男性保育士への根強い「抵抗感」 真面目な人が大半なのに……あなたはどう考える?

  • ライフ
男性保育士への根強い「抵抗感」 真面目な人が大半なのに……あなたはどう考える?

\ この記事を書いた人 /

秋山悠紀のプロフィール画像

秋山悠紀

ライター

ライターページへ

先日ネット上で、「男性保育士である父親が、性差別により理不尽に解雇されたという」旨の投稿が話題となりました。保育園で勤務経験があり、自身も子育て中のライター・秋山悠紀さんが、保育現場における男性保育士の実態と存在意義について、見解を語ります。

「おじさんだから」と保育士を解雇?

 ネット上で先日、「定年退職した父親が春から保育園で働いていたものの、女性職員からいじめを受け、女性園長から『おじさんだから』という理由で解雇された」という投稿が話題となりました。

保育の現場はまだまだ女性が多い職場(画像:写真AC)



 ツイート主は「完全な性差別で保育士不足に悩む世の母親達の首を絞めているのは同性の女性」と保育業界に対する不平不満を述べ、SNS上などでは議論を呼んでいます。

 女性が多い職場おける男性保育士の存在について、保育園勤務経験のある筆者が見解を述べます。

保育現場に潜む、性差別以外の問題

 今回話題となったツイートに関しては、詳細は分かりかねますが、もし本当に「おじさんだから」という理由で男性保育士が解雇されたのだとしたら、それは性差別以外の問題も見え隠れしているように思います。

 ひとつは、園長や管理者の質の問題です。本当に「おじさんだから」という理由で周りの女性保育士からの不満が出て、辞めさせられたのであれば明らかな不当解雇であり、保育士たちの管理を行っていない園長の職務怠慢です。

 保育の現場は、保育園関係者だけの閉じられた世界の中で日々の問題に対処しなければならないことも多く、待機児童解消のために保育園がたくさんできているなかで、保育の質の低下も懸念されます。

 もうひとつは、保育士たちの中にある「自分たちが長年やってきた仕事が、初心者に簡単にやられてしまう不安や不快感」です。

 数年前、実業家の堀江貴文氏が保育士の給料が上がらない問題について「誰でもできる仕事だから」と発言し、波紋を呼びました。この時、すでに保育園は退職していた筆者でしたが、元同僚らに話を聞くと皆がこの発言に大激怒。

 堀江氏の真意としては、「誰でもできる仕事と大変な仕事は同じではない。これ以上、国からの補助金や家庭からの保育料を増やせないのであれば、業務の効率化を図って保育士の給料を増やすしかない」というビジネス目線の意見があったようです。

 しかし、誰でも「あなたの仕事は誰でもできる」と言われれば「じゃあ、やってみてよ」「どれだけ大変な仕事かわかってる?」と不愉快な気持ちを抱かざるを得ないでしょう。

 定年後の男性など、社会的経験が豊富な人が転職して保育の現場に入ってきた場合、こうした保育士たちの不安が募り、場合によっては職場内での理不尽ないじめなどに発展してしまう可能性も否めません。

男性保育士の活かし方は保育園次第

「男性保育士は必要か否か」についての議論については、その保育園の考え方次第としか言いようがない部分があります。

性別に関係なく、本人の頑張りや資質が認められる職場に(画像:写真AC)



 管理者が男女関係なくその保育士自身の頑張りや資質を見てくれるのか、女児の着替え問題をどう対応するのか。そして母親にとってセンシティブになりがちな男性保育士という存在について、必要があれば保護者にどう園の考え方を説明するのか。

 男性保育士が女児のオムツ替えや着替えをすることについては、さまざまな考えがありますが、不信感を覚える保護者も少なくないのが現実です。不要なリスクを避けるためにも、業務上、緊急を要したり他の女性保育士が不在だったりしない限り、男性保育士が自ら名乗りを上げて女児の裸に触れることは避けた方が良い、というのが筆者の考えです。

 実際には、保育園に男性保育士がいれば、例えば緊急時には5歳の男の子2人を抱えることができて早く避難ができたり、不審者対策において男性がいるというだけで安心感につながったり、はたまた男性保護者にとって相談しやすい存在になりえたり、女性だけだと偏ってしまう可能性のある考えを柔軟にしたり、新たな発想を保育園に持ち込んでくれたり……と、保育園全体にとって大きな拠り所となる可能性も秘めています。

 そして子育てや保育の場に男性がいることは、子どもの健全な発育にとっても、多様な働き方や生き方を身近に感じさせる意味では大きなメリットがあるでしょう。

男性保育士が働きやすい保育園は風通しが良い

 筆者が働いていた保育園にも男性保育士はふたりほどいましたが、彼らはこちらからみて「気を使いすぎていないか?」と思ってしまうほど、日々の言動に気をつけていました。

 女性保育士には茶髪の人も多いですが、彼らは絶対に染めずに黒髪、保護者や他の保育士と話す時はもちろん、後ろや横から見る時さえ目線は胸元や足元を見ていると思われないように必要な時以外は視線を下げない、子どもにも保護者にもほかの保育士にも容姿に関する発言は絶対にしない。

 そして子どもとは自分たちの個性を活かして、体を使って思いっきり遊ぶ。一方で、子どもに対して威圧感を与えないようにコミュニケーション方法に注意する。

 このように、彼らは自分たちが保育園にとってリスク要因となり得ることを理解し、神経質になるほど言動に気をつけながら仕事をしていました。それでもこの仕事をしているのは、子どもの成長をサポートするこの保育士という仕事が好きだから。

 その姿勢には私たちも感心し、「自分たちも頑張ろう」とモチベーションを高めさせてもらったものです。

 園長も彼ら男性保育士の活かし方をわかっていたこともあり、筆者の保育園では「男性保育士が嫌だ」という声は保護者から聞いたことはありませんでした。

 筆者は、男性保育士がいきいきと働いている保育園は園長や管理者の管理が行き届き、保育士同士の人間関係や風通しが良い保育園である可能性が高いと感じています。

 もし「男性だから」というだけでただただまったくの理不尽な扱いを受けた男性保育士の方がいたら、それは運悪く「ハズレ保育園」に当たってしまっただけ。

 ぜひ、保育士という仕事を諦めず、別の活躍できる保育園でリベンジしていただきたいと思います。そして男性保育士の活躍や男性保育士のために適切な管理や対策をしている保育園の存在が、性差の問題に対する理解を社会全体で成熟させていく上で非常に大きな役割を持つと期待しています。

関連記事