ダサくて、消滅しそうな池袋が「住みたい街」にすっかり変貌したワケ

「治安が悪い」「ダサい」まちから「住みたい」まちへと生まれかわりつつある池袋。まちのイメージはどのように変わり、その背景にはどのような出来事があったのでしょうか。まち探訪家の鳴海行人さんが解説します。


消滅可能性都市から住みたいまちへ

 近年、池袋が注目のまちになっています。大手不動産検索サイトの住みたいまちランキングでは上位にくることもあるほどです。

池袋は「ダサい」まちから「住みたい」まちへ(画像:写真AC)



 池袋はこれまで「治安が悪い」「ダサい」といったマイナスイメージが強い言葉で語られることが多く、2014年には池袋を中心にした特別区、「豊島区」が消滅可能性都市(少子化などを原因とした人口減少が進み、将来の存続が危ぶまれるとされた自治体)になったこともありました。

 では、なぜ最近になって池袋が注目のまちになっていったのでしょうか。そのイメージの変遷を追います。

地味でダサい「駅袋」

 山手線の西側にある3つの副都心、渋谷・新宿・池袋。このうち渋谷と新宿はもともと、街道沿いの街でした。対して池袋は明治時代までまちらしい場所ではありませんでした。

 池袋が発展するきっかけになったのは1903(明治36)年の池袋駅開業です。当時の写真を見ると「原野」と呼べるような何もない場所に駅が設けられている様子を見ることができます。

 その後は東上鉄道(現在の東武東上線)や武蔵野鉄道(現在の西武池袋線)が池袋をターミナルにし、池袋発展の礎が作られていきました。

 第二次世界大戦以降になると池袋は大きく発展しますが、それと同時に池袋のまちのイメージも作られていきます。

 まず終戦直後に闇市が大きく発達します。闇市は各地で形成されますが、池袋はその整理が他の街に比べて大きく遅れてしまいます。そのため、池袋には闇市の暗いイメージが持たれてしまいました。加えて、現在のサンシャイン60のある場所には東京拘置所があり、イメージが強化されてしまいました。

 その後、新宿・渋谷と共に副都心構想による再開発が推し進められていきます。この時特徴的だったことは池袋のまちが面的に広がっていかなかったことです。

 駅周辺では区画整理が行われ、駅に直結する西武百貨店や東武百貨店などの進出が進んでいたとはいえ、大規模な再開発事業としては、駅東側でサンシャインシティの開業が1978(昭和53)年にあった程度でした。そのため駅ビルばかりが栄え、「駅袋」という揶揄の言葉も生まれました。

 このように池袋は面的にまちのイメージの一新がされなかったため、「地味」「ダサい」という言葉が池袋を語るものとして見られるようになってしまいます。そして、こうしたイメージは駅至近に商業施設が集中する「駅袋」状態が長く続いたため、長らく一新できずにいました。

「国際化」と「サブカルチャー」で注目

 しかし、その間には新たなまちの魅力が生まれます。それが「国際化」と「サブカルチャー」です。

「駅袋」状態が池袋をダサくした?(画像:写真AC)



 まず、国際化については、1980(昭和55)年以降、中国大陸から都市部の青年たちが池袋に集まってきました。その要因として大きかったのは終戦直後に池袋周辺に発達し、まちが更新されずに残っていた多くの家賃の安い木造賃貸アパートです。

 そして池袋には中華系のコミュニティが発達し、北口に中華系の店が多く立地するようになります。

 サブカルチャーは東口で発展していきます。特にサンシャインシティ周辺には2000年代から若い女性をターゲットにしたマンガ・アニメショップが集積し、「乙女ロード」が生まれました。

