労働基準監督官試験は、どれほどの難易度なのでしょうか。労働条件の確保や向上、働く人々の安全と健康の確保を任務とする労働基準監督官は、人気の職業です。
ただし、労働基準監督官試験は一般的な公務員試験よりも難易度が高く、合格のためには多くの勉強が必要とされています。
この記事では労働基準監督官試験の難易度や合格率、どれほどの勉強量が必要なのかを解説しています。他の資格との難易度の比較や、労働基準監督官試験に効率的に合格するための方法を紹介します。
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労働基準監督官の役割について
厚生労働省の専門職種である労働基準監督官のおもな役割は、労働者の労働条件の確保と、向上や働く人の安全や健康の確保を図ることです。
たとえば、ある会社から社員に給料が払われなくなったとします。労働基準監督官が労働者から情報提供を受けると、労働基準法などの法律をもとに、会社へ給料を支払うよう指導します。
担う範囲は幅広く、その他の業務は「監督指導業務」「司法警察業務」「安全衛生業務」「労災補償業務」などです。以下で、一つずつ詳しく説明します。
監督指導業務
「監督指導業務」は定期的にあるいは労働者からの情報をきっかけに、労働者の労働条件を調査する業務です。
具体的には労働基準法や労働安全衛生法をもとに事業所や会社に立ち入り、設備や機械、帳簿などを検査します。
法律違反が発見された場合は事業主に対して改善策を指導し、危険性のある機械や設備があればその場で使用停止など行政処分を下すこともあります。
平成30年の件数は、定期監督が約13万6,000件、情報提供を受けた申告受理件数が約2万5,000件です。
司法警察業務
「司法警察業務」は度重なる監督指導の結果、法律違反を是正しない悪質な事業主などに強制捜査を行い、検察庁に送検する業務です。
労働基準監督官は警察官ではありませんが、労働関係法令違反の罪に関しては、刑事訴訟法に規定する特別司法警察職員として職務を行うことができます。
専門の犯罪分野への知識を保有する警察官という扱いとなり、有する権限は取り調べや捜査、差し押さえ、逮捕など一般的な警察官と同様です。
理工系の知識をいかした押収した労働災害証拠品の分析、供述調書の作成や送検なども行います。
平成30年には、労働安全衛生法違反で529件、労働基準法等違反で367件の送検実績があります。
安全衛生業務
「安全衛生業務」は労働安全衛生法などに基づいて、労働者の安全や健康を確保するための指導や情報提供を行う業務です。
たとえばクレーンやボイラーなど危険な機械について製造許可や検査を課したり、健康に悪影響のある化学物質などの製造を禁止させるなど有害物の規制を行ったりします。労働災害が発生した場合には、調査や再発防止に向けた指導を行います。
労働基準監督官には理工系の採用区分(労働基準監督B)があり、大学などで学んだ工学、化学、土木などの知識を活用できます。
労災補償業務
「労災補償業務」は労働者の業務中、または通勤による負傷、傷害、疾病、死亡に対して、労働者やご遺族へ必要な保険を給付するために事実関係の調査をする業務です。
被災者や遺族の請求により、職場関係者からの聴き取りや実地調査を行い、労働者災害補償保険法に基づいて、審査や調査をします。
必要に応じて専門医や主治医から医学的意見を収集した上で審査し、労災保険(労働者災害補償保険)に基づいて保険給付を行います。
また被災者の早期社会復帰促進や、遺族への援護をするための事業も、労災補償業務の範囲です。
労働基準監督官の採用試験について
労働基準監督官の試験は年に1回、全国各地で実施されます。
採用試験の最終合格後、勤務を希望している都道府県の労働局で採用面接が行われ、合格するとその労働局管内にある労働基準監督署が勤務地になります。
採用試験は2種類に分かれていて、試験問題も別々です。2種類の内訳は以下のとおりです。
労働基準監督官A
労働基準監督官B
どちらの試験を受けるかは、自由に選択できます。得意なほうを選択しましょう。
ただし主な職務はあらゆる業種の事業場に立ち入り、労働時間や安全衛生の基準遵守を調査することです。
採用後は各分野の専門知識を業務に生かす必要があり、法文系の知識も理工系の知識も求められます。
法文系、理工系、どちらで採用されても待遇に影響はなく、仕事内容も同じです。
試験合格率
合格率は、2021年度でA(法文系)は15.1%、B(理工系)は23.9%です。合格率はA(法文系)のほうが低くなっています。
合格者男女比率は、A(法文系)では男性55.1%、女性44.9%、B(理工系)は、男性75.6%、女性24.4%でした。
労働基準監督A
年度 | 申込数 | 合格者数 | 合格率 |
---|
2021年度 | 2,224人 | 336人 | 15.108% |
2020年度 | 2,699人 | 358人 | 13.264% |
2019年度 | 2,703人 | 379人 | 14.021% |
労働基準監督B
年度 | 申込数 | 合格者数 | 合格率 |
---|
2021年度 | 669人 | 160人 | 23.916% |
2020年度 | 747人 | 118人 | 15.797% |
2019年度 | 805人 | 194人 | 24.099% |
合格率は学歴で変わる?
