江戸川乱歩「怪人二十面相」の舞台に 昭和初期の香り漂う「東京ステーションホテル」の魅力とは
2020年3月7日
知る!TOKYO1915年に開業した東京ステーションホテル。推理作家・江戸川乱歩をはじめ数々の文豪を魅了したホテルの魅力を、法政大学大学院教授の増淵敏之さんが乱歩の作品とともにたどります。
日本の本格推理小説の草分け的存在
今や国民的なマンガといわれる『名探偵コナン』の主人公コナンのフルネームは江戸川コナン。もちろんコナン・ドイルと日本を代表する推理作家、江戸川乱歩から取られたものです。

最近、ホームドラマ『時間ですよ』『寺内貫太郎一家』などを手掛けたことで知られる、東京生まれの演出家・久世光彦が1993(平成5)年に発表した代表作『一九三四年冬―乱歩』(集英社)を再読しました。
同作は、ちょうど乱歩が雑誌『新青年』に長編小説『悪霊』を連載中に原稿に行き詰まり、何度目かの失踪をしたときの「空白の数日間」を想像力豊かに小説化した作品です。
乱歩が身を潜めた先は当時の自宅に近い麻布箪笥(たんす)町の「張ホテル」。中国人が経営する外国人客の多い架空のホテルです。
探偵小説マニアの人妻や妖(あや)しい中国人青年に戸惑いながら、彼は短編小説『梔子姫(クチナシヒメ)』を書くのです。この劇中小説は久世の手によるもので、まるで乱歩本人が書いたようなクオリティーとなっています。
この作品は木造の階段、ステンドグラスから差し込む光線、乱歩の常備薬ともいえる仁丹、モダンな形の湯船などを精緻に描くことで、昭和初期の東京の風景が持つ耽美(たんび)的な側面を再現しています。
この作品は直木賞にこそ選ばれなかったものの、山本周五郎賞を受賞しました。

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