都内の映画館が続々営業再開 動画配信サービス隆盛の今こそ、あえて「映画館文化」を楽しみませんか?
映画館に行かれる喜びをかみ締めて 2020年4月7日(火)の緊急事態宣言発出から2か月弱。東京も段階的解除の「ステップ2」に移行した6月1日(月)、都内の映画館の一部が営業再開しました。 6月1日から営業再開した主な映画館は下記の通りです。 ・新宿バルト9 ・ピカデリー(新宿、丸の内) ・TOEI(銀座、渋谷) ・TジョイSEIBU大泉/TジョイPRINCE品川 ・イオンシネマ(シアタス調布、板橋、多摩センターほか) ・ユナイテッド・シネマ(豊洲、豊島園、お台場、恵比寿ガーデンシネマ) ・シネマサンシャイン(グランドシネマサンシャイン、平和島) ・シネマート新宿 ・新宿武蔵野館/シネマカリテ ・アップリンク(渋谷、吉祥寺) ・ホワイトシネクイント ・K’sシネマ ・kino cinema立川高島屋S.C.館 都内のTOHOシネマズ、109シネマズ、テアトル新宿、ヒューマントラスト有楽町・渋谷のテアトルシネマグループ、吉祥寺オデオン、立川シネマシティ、シネクイントは6月5日(金)より、ル・シネマは6月11日(木)より営業再開を発表しています。 営業再開については、それぞれの映画館が考えられうる限りの感染防止対策を講じています。 両隣(もしくは前後左右)が空席になるように販売座席数を減らしたり、入場時の検温、換気、消毒の徹底や、カウンターでの接客の場合の飛沫防止シートを設置したり、ポップコーン販売の際は使い捨て手袋をつけたり、などなど、それぞれのチェーン、劇場で工夫を凝らして営業再開をスタートさせました。 待ちに待った映画館の営業再開。あなたが見たい作品は?(画像:写真AC) もちろん初めての出来事なわけですから、いずれも手探り状態での営業再開であるのは当然のこと。今後、科学的な検証なども重ねられていくなかで、映画館の感染防止対策も変わっていくのかもしれません。 映画館はもともと、興行場法で定められた換気・湿度のルールに則して作られています。その上に、感染防止のためにさまざまな感染対策が行われています。観客である私たちも、「体調が悪いときは行かない」「マスクは必ず着用して上映中はしゃべらない」「せき・くしゃみのエチケットは守る」など、他人に感染させないことを考えて、映画館を楽しみたいものです。 今、上映している作品は?今、上映している作品は? 皆さんも記憶にあると思いますが、横浜港沖に停泊していたダイヤモンドプリンセス号の船内で感染が拡大し、北海道から関東、関西へとじわじわと感染が広まっていきはじめた3月以降、日本で公開予定だった新作映画は軒並み公開延期となっていきました。その本数は、ざっと90タイトル以上です。 では、営業再開をはじめた映画館ではどんな映画が上映されているのでしょうか。 ひとつは「休館するときに上映されていた作品」であり、ひとつは「名作のリバイバル上映」です。そこに、公開延期となっていた作品が徐々に加わっていくというラインアップになっています。 休館するときに上映されていて、営業再開された映画館で上映されている主だった作品を列挙します。 「パラサイト」「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒」「Fukushima50」「ミッドサマー」「一度死んでみた」「ジュディ 虹の彼方に」「劇場版SHIROBAKO」「犬鳴村」「劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明(れいめい)」「レ・ミゼラブル」「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」「白い暴動」「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」「貴族降臨 PRINCE OF LEGEND」ほか アカデミー賞作品賞など数々の賞に輝いた大ヒット作「パラサイト 半地下の家族」(画像:「パラサイト 半地下の家族」公式サイト、ビターズ・エンド) 通常ならば毎週次々と新作が公開されるので、集客状況に応じて2~3週で上映終了する作品も珍しくありません。しかし、新作がほとんど公開延期となったため上映できる映画が圧倒的に不足しています。 それゆえに、予想外のロングラン上映となっている作品もあるようです。「3密を避ける」と言われ始めてから、映画館から足が遠のいた方も少なくないでしょう。今こそ、2~3月に見逃していた作品を見るチャンスではあります。 公開延期が相次ぐ中でも新作映画も少しずつ公開されています。 緊急事態宣言が発出される直前の4月3日(金)には、「囚われた国家」(配給:キノフィルムズ)が公開されました。公開後わずか数日で上映中断となりましたが、立川・横浜のkino cinemaと全国のイオンシネマで上映再開されています。 ひと足先に緊急事態宣言が解除された地域の映画館から先行する形で5月15日(金)に公開されたのが、千眼美子(清水富美加)主演の「心霊喫茶『エレクトラ』の秘密」です。 営業再開後の数少ない新作映画ということもあり、興行通信社が発表する週末観客動員ランキングでは3週連続第1位となり、6月第1週時点で上映館も216館まで拡大されています。近年の幸福の科学映画(制作総指揮・原作/大川隆法)の中では突出した“注目作”となりました。 今後、上映予定の作品は?今後、上映予定の作品は? 5月22日(金)にはトマ・ピケティ本人が主演して著書を解説する「21世紀の資本」が公開。そして緊急事態宣言が全国で解除された後の新作公開一番乗りとして5月29日(金)に、ヴィン・ディーゼル主演、アメコミ原作の「ブラッドショット」がイオンシネマで公開されました。 6月以降は、公開延期となっていた作品の公開日が徐々に決まり始めています。