珈琲と文具とつながる香りに誘われる街歩き―感覚を解放する蔵前の新スポット4選【東京台東区】
歴史的にクラフト系ものづくり関連企業や職人の工房などが集積してきた蔵前エリア。近年は古い倉庫をリノベーションした無機質なおしゃれカフェやものづくり体験スポットなどが増え人気です。今回はエデュケーショナルライターの日野京子さんが蔵前周辺エリアの「モノと感覚」にフォーカスを当てた新店についてご紹介します。 2024年の大河ドラマの主人公が紫式部ということもあり、平安時代が注目を集めています。日本の香文化は元々仏教や儀式だけに使用するものから始まり、平安時代になると貴族など上流貴族の間では衣服に匂いをつけてオリジナリティーを競う「空薫物」が人気となりました。今でいう柔軟剤やデュフューザーのような使い方です。 想いを綴る紙に匂いをうつして想像力や記憶を呼び起こし、姿を見ることなく佇まいを演出できるモノと香りの関係は、現在の東京ではどのような形をとっているのでしょうか。 今回は、歴史ある下町風情が色濃く残る台東区の中でも職人の集まる「ものづくりのまち」として栄えてきた蔵前エリアを中心に、注目を集めているニューショップをご紹介します。 【蔵前】封灯/感覚を研ぎ澄まし未来の自分と向き合うカフェタイム 純喫茶ブームが続き、若い世代にも「ぬくもりのあるレトロな空間で飲み物や軽食を食べる文化」が浸透しています。チェーン店にはない個性的な喫茶店は「自分好みのお店」を探すという新たなムーブメントを巻き起こす存在にもなっています。 2023年12月16日(土)にオープンしたばかりの詩的喫茶「封灯」は、蔵前エリアにある未来の自分へ手紙が送れるお店「自由丁」の2号店。「自由丁」とは違い、店主こだわりのカフェメニューが楽しめ、日常使いもできるお店です。 アンティーク家具がなじむ落ち着いた空間で手紙を書いて自分を見つめ直す(画像:フリーモントリリース)【その他の画像】>> 一年後の自分宛への手紙が書けるレターセットにドリンク1杯と一口スイーツが付いた「TOMOSHIBI LETTER」(2,970円〜)は、落ち着いた雰囲気の中で未来の自分へのメッセージを書くという非日常を経験できます。書いた手紙はお店に保管され、一年後実際に指定した住所に郵送されます。 蔵前の人気ロースター「コフィノワ」による封灯オリジナルブレンド(画像:フリーモントリリース) スマートフォン全盛の今、手紙を書く機会は激減しています。自分への手紙を書いて今の自分と向き合い、封灯のコンセプトである「素直な気持ちと日々を味わう」を体感してみてはいかがでしょうか。 映画のワンシーンのようなシーリングスタンプで封をする(画像:フリーモントリリース)【蔵前】MAD et LEN/物語性のある香りと武骨な器に魅了される旗艦店 南仏のフレグランスブランド「MAD et LEN(マドエレン)」の日本初となる旗艦店が、2023年11月蔵前エリアにオープンしました。 香水大国であるフランスには多くのフレグランス会社がありますが、「MAD et LENの名はフランスの小説家・プルーストの大作『失われた時を求めて』の中で、主人公がマドレーヌを紅茶に浸して食べた瞬間に遠い幼少期の記憶がよみがえったという有名なシーンに由来しています。 キャンドルや珍しいフレグランスオイルなどフルラインアップをそろえ、すべての香りが体験できる旗艦店(画像:株式会社ドゥーブルアッシュリリース) 「ふとした瞬間、香りから思い出や感覚を呼び起こす」体験を大切にし、一つ一つ職人による手作りで調香されています。 人気商品「ポプリ」は、職人の手により作られた無骨な鉄の器に収められた琥珀樹脂や溶岩に専用のフレグランスオイルを垂らして楽しむという、一般的なポプリとは全く違うほかにはないコンセプトを掲げています。 ポプリの概念を覆す「ポプリ アポセカリー/アンバー(琥珀樹脂)」(15mlリチャージオイル1本付属15,400円~)。物語性のある天然の香りを染み込ませたふぞろいな天然石と武骨な鉄のフォルムがスタイリッシュ(画像:株式会社ドゥーブルアッシュリリース) ブランドの故郷である南仏の自然からインスピレーションを受け調香された香りは、天然素材のみを使用し、伝統的なアポセカリー(薬局の調剤)を踏まえた「その時にしか出会えない繊細な香り」。2024年、今までとは違う香り文化を経験してみたいですね。 職人の手仕事によるオブジェのような器が際立つ(画像:株式会社ドゥーブルアッシュリリース)【蔵前】透明書店/透明ってなんだろう?対話型AI「くらげ」のおすすめ本とは 街の本屋さんが姿を消す中、蔵前エリアに2023年4月オープンしたのが「透明書店」です。こちらは小企業を初めとした法人・個人事業主向けに、事務管理効率化のためのSaaS型クラウドサービスを開発・運営している株式会社freeeが立ち上げた異色の書店。 