代々木上原「日本最大のモスク」に人気スイーツ店があった、イスラム教の厳格イメージはいずこへ?

約146万人といわれる日本国内の外国人労働者(2018年10月末時点)。その数は年々増加傾向にありますが、日本に住む人たちは彼らについてよく知っているとはいい難い状況です。アジアに関する多くの著書があるライターの室橋裕和さんが、代々木上原にある日本最大のモスクについてレポートします。

代々木上原駅から徒歩5分

 皆さんはハラルフード(イスラム教徒が食べることを許される食品)と聞くと、どんなイメージを持つでしょうか。堅苦しい戒律や、イスラム教の厳格さを連想するかもしれません。

色とりどりのケーキに目移り。すべてハラル(画像:室橋裕和)



 しかし、ショーケースに並ぶケーキの色鮮やかさ、かわいさはどうでしょう。これらもハラルフードなのです。デンプンや砂糖、それにピスタチオなどのナッツから作られたトルコのスイーツ「ロクム」も大人気。それに手づくりのパンやラスク、いちじくなどのドライフルーツもあって、なにを買おうか楽しそうに迷っている日本人の女子で賑わっているんです。

 ここは日本最大のモスク・東京ジャーミイ(渋谷区大山町)です。代々木上原駅から徒歩およそ5分、井ノ頭通りを歩いていると、いきなり現れる高々としたミナレット(尖塔)が見えてきます。水色の大きなドームを擁した白亜のオスマン・トルコ様式が、渋谷区の住宅街の中にいきなり現れるのです。

 誰でも見学できるように、お祈りの時間をのぞいて扉は開け放たれています。さっそくお邪魔してみましょう。

 大理石の階段を上り、アーチ状のファサード(建物の正面部分)をくぐって礼拝堂に入ると、そこはまるで世界遺産の壮大なる空間。高い天井を見上げれば、ドーム屋根を利用したシンメトリカルで、幻想的な装飾があります。モスクにはステンドグラスを通して日の光が差し込み、ホール全体が温かな印象です。絨毯の上では人々が思い思いにくつろぎ、笑顔で語り合っています。

 東京ジャーミイは日本に暮らすイスラム教徒の憩いの場。その1階、イスラム教関連の図書館もある大型ホールに隣接した一角に、2019年5月からハラルマーケットがオープンし、評判となっているのです。

「金曜日、お昼の礼拝が終わったあとはとくに賑わいますね」

と語るのは、ムハンマド・アディリさん。4年前にトルコを出てから日本の大学に留学、いまはマーケットのマネージャーを務めています。

「ケーキなどのスイーツは、ゼラチンや乳化剤、ショートニングなど、豚肉由来の成分をいっさい使わずに作っています。とくにホワイトチョコのラズベリームースや、チーズケーキが人気ですね」

と教えてくれました。どれも250円~と格安で、もちろん味もバッチリです。

土日は、モスクを案内する無料ツアーも実施

 ほかにも店内にはさまざまなハラルフードが並んでいます。中近東の料理には欠かせないひよこ豆やいんげん豆、オリーブオイルにチーズ、ヤギや羊の肉、紅茶、チョコレート、ナッツ、インドネシアの調味料やインスタント麺まで揃います。

豆やオリーブなどもどっさり。日本のエスニック料理ファンもやってくる(画像:室橋裕和)



 一番人気はいちじくのジャムだとか。また、トルコの絨毯やセラミックの器といった工芸品も置いています。

 日本には10年以上住んでいるというエジプト人の男性は、

「いつも金曜の礼拝のあとに寄るんです。今日はマンゴージュースを買いにきました。東京もだいぶハラルの食材店が増えましたが、ここは品揃えが豊富で助かっています」

と笑顔。

「イスラム教徒の友達に教えてもらったことがきっかけで知ったんです」

と話す日本人女性は、この日で来店2回目だそう。

「キプロス産のチーズがおすすめです。焼くと本当においしい。それとデーツ(乾燥させたナツメヤシ)は濃厚な甘みで女性が好きな味かも」

 女性はほかにもピスタチオのチョコなど、たくさん買い込んでいました。

 東京ジャーミイは見学大歓迎。土日はモスクを案内する無料ツアーも行われているので、その後にマーケットを訪れる日本人が多いのだとか。都内でこれほどに異国を体感できるスポットもなかなかないでしょう。

近隣の日本人にも人気

 そもそもハラルとは、イスラムの教えで「許されているもの」という意味。禁止されているものは「ハラム」といいます。それは食だけでなく、商習慣から社会生活にまで広く及んでいます。

礼拝堂の壮麗さには日本人でも魅了される。写真もOK(画像:室橋裕和)



 イスラム教徒は厳しい戒律で縛られているように思えますが、実際は殺生や窃盗、うそをつく、親を大事にしない、人のかげ口といったことがハラムであり、人の道を説いた教えです。どの宗教にも共通する、倫理や道徳といえるでしょう。

 ハラルでは豚肉のタブーがよく取り上げられます。これはイスラム教が生まれた土地が暑く、腐りやすい豚肉が食中毒を引き起こしたり、寄生虫を宿す危険があったりするため、避けられてきたという生活の知恵でもあります。アルコールもまた健康を損なうものとされますが、これは仏教などでも同様です。

 日本に住むイスラム教徒は年々増加していますが、どのくらい食のハラルを守るかは人それぞれ。もちろん「日本の豊かな食文化を知りたい」という人もたくさんいます。そんなイスラム教徒向けに、マーケットでは製造過程でアルコールを使っていないハラルの醤油やポン酢、麺つゆ、それにハラルの納豆まで売られています。

 日本のお土産を買いに来る観光客も多く、ハラルのおかきや日本茶、ラーメンなどがよく売れるといいます。日本に住んでいるイスラム教徒の方へのプレゼントに、と買っていく日本人もいるそうです。

「日本一のハラルマーケットを目指します。今後は商品を増やしていくので、日本人にもどんどん来てもらいたい!」と、アディリさんは意気込みます。

 店内が明るくきれいでおしゃれなこともあって、地域の日本人にも定着しつつあり、普段使いのお買い物スポットとして人気になってきたハラルマーケット。気軽な異文化体験に出かけてみてはいかがでしょうか。

【写真】めくるめくハラルフードの世界! 皆さん、こんなに豊かなラインアップって知っていましたか?(13枚)

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