中野サンプラザ、2023年7月閉館へ!――「次の100年」をめざし、中野は一体どうなる?
中野サンプラザが2023年7月に閉館することが決まりました。50年もの間サブカルチャーのメッカ、中野のシンボル的存在であり続けた中野サンプラザの変遷と今後について、都市商業研究所の若杉優貴さんが解説します。「築50年」を迎える中野サンプラザ、ついに建て替え始動! JR中央線・東京メトロ東西線の中野駅北口にある複合施設「中野サンプラザ」(東京都中野区)が、老朽化による建て替えのため来年(2023年)7月2日を以て閉館することが発表されました。 現・サンプラザの跡地には、音楽ホールを備えた中野区の新たなシンボルとなる複合施設が建設されるといいます。一体どういった建物になるのでしょうか。 三角形の建物が印象的だった中野サンプラザ。 あと1年弱で見納めに。(画像:若杉優貴)陸軍中野学校から音楽の聖地となったサンプラザ 中野サンプラザが開館したのは今から約50年前の1973年6月のこと。中野サンプラザという名前は開業時から使われているものですが、当時の正式名称は「全国勤労青少年会館」で、旧労働省が管轄する若い勤労者向けの福祉施設として運営されていました。 当初は館内に主に若者を対象とした職業相談所や図書館が設けられていたほか、勤労者向けの関連イベントも開催されており、1970年代当時の新聞を見るとイベント時には勤労青年が全国各地(実家など)に無料で通話できる電話が設置されたこともあったそう。 その後、2004年に民営化され、現在は中野区が主体となって設立した第三セクター企業が運営しています。 現在の館内にはコンサートホール、結婚式場、ホテル、飲食店、さらにはテニスコートやボウリング場、プールなどのスポーツ施設も入居。とくに最大収容客数2,222人の「中野サンプラザホール」は音響設備に定評があり、多くの人気アーティストがその成長の過程で「東京での大型ホール公演の登竜門」としてのコンサートを開催したほか、「アイドルコンサートの聖地」としても親しまれてきました。 中野駅側から見た中野サンプラザ。 左側は同時に再開発される予定の中野区役所。(画像:若杉優貴) ちなみに、中野駅北口には中野サンプラザのほかにも隣接する中野区役所をはじめとして中野税務署、中野区立中野中学校など多くの公共施設がありますが、これらがある場所は戦前に旧「陸軍中野学校」(その前は陸軍電信隊など)だった場所。 中野学校の敷地のうち、西側(サンプラザや区役所など以外)の大部分は2001年まで警察大学校や警視庁警察学校として活用されたのち、現在は中野区立中野四季の森公園や東京警察病院、警視庁合同庁舎などが設けられています。 新・サンプラザは「高さ200メートル級」! それでは、中野サンプラザは今後どういった建物へと生まれ変わるのでしょうか。 中野区によると、中野サンプラザがある街区は隣接する中野区役所がある街区と一体化して再開発を行う計画で、2021年1月には中野区による「中野駅新北口駅前エリア拠点施設整備に係る民間事業者の募集」の結果、野村不動産を中核に東急不動産、住友商事、ヒューリック、JR東日本を施工者に、電通や野村不動産ホテルズなどを協力者とする事業案が選定されています。 街区全体の新名称は「NAKANOサンプラザシティ」、事業計画のコンセプトは「Culture Driven City Nakano 100」としており、2028年度までに「高さ200メートル超の高層棟「シンボルタワー」を中核に、隣接して低層棟のホテルと大ホールを整備。 そのうち「シンボルタワー」には展望フロアが設けられるほか、高層階はオフィス、中層階はレジデンス(住宅)、低層階は商業施設として活用されます。なお、2022年時点では商業施設やオフィス部の具体的なテナント名などは発表されていません。 「NAKANOサンプラザシティ」イメージ。 左のシンボルタワーには現・中野サンプラザをイメージした斜めの意匠が設けられます。(中野区ウェブサイトより) 特筆すべきは、シンボルタワーの高層階に現在の「中野サンプラザ」を連想させる大きな斜めの意匠が入ること。「最近は同じようなかたちの高層ビルが多い」と言われることもある東京ですが、現在の建物と同様に遠くから見てもこの建物がNAKANOサンプラザシティだということが一目で分かるデザインとなりそうです。 新たな大ホールはキャパ3倍 シンボルタワーの北側に建設される低層棟部分にはホテル、大ホール、屋上庭園などを整備。なかでも大ホールは現在よりも大型化され、現収容人数(2,222人)の3倍超となる約7000人規模になる計画です。 「NAKANOサンプラザシティ」大ホールイメージ。 入口には広場が設けられます。(中野区ウェブサイトより) 現在の中野サンプラザホールはその音響の良さもさることながら「2000人規模」ということもあり「客席とステージが近いホール」と言われていました。 新ホールは約3倍超のキャパシティとなりますが、野村不動産は新ホールの設計に際してこうした「ステージと観客席の距離が近い現中野サンプラザのDNAを継承」するとしているほか、シンボルタワーとの連絡部分などにはサテライトスタジオや「中野文化に触れられる場所」も併設される計画で、コンサートやイベントが開催されていない時でも楽しめる施設となりそうです。 新・NAKANOサンプラザ大ホールのイメージ。(中野区ウェブサイトより)新・NAKANOサンプラザシティは文化発信拠点としての機能も設けられる計画。 イメージが「中野っぽい」…気もします。(中野区ウェブサイトより) なお、中野区役所はサンプラザ北西側のかつて中野区立体育館があった場所(体育館は沼袋に移転、ネーミングライツにより現「キリンレモンスポーツセンター」)に移転する予定。新庁舎は2024年の開庁を目指して工事が進められています。 中野区役所新庁舎イメージ。 駅やサンプラザシティとはデッキ等で接続されます。(中野区ウェブサイトより)中野駅も再開発で「新駅ビル」誕生――「新たな100年」の本格始動は2028年度 再開発によって生まれ変わるのはサンプラザ・区役所のみに留まりません。 中野駅周辺ではNAKANOサンプラザシティの建設に合わせて駅や中野区役所新庁舎と接続するスカイデッキや連絡通路が整備されるほか、中野駅自体も再開発が計画されており、2027年度には新たな中野駅ビルと南北自由通路が完成する予定となっています。 これによりサンプラザへのアクセスはもちろんのこと、中野の街全体の回遊性も向上しそうです。 新・中野駅ビルとサンプラザはデッキで接続。回遊性も高まることになりそう。(中野区ウェブサイトより) NAKANOサンプラザシティの建設に際して、中核事業者の野村不動産は「文化を原動力とした中野100年のまちづくりをめざすことを標榜する」としており、館内では中野文化や旧サンプラザの歴史・アーカイブを活用した情報発信も行っていくとしています。 50年の歴史に一旦幕を下ろすこととなった中野サンプラザ。新しい建物は現・中野サンプラザと中野区役所庁舎を解体したあと2028年度の全面完成を目指して工事が進められる計画で、近く22世紀に向けた「中野100年のまちづくり」が本格的に動き始めることになります。 北側から見た「NAKANOサンプラザシティ」イメージ。 新施設の完成は約6年後・2028年度の予定。(中野区ウェブサイトより) (NAKANOサンプラザシティの計画概要・画像出典は中野区ウェブサイトより。)
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