店舗の運営がB&Vに継承されたわけですが、B&Vでは、傘下となった新規店舗の再生に注力する一方で、不採算店舗の閉鎖にも着手しています。

 こうした不採算店舗の撤退は、多くのチェーン店舗でみられる現象です。その要因はマーケットの変化によって、これまでの出店戦略では安定収益の確保がむずかしくなっていることがあげられます。

減少する「二次会利用」

 カラオケとは、男女を問わず幅広い年齢層が楽しめる国民的レジャーですが、カラオケ施設のメインターゲットはグループ客です。前出の「カラオケ白書2019」の売上構成をみると、「カラオケ(貸室料)」(54.1%)に対して、「飲食(フード・ドリンク)」(42.8%)となっています。

 つまりカラオケ施設にとっては、訪れた客にカラオケとともに飲食を利用してもらうことが重要で、飲食利用を伴うグループ客、具体的にいえば、「サラリーマン・OL層の二次会利用」が、最も重視すべき客層になるわけです。ただ、そうした二次会利用は減少傾向にあります。

 さらにカラオケ業界はチェーンオペレーター(運営者)の時代に突入し、カラオケメーカーも「DAM」「JOYSOUND」ブランドの2社に。さらにハード・ソフトの均質化が進み、店舗ブランド間の差別化がむずかしくなっています。

「立地産業」の要素が強まり、各オペレーターは、駅前や繁華街など、より大きなマーケットが見込める好立地への出店を目指すこととなり、結果的に競合が激化、一部に撤退事例がみられているのです。

 その一方で、郊外立地の築年数の古い大型店舗の多くが、施設の老朽化で設備投資を必要としながらも、その追加投資に見合った売上げアップが期待できないといった状況も指摘できます。

求められるマーケットの再活性化

 こうした状況下で、カラオケ業界で取り組まれているのが「マーケットの再活性化」です。

 ひとつが、既存のカラオケ利用客の「来店頻度の向上」です。カラオケの採点機能で高得点を競い合うテレビ番組が人気ですが、そうした新しいカラオケの楽しみ方の提案が求められています。

 子連れの主婦グループをターゲットにしたキッズルームや、人気アーティストやアニメなどさまざまなコンテンツを活用したコラボレーションルームなども新しい客層の獲得に貢献しています。

 そしてもうひとつが、「カラオケルームの活性化(新たなルーム活用の提案)」です。これまでも業界では、楽器練習や会議室利用など、さまざまな活用提案がみられましたが、集客や売上げの大きな核にまでは至っていません。

 そうしたなかで注目されるのが、エクシング(名古屋市)が2019年6月に市場投入したカラオケ新機種「JOYSOUND MAX GO」の「みるハコ」機能です。これまで通信カラオケの魅力としては、豊富な楽曲数と充実した音響・映像機能、さらにカラオケを楽しむための多彩なコンテンツ配信があげられますが、「みるハコ」は、歌うだけではなく、「観て楽しむ」多彩なジャンルの映像コンテンツを配信し、カラオケルームのさらなるエンターテインメント化を目指しています。

ライブやミュージックビデオ、映画、舞台などさまざまなものが楽しめる「みるハコ」の利用イメージ(画像:エクシング)



 具体的には、レコチョク(渋谷区渋谷)と連携し、同社の音楽ストリーミングサービス「RecTV」が提供する公式ミュージックビデオを大量配信するとともに、ライブ・ビューイング・ジャパン(渋谷区桜丘町)とも連携し、業界初となるライブ・ビューイング機能(ライブ映像を、映写・音響設備の整った施設などで上映すること)を搭載することで、カラオケルームへの本格的なライブ配信をスタートさせます。

 それによりカラオケルームは、「カラオケを楽しむ場」に加え、音楽ライブやミュージックビデオ、アニメ、スポーツなど、多彩な映像コンテンツが楽しめる場となるわけです。

歌う空間から、エンターテインメント空間へ

 映画など、映像コンテンツのカラオケルームでの視聴サービスはこれまでもみられましたが、そうした取組みが業界に定着しなかった理由として、提供されるコンテンツの訴求力の弱さがあげられます。それに対して「みるハコ」は、多彩かつ魅力的なコンテンツ配信を目指しており、カラオケルームの活性化が期待される取組みといえるでしょう。

 その一方で第一興商(品川区北品川)も、最新機種「LIVE DAM STADIUM STAGE」に続くフラッグシップモデルの発売を、今秋に予定しています。LIVE DAM STADIUM STAGEは、異なる2画面のカラオケ映像が、迫力の大画面で楽しめる「デュアルモニター機能」など、画期的な機能充実でカラオケルームの活性化を実現させており、最新機種の登場に業界の注目と期待が集まっています。

第一興商の最新機種「LIVE DAM STADIUM STAGE」を楽しむイメージ(画像:第一興商)

 カラオケルームは、「カラオケを楽しむ場」から、「カラオケをベースにさまざまなエンターテインメントが体感できる場」へと進化を続けています。とくに、カラオケ施設から足が遠のいている人たちは、さまざまな驚きと感動を体感できるはずです。

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