蔵前に現れた個性的な街の本屋さん(画像:フリー株式会社リリース) 扱う本は約3,000冊で、そのうち1,000冊は小さな書店や個人製作のリトルプレス、残りの2,000冊は「透明」「自由」に通じるビジネス本、フィクション、エッセイや漫画に絵本と他の書店が並んでいます。 最大の特徴は、話題のChatGPTを活用した対話型AI「くらげ」が行う接客です。質問すると、その人に合ったおすすめや売れている本、その理由まで教えてくれます。また「くらげ」は30分毎にアップデートされる売上データによってゴキゲンになるなど、ちょっと楽しくなる工夫がされています。AI時代の技術を活かしている個性的な本屋さんなら、今まで出会ってこなかった本と巡り合えるかもしれませんね。 看板AI「くらげ」とのやりとりで、大型書店や古書店とはまた違った本との偶然の出会いを楽しみたい(画像:フリー株式会社リリース)【浅草】inimu/国産素材にこだわった香りアイテムと調香体験 8月浅草にオープンしたのは、体験型香りのものづくりストア「inimu(イニム)」。漢字の「伝」から付けられたという店名が表すとおり、日本のものづくりを活かした香りのアイテムに関連する職人や作り手たちのバックグラウンドや遊び心を「伝えて」います。 香りを感じる商品は、原料にこだわったハンドクリーム、練香水、ディフューザーやフレグランスソープといった生活に取り入れやすい普段使いアイテムがラインアップ。 地元・浅草とのコラボレーションや使い手がカスタマイズできるような香りアイテムを通して、新たな発見やコミュニケーションが生まれる交流場所となることを目指している「inimu」(画像:株式会社キャライノベイトリリース) 注目は香り、ボトルそしてステックをチョイスして自分好みのリードディフューザーを作れるDIY DIFFUSER。自分の部屋に合わせた「自分だけのオリジナル」ボトルデザインを選んだり、お互いのイメージを選びあってプレゼントしたりするのも楽しそう。 2階のワークショップスペースでは毎週土日に12種(月末は26種)から4種香りを選ぶ香水作りのワークショップが行われています。一から香りを作ることのできる蒸留器も設置されているので、今後地域の人が育てたハーブを使うなど、商品開発にも活用していく予定だそうです。 自分好みのディフューザーを作るのも楽しい(画像:株式会社キャライノベイトリリース) 香りに特化したショップとしては珍しく、ドリンクやアイスクリームも扱っています。実際に商品に利用している無農薬の石川県能美市産のゆずを使った「ゆずソーダ」や、京都の山奥で育った緑茶の最高級品「和束茶」の抹茶を使った「抹茶ミルクフロート」など、食材の香りに着目したドリンクも楽しめます。 香りを楽しむドリンクでひと休み(画像:株式会社キャライノベイトリリース)新しいお店を開拓しに街に繰り出してみよう 新しい年がスタートすると色々なことにチャレンジしたくなります。知っている街も寄り道すれば楽しい発見があるかもしれません。新しいお店が次々に誕生する活気ある蔵前エリアや浅草に足を運んで、お気に入りのお店を見つけてみてはいかがですか? ■封灯 住所:東京都台東区蔵前3-15-4 TEL:050-8880-8678(カスタマーサポート) 営業時間:月・水〜金曜13:00~22:00(L.O. 21:30) 土・日・祝日:10:00〜22:00(L.O. 21:30) 定休日:火曜(祝日は営業) アクセス:都営浅草線「蔵前駅」より徒歩3分 都営大江戸線「蔵前駅」より徒歩2分 ※予約詳細や最新の営業状況については公式サイトをご確認ください ■MAD et LEN 住所:東京都台東区寿2-9-17 真山ビル1F TEL:03-6824-5570(株式会社ドゥーブルアッシュ代表番号) 営業時間:12:00~19:00 定休日:月曜 アクセス:東京メトロ銀座線「田原町駅」より 徒歩約1分 都営大江戸線「蔵前駅」より 徒歩約8分 ※最新の営業状況については公式サイトをご確認ください ■透明書店 住所:東京都台東区寿3-13-14 1F TEL:03-6231-6775 営業時間:【平日】12:00〜14:00、15:00~20:00 【休日・祝日】11:00〜14:00、15:00~19:00 定休日:火曜・水曜 アクセス:都営大江戸線「蔵前駅」より 徒歩1分 東武スカイツリーライン、東京メトロ銀座線、都営浅草線「浅草駅」より 徒歩6分 東京メトロ銀座線「田原町」駅 より徒歩7分 ※最新の営業状況については公式サイトをご確認ください ■inimu 住所:東京都台東区浅草2-1-5 TEL:070-7401-3069 営業時間:11:00~18:00 定休日:月曜 アクセス:東京メトロ銀座線「田原町駅」より 徒歩約1分 都営大江戸線「蔵前駅」より 徒歩約8分 ※最新の営業状況については公式サイトをご確認ください
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