受験するうえで、学歴は関係なく、試験は誰でも受けられます。
労働基準監督官の出身大学で多いのは、国立大学や有名私立大学です。
具体的には国立大学であれば東京大学、京都大学、北海道大学、東北大学、九州大学、大阪大学、岡山大学など。
私立大学は早稲田大学、慶應義塾大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学などが多くの合格者を輩出しています。
日東駒専の大学群にあたる、日本大学や専修大学出身者もいます。
労働基準監督官の難易度
試験の難易度は、よく社会保険労務士試験と比較されます。立場は異なりますが、どちらも労働条件や労働環境の改善を行う仕事であるためです。
社会保険労務士の合格率(%)は、例年一桁台です。一方、労働基準監督官A(法文系)の合格率は15.1%、労働基準監督官B(理工系)は23.9%。合格率を比べると、労働基準監督官は社会保険労務士よりも難易度が低いと言えます。
一般的に勉強量は社会保険労務士のほうが多く必要だとされています。
ただし労働基準監督官は筆記だけでなく、専門試験や人物試験にも合格しないと採用されません。
他の公務員試験と比較すると、難関といわれる国家総合職より優しく、教員採用試験や市役所職員よりは難しいとされています。
多くの場合、法務省専門職員や食品衛生監視員と同じくらいのランクに位置付けされます。
受験資格と試験内容について
試験は学歴不問ですが、他の受験資格はどのように規定されているのでしょうか。受験資格と、試験内容について紹介します。
受験資格について
試験を受験するための資格は、以下の通りです。
- 受験年度の4月1日の時点で、年齢が21歳以上30歳未満の者
- 受験年度の4月1日の時点で、年齢が21歳未満で、次に掲げる者
(1)大学を卒業した者、及び受験年度の3月までに卒業見込の者
(2)人事院が、(1)と同等の資格があると認める者
学歴は問われませんが、30歳未満でないと受験できないため注意が必要です。
試験内容・出題数
第一次試験の労働基準監督A(法文系)、労働基準監督B(理工系)の試験内容や出題数の違い、試験内容例を説明します。
【共通試験問題】
- 基礎能力試験:知能分野27題/
- 知識分野13題
文章理解、判断推理、数的推理、資料解釈、自然、人文、社会(時事含む)など - 専門試験:40題
労働法、労働事情(労働需給、就業構造、労働時間・賃金、労使関係など
【AとBの各専門問題】
- 労働基準監督A(法文系)の専門問題:48題・40答・記述式2題
憲法、行政法、経済学、民法、刑法、労働経済・社会保障、社会学など - 労働基準監督B(理工系)の専門問題:46題・40答・記述式2題
数学、物理、化学、機械系、土木系、電気系、建築系、応用化学系、応用数学系、衛生・環境系、応用物理系など
(引用:厚生労働省「労働基準監督官採用試験」)
「やりがいのある」労働基準監督官の仕事 働き方と待遇について
近年、労働基準監督官採用試験の受験倍率は約6~8倍と、高い倍率を保っています。
理由としては労働災害で苦しむ労働者へ保険を給付したり、事業主と労働者双方の状況を検分して労働環境の改善を求めるため社会貢献度が高く、やりがいのある仕事であることが考えられます。
また、さまざまな職種の方とやりとりするため、幅広い専門知識を習得できます。国家公務員のためキャリア形成がしやすく、自分次第で安定して仕事を続けられます。
労働基準監督官の待遇
国家公務員のため、行政職俸給表により給料が決定されます。
2021年度の初任給は、1級26号棒で183,900円です。初任給はさほど高くありませんが、年功序列に近い制度が残っているため、年数を重ねるにつれて給料の上昇が見込めます。
年度更新の時期や大規模な労災事故が発生した際は残業が発生しやすいものの、労働条件について調査する立場であり、労働基準を遵守しているため、ワークライフバランスは整いやすいでしょう。