主だったものをピックアップします。※6月2日(火)現在 ・6月5日公開 「デッド・ドント・ダイ」「ANNA/アナ」「ポップスター」「ルース・エドガー」「アンティークの祝祭」「ハリエット」「色男ホ・セク」 ・6月12日(金)公開 「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」「グッド・ボーイズ」「ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷」「その手に触れるまで」「ライブリポート」「15年後のラブソング」「アドリフト 41日間の漂流」「コリーニ事件」「ワールドエンド」 ・6月19日(金)公開 「ドクター・ドリトル」「エジソンズ・ゲーム」「ペイン・アンド・グローリー」 ・6月26日(金)公開 「ソニック・ザ・ムービー」「ランボー ラスト・ブラッド」「悪の偶像」 アカデミー賞6部門ノミネートの「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」や、アイアンマンことロバートダウニーJr.主演の「ドクター・ドリトル」、セガの人気ゲーム「ソニック」シリーズのハリウッド実写版「ソニック・ザ・ムービー」など、話題作の公開も決まったことで、映画館に日常が戻り始めたことを実感できます。 名作を大スクリーンで見られるチャンス名作を大スクリーンで見られるチャンス 5月中旬に先行して緊急事態宣言が解除された地域の映画館の作品ラインアップが名作映画ばかりで「まるで豪華な名画座のようだ」とSNSで話題になりました。 ここまで紹介してきた「休館するときに上映されていた作品」と、「徐々に公開される新作」だけでは、すべてのスクリーンを埋めることができないゆえに、クラシックから近作まで、名作映画が続々と上映されることになったのです。 大手シネコンチェーンのサイトの上映作品リストを確認すると、リバイバル上映されている作品の多彩ぶりには驚かされます。そんな中から、都内の映画館で上映中または上映予定の作品の主なものをご紹介しましょう。 比較的最近の作品としては、邦画では「シン・ゴジラ」「君の名は。」「天気の子」「君の膵臓(すいぞう)をたべたい」「劇場版おっさんずラブ」「聲(こえ)の形」など。洋画では「アクアマン」「ジョーカー」「マッドマックス 怒りのデスロード」「グレーテスト・ショーマン」「クリード」「コマンドー<4Kニューマスター>」などが上映されています。 新海誠監督の大ヒット作品「天気の子」(画像:「天気の子」公式サイト、東宝) 懐かしい作品なら、邦画は「男はつらいよ」シリーズ、大友克洋原作のアニメ「AKIRA」、そしてウイルス感染の恐怖を描いた「復活の日」も上映されています。洋画は「ローマの休日」「スティング」「大脱走」「ひまわり」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」3部作、「E.T.」「リオ・ブラボー」「タワーリング・インフェルノ」など多彩な作品をみることができます。 6月5日(金)からはディズニー作品、マーベル作品の特別上映がスタートします。 マーベルからは「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」「シビル・ウォー/キャプテンアメリカ」「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」など、「アベンジャーズ/エンドゲーム」につながるMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の流れをおさらいできる主要作品を大スクリーン、大音響で楽しむチャンスです。 7月から上映されるディズニー作品は「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」「美女と野獣」「シンデレラ」と人気作品がラインアップされています。 多種多彩なリバイバル上映のラインアップの中でも、特に注目は自社の財産である貴重なコンテンツを上映する東映の直営館、丸の内TOEIと渋谷TOEIです。 丸の内TOEIでは東映実録路線「仁義なき戦い」5部作と「県警対組織暴力」を上映します。故・深作欣二監督が、故・菅原文太主役で作り上げた実録路線。70年代、“昭和の漢”たちを熱狂させた東映ならではの不良性感度が堪能できそうです。 渋谷TOEIでは、60年代から80年代にかけての東映動画(現・東映アニメーション)の名作アニメ映画が連続上映されます。昨年の朝ドラ「なつぞら」の舞台となった東映動画が生み出した、「東映まんがまつり」で上映された珠玉の名作をスクリーンで見られるチャンスです。 コロナ禍は映画に何を残したかコロナ禍は映画に何を残したか たとえ、日本がこのまま第2波に襲われることなく平常運転に近づいていったとしても、欧米などの感染拡大が収束しない限りは、映画産業が完全にコロナ前の状態に戻るのは難しいでしょう。 しかし、ステイホーム期間中に動画配信サービスのNetflixの契約者が激増したことからも分かるように、多くの人が映画というコンテンツを必要としています。 映画を、映画館を求める人々がいる以上は、ウィズコロナ時代にも映画を届けるために、映画館も配給会社も、映画を作る人たちも、さまざまな創意工夫をされていくことは間違いないでしょう。 映画を愛する私たち観客は、今しか味わうことのできないイレギュラーな映画館文化を楽しむべきです。 困難な時代にも発表される新作映画のありがたみや、出会う機会がなかった名作と大スクリーンで対峙(たいじ)できる喜びを。そして、ウィズコロナ時代の映画館のことを後世に語り継いでいくのです、歴史の証人として。
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