「抹茶」の進化が止まらない! 都内イベントも開催、ブームを超えて人気を拡大し続けるワケとは
日本伝統の飲み物という枠組を飛び越えて、スイーツの世界でも今やすっかり定番のフレーバーになった抹茶。でも、「まだまだこれからです。抹茶を取り巻くムーブメントは、これからさらに面白くなります」と、ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員の有木真理さんは力説します。「今さら抹茶?」なんて言わせない「抹茶ブームが来ています! 抹茶について書かせてください!」 そう編集部に懇願してみたのに、いまいちピンと来てない様子。「え? 抹茶ものってカフェでもコンビニでもずいぶん前から普通に置いてますよね。ちょっと今さら感ありませんか?」 違うんです。抹茶は進化し続けているコンテンツで、東京でもまさに今、新時代のブームが来ているんです。 10月3日からの3日間、渋谷キャストガーデンで開催された「抹茶ハイフェスティバル」(画像:抹茶ハイフェスティバル抹茶ハイフェスティバル実行委員会) ということで今回は、日本人にとって非常に身近な抹茶がテーマ。あらためてその歴史を振り返るとともに、抹茶がどのように進化し再ブームに至ったのか、その現象と背景を解説します。そして、その進化は今後どのような展開を見せるのか、ちょっとした豆知識とともに未来予想をしてみたいと思います。 そもそも抹茶とは? 煎茶と何が違うの? さて、皆さんは抹茶と煎茶の違いをご存じでしょうか。簡単に言えば、抹茶は葉を乾燥させて、石うすで摺(す)り、粉末にして、茶筅(ちゃせん)で泡立ててお茶にするもの。つまり葉そのものを摂取する飲み方です。一方「煎茶」は、揉みながら乾燥させ、その葉をお湯を急須に注ぎ、液体だけを飲むため、葉そのものは、基本的に摂取しません。 もう少しだけ抹茶について解説すると、抹茶は葉の栽培過程で日光を遮ることでお茶に含まれる葉緑素が増えるため、葉の緑が濃くなります。そして、日光を遮ることで渋みの基となるカテキンの形成が抑えられ、あのまろやかさが出るそうなのです。 抹茶をたしなむ日本人のイメージ(画像:写真AC) 抹茶は何となく日本古来の飲み方というイメージがありますが、この摺ったお茶をお湯に溶かして飲む「抹茶スタイル」は、実は1200年前後に中国で生まれてその後日本に伝わってきたものなのだそうです。 主に貴族や武士の間で楽しまれ、その後、千利休の活躍によって日本の文化として根付いていきました。対して、急須でお茶を入れる「煎茶スタイル」の誕生は1650年ごろ(こちらは日本で)といいますから、「抹茶スタイル」がいかに長い歴史を持つかがおわかりいただけると思います。 ではこの歴史ある抹茶が、現代の日本社会でどのように流行していったのか、抹茶ブーム・ヒストリーを振り返ってみましょう。 一大ブームを起こした「和洋融合スイーツ」一大ブームを起こした「和洋融合スイーツ」 今でこそアイス、チョコレートなどスイーツのフレーバーとして定番となった抹茶ですが、お茶としてだけではなく日常のシーンで親しまれ始めたのは1990年代ごろからです。 アイスクリームの人気ブランド、ハーゲンダッツ・ジャパン(目黒区上目黒)が抹茶味のアイスクリームを発売したのは1996(平成8)年。当時「お茶味のアイス」は斬新なフレーバーとして注目を集め、大ブレイクしました。現在でもこの味は、同社のカップアイスのなかでバニラに次ぐ2番目の人気を誇っています。 そして同年に第1号店を銀座にオープンしたスターバックス・ジャパン(品川区上大崎)は、2001年に抹茶クリームフラペチーノを発売。こちらも瞬く間に人気商品に駆け上りました。こうした抹茶フレーバーの大ヒットを目の当たりにした各食品メーカーが後を追うようにチョコレートやクッキーを開発し、抹茶は一気に人気フレーバーとして定着していったのです。 スターバックスの抹茶メニューのイメージ(画像:写真AC) 抹茶の人気は、日本国内にとどまりません。 2005(平成17)年、アメリカのスターバックスが抹茶ティーラテを本国で発売。