ただし、数年に1度転勤があるので、ひとところに根差して生活したい人には向きません。
キャリアアップが期待できる仕事
全国各地に転勤を繰り返すため、地域ごとの特性や産業構造のなかでさまざまな経験を積めます。専門知識を身に付けられることから、選択肢が豊富でキャリアアップを目指しやすい人材になれます。
都道府県労働局長・労働基準監督署でのキャリアパス
実績が評価されると、都道府県労働局長や労働基準監督署長へキャリアアップが期待できます。
また一定以上の経験を積むと、社会保険労務士試験の一部科目が免除されます。社会保険労務士は、転職して会社員として働く方法から開業社労士として大きく稼ぐ方法まで、働き方がさまざまです。
実務経験を有していると、社会保険労務士としても大きなアドバンテージになります。
本省でのキャリアパス
おもな勤務先は、厚生労働本省や全国にある労働局や労働基準監督署です。
採用後2年間は原則採用された労働局で勤務するため、生活拠点の地域で働けます。3年目以降は全国への異動があり、本省勤務も希望できます。
しかし各労働局の職員構成、本人の個別事情などを勘案したうえで異動先が決定されるため、希望のとおりになるとは限りません。一般的には、本省勤務が出世コースとされています。
15年目以降は、都道府県労働局の各課室長、各課室長補佐、専門官や、労働基準監督署の署長、副署長といった幹部に登用されることもあります。
社労士として企業で働く
公務員として立場の弱い労働者を保護するため、事業者側を監督しているのが「労働基準監督官」であるのに対し、民間の事業者や労働者側で労務環境の整備を強化しているのが「社会保険労務士」です。
立場こそ違えど、2つの職業には大きな関わりがあります。そのため労働基準監督官採用試験に合格していると、申請することで社労士試験の「労働基準法及び労働安全衛生法」の科目が免除になります。
社労士試験は範囲が広いことも特徴で、免除によって試験対策の範囲が狭くなるため合格できる可能性は高まります。
実務経験を積んだのち、社労士として一般企業で働いたり、開業したりして収入を上げるというパターンも選択可能です。
労働基準監督官に合格するために
試験は約6~8倍と倍率が高く、なかなか合格するのは難しいと言われています。
しかし近年は以前より少しずつ倍率が下がっており、2021年は5.8倍となっています。試験科目が多く、試験が難しそうなイメージを持たれており、受験者が減少しているためです。
現在は比較的、合格しやすいチャンスと言えるでしょう。
ただし、独学での合格が簡単にできる難易度ではありません。出題範囲が広いうえに独学では優先順位がわからず、効率が下がってしまいます。
教養試験では数的処理、専門試験では経済学や統計学などの計算問題が多く、解く方法を理解していなければいけません。
さらに近年は独学での対策が難しい、面接や専門記述論文が重要視されています。効率的に学び合格する確率を上げるには、通信講座などスクールの利用がおすすめです。
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まとめ
労働基準監督官は厚生労働省の専門職種(国家公務員)です。労働者を救う立場としてやりがいがあり、さまざまな専門的な知識を得られるため、試験の倍率は約6~8倍と人気を集めています。
受験資格は学歴不問で、30歳未満であれば受験できます。
しかし採用に際しては点数の高さが問われるため、国立大学や有名私立大学の出身者が多いのが実情です。
独学での合格も可能ですが、近年は面接や専門記述論文が重要視されているため、最新傾向を盛り込んだ専門家の授業が受けられる講座を選んだり、添削サポートの手厚い講座を受講するのがおすすめです。
費用を抑えるためには通信講座の受講が効率的です。
一般的な公務員試験より難易度は高く、合格すればキャリア形成がしやすくなります。実務経験を積めば社会保険労務士への転職も狙えますので、興味のある方はぜひ挑戦してください。