 こうして「国際化」、「サブカルチャー」をはじめ、池袋は「多様なものが混在する」という都市としての性格を着実に備えていきました。

池袋が脚光を浴びるようになった3つの理由

 そして2000年代になると池袋が徐々に脚光を浴びるようになっていきます。その大きな理由は3つあります。

 1つは渋谷や新宿の再開発が一段落したため、目新しさがなくなり、むしろ「人が多くて危ない場所」という印象が強くなっていったことです。

 渋谷や新宿は街中を移動するのがとても大変です。筆者の個人的なイメージではありますが、新宿は東口と西口の間が移動しづらく、東口は人も多くて歩きづらい印象です。渋谷も駅周辺はともかく、センター街の方へ行けば街路が入り組み、どこへ行ったらいいのかわからなくなってしまいます。

 対して池袋は「駅袋」と言われていただけあり、駅の周辺の移動はとても楽で、JRであればどの改札口から出ても大きく遠回りになることはありません。こうした移動のしやすさは池袋の大きな魅力です。

 2つ目の理由は池袋が「気張らなくてもいいまち」として注目されてきたことです。池袋を語る資料を見ていると不思議と「普段着」という言葉がよく見られます。「地味」「ダサい」というまちのイメージはマイナスのようですが、裏を返せば「気張らなくていい」というまちのイメージを形成していったのです。

 そして3つ目の理由が2008(平成20)年の副都心線開業、2013年の副都心線と東横線の直通運転開始を契機に池袋に来る人が増えたことです。開業前は「池袋は素通りされるようになるのではないか」という不安の声もありましたが、むしろアクセスが向上したことにより、横浜方面からも関心を持たれるようにもなったのです。

 さらに近年豊島区が取り組んでいるイメージアップ戦略も池袋のイメージを向上させています。豊島区では2014年に「消滅可能性都市」になったことで若い女性に住んでもらうための施策を積極的に打っていきました。

 例えば、子供を連れてきやすいようにきれいなトイレを整備することや保育所の充実といったものです。さらに演劇をまちづくりの核に据え、シアターグリーン近くの「南池袋公園」は、2016年にホームレスのいる公園からおしゃれな公園へと様変わりさせました。

再開発事業の波

 さらに2019年から2020年にかけて池袋に再開発事業の波が広がろうとしています。

豊島区は2014年、「消滅可能性都市」となった(画像:写真AC)



 2019年11月には東京芸術劇場の前にある池袋西口公園と旧豊島区庁舎跡地に隣接する中池袋公園が整備を完了し、2020年にはサンシャイン池袋の東側にある造幣局跡地に防災公園が整備されます。

 そしてこの公園を周遊交通機関として11月から電気バス「イケバス」が運行を開始。赤を基本としたデザインの16人乗りの低速電気バスで、池袋駅周辺の4つの公園を回遊するルートを運行します。こうした周遊型の低速電気バスの運行は、東京都内で初めての取り組みとなります。

 そして、2015年に移転した旧豊島区庁舎跡地には「イケバス」運行開始と同じ11月に「Hareza(ハレザ)池袋」が一部開業します。豊島区は2016年に「豊島区国際アート・カルチャー都市構想実現戦略」を掲げており、このハレザ池袋はそのシンボルとしての役割も担います。

 11月に開業するのはホール棟ととしま区民センターの2棟で、ホール棟には1300席を備える芸術文化劇場のほか、ポニーキャニオンが運営する未来型のライブ劇場、ニコニコ動画を運営するドワンゴが運営するサテライトスタジオが入ります。従来の文化施設の枠にとらわれず、サブカルチャーにも焦点があたった施設内容は池袋らしいといえるでしょう。

 また3月に開業した「ダイヤゲート池袋」や来年夏に開業する「Hareza池袋」のハレザ棟が大規模なオフィス空間を提供することとなり、池袋は文化・芸術・公園といったまちのイメージの一新だけでなく、ビジネスセンターとしての役割も高めようとしています。

 さらに池袋駅西口では今後3棟の高層ビルを中心とし、三菱地所・三菱地所レジデンスが協力事業者となった「池袋駅西口地区市街地再開発」も本格的に動き出します。

 近年急速にイメージが変わり、今後もまちのイメージがさらに変わっていく池袋。いま注目の東京のまちであることは間違いなさそうです。


【写真】思わず息をのむ、超高層ビル「サンシャインシティ」からの絶景(30枚)

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