コーヒーにはない旨みを持つ「ジャパニーズ・スーパーフードMATCHA(抹茶)」は、おしゃれで流行に敏感なニューヨーカーたちを中心に支持を集め、アメリカでも安定した人気を得るようになります。 さらに最先端のスイーツを生み出し続けるヨーロッでも、味はもちろん見た目の鮮やかなグリーンが功を奏し、「ジャパニーズ・フレーバー」の代表格としてケーキやマカロンに取り入れられるようになっていきました。 こうして欧米で高い評価を受けたことがきっかけになって、日本でもあらためて抹茶の魅力が認知され、今再びのブームを起こしているのです。 「ジャパニーズ・スーパーフード」と呼ばれる理由「ジャパニーズ・スーパーフード」と呼ばれる理由 おしゃれで見栄えがよく、旨みも深い――。しかし抹茶の特長はこれだけではありません。抹茶を語るうえで欠かせないのがその栄養価の高さです。 特筆すべきは次の4つの栄養素です。 ひとつめは、コレステロールを抑制するという「カテキン」。ふたつめはリラックス効果が期待できる「テアニン」。3つめは女性におなじみ、美肌の味方「ビタミンC」。そして集中力を高める「カフェイン」も、コーヒー並みに含まれているとされています。さらにはむくみの解消や消臭といった効果も期待できると聞けば、いかに高い栄養素を含む食材かが分かると思います。 さて、欧米からの「逆輸入」で再び注目された抹茶は現在、日本・東京でどのようにブームになっているのでしょう。 昨今の抹茶ブームの特徴は、ドリンク商品の多様化が進んだことです。たとえば2019年夏、一大ブームを巻き起こしたタピオドリンクでも、ほとんどの店がミルクティーの代わりに抹茶ミルクティーを入れる「タピオカ抹茶ミルクティー」をメニューにそろえていました。 居酒屋で人気の抹茶ハイのイメージ(画像:写真AC) 酒類業界でも抹茶メニューは注目を集め、東京でもイベントや出店が相次いでいます。 2019年10月3日(木)から5日(土)までには、日本初の「抹茶ハイフェスティバル」が渋谷キャストガーデン(渋谷区渋谷)で盛大に開催されました。さらに街の居酒屋へと目を向けると、100種のお茶割りドリンクが提供される店「茶割」がJR目黒駅近くにオープンし人気を集めています。さまざまな形態のドリンクと融合しやすいという、抹茶の特長が存分に発揮されたムーブメントだと言えるでしょう。 次なる進化は? 私的・未来予想図次なる進化は? 私的・未来予想図 それでは最後にここまで指摘してきた抹茶の特長と絡めながら、この先のブームの行方を予想してみましょう。 まずは「栄養価の高さ」について。抹茶が健康的なドリンクだとあらためて認知されたことで、今後も安定的な需要が続くことが予想できます。長らく活況が続く「健康志向」ブームは、一時的なブームにとどまらず未来永劫続くだろうと筆者は考えるからです。 健康志向と併せて現代日本の食ブームに欠かせない要素といえば「SNS映え」ですが、抹茶の「鮮やかな見た目」は、まさにこれに当てはまります。そのままでもきれいなグリーンだし、ミルクを加えたやわらかい薄緑色も魅力的です。スムージーやカクテルなど多様なドリンクに使えるので、そのビジュアルを生かした展開は無限に広がりそうです。 そしてもうひとつは、さまざまなメニューに合わせられる「汎用性の高さ」。抹茶はどんな料理にもよく合い、ジャンルやシーンを選びません。お酒を飲まない層などに積極的に抹茶を提案することで、まだまだ消費量は伸びていくでしょう。ミルクや豆乳、黒糖とアレンジしたりとデザートに取り入れやすいため、活躍の場はさらに広げられるのではないでしょうか。 こうした国内でのさらなるブームはもちろん、海外でもジャパニーズ・スーパーフードのひとつとして、今以上に展開されるのではないか、と期待しています。今後も、日本では思いつかないような新しい楽しみ方が海外で誕生し、日本へと逆輸入されることを楽しみにしています。
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