司法書士補助者は資格や、実務経験がなくても就ける職業です。中には司法書士資格の受験勉強をしながら働く人もいます。
司法書士の業務をサポートすることが、司法書士補助者の仕事です。司法書士が一人で対応できる仕事量には限りがあるため、書類作成の補助や法務局回りなど外勤業務をこなします。
雇用形態は正社員だけでなく、パートやアルバイトといった形態もあります。本記事では補助者の仕事の概要や求人傾向を解説します。司法書士補助者を目指している方は、参考にしてください。
司法書士補助者とは?
司法書士補助者の仕事は、主に司法書士の補助を担うアシスタント業務です。司法書士事務所は一般的に司法書士と補助者で構成されています。司法書士の業務内容は幅広いため、一人で全てをこなすのは困難です。来客対応や事務作業、資料収集などの業務を担い、負担を減らします。
補助者は登記業務の補助や提出する書類作成をサポートします。また、裁判所や法務局へ提出書類の運搬をする場合もあります。事務作業から外回りまで、司法書士を幅広く支えるのが役割です。
事務所に補助者を設置する際は、あらかじめ都道府県の司法書士会へ雇用届の提出が義務づけられています。雇用届に必要な書類は、被雇用者の履歴書、補助者使用届、誓約書、補助者証発行請求書、写真、住民票です。
顧客が安心して仕事を依頼できる環境づくりのためには、補助者に対する信用も大切で、これらの提出物は欠かせません。業務で個人情報を扱うため、一般的な事務員より高い責任能力が求められます。
司法書士と司法書士補助者の違いとは?
司法書士と司法書士補助者は、業務において与えられている権限が違います。
補助者になるために、司法書士の資格は必要ありません。ただし、行える業務の範囲が限定されています。不動産決済や職務上請求、登記申請といった司法書士の名前を使用して行う業務には、資格保持者が必ず立ち会うことが条件です。
重要な業務は司法書士が行い、それ以外の業務のサポートを補助者が担当します。
補助者は司法書士の資格が必要な業務を一人で担うことはできませんが、司法書士の代理としてあらゆる業務に携わります。
書類を作成して提出するなどの業務をこなすには、司法書士会が発行する補助者証の携行が必須です。この業務は補助者証が無いと行えないため、補助者ならではの仕事です。
補助者証の申請をすることにより、一般的な事務職員よりも携われる業務の範囲が広くなります。資格を持たない場合でも業務のサポートを行い、責任感のある業務を経験できるメリットがあります。
司法書士補助者として働くために資格は必要ない
司法書士補助者として働くために必要な資格はなく、誰でもなれる職業です。ただし、司法書士会へ登録して補助者証を発行してもらう必要があります。
補助者は司法書士の代理人であり、司法書士に準ずる立場です。取り扱う書類は機密事項や個人情報が含まれるため責任が伴います。そのため、業務を行う上では身分を明らかにする必要があり、一般的な事務職員より強い責任感が求められます。
業務を行う際には補助者証を身につけておかなければなりません。
公的機関で書類の提出や申請をするには、身分を証明する必要があります。補助者証を所持していない状態で裁判所や法務局へ行っても、書類を提出したり公的書類を取得したり出来ません。
補助者証には氏名および生年月日、顔写真、会員の事務所の所在地・電話番号、発行日、登録番号が記載されています。有効期限が設けられており、仕事を続ける場合は定期的な更新が必要です。
司法書士補助者はきつい?
司法書士補助者の仕事量は、勤務先によって異なります。おおよそ、1カ月あたり20時間前後の残業があると考えておいてよいでしょう。業務量は事務所によって差が大きいため、ひとつの目安と考えてください。
司法書士の負担を減らすための書類作成の補助や資料収集、来客対応などが役割です。
事務職の経験がある場合は、比較的スムーズに仕事を行えます。事務作業に加えて、法務局や裁判所を訪問する外勤業務もあります。忙しい時期には複数の県を移動する場合があるため、事務スキルだけでなく体力が必要な仕事です。
事務所によっては、司法書士資格の受験生には勤務時間を配慮してくれる場合があります。締め切りのある仕事は期日直前に残業が発生しがちです。受験生は勉強時間を確保するために早めの退勤を促してくれます。
もちろん、すべての司法書士事務所が受験生に配慮してくれるわけではありません。資格の取得を目指しながら働く際には、面接時にそのことを伝え、受験生を応援してくれる事務所を選びましょう。
司法書士補助者の勤務形態は?
主な勤務形態は正社員、契約社員、アルバイト・パートです。一般的な職種と違いはありません。
未経験の場合はパートやアルバイトでの雇用はあまり数がありません。求人の数は正社員雇用のほうが多くあります。
これは仕事が多岐にわたり、時短勤務では業務を教える時間が十分にとれないためです。未経験から目指す場合は正社員として働き、経験を積みましょう。
資格の取得を目指している人は事務所から歓迎される傾向にあります。業務や業界に対する理解度が早く、熱意のある人材だと認識されるためです。
面接では、勉強時間や前回受けた試験の点数など資格取得に対する質問をされるケースが多くあります。スムーズに回答ができるよう、事前に状況を整理しておきましょう。
司法書士補助者の給料・年収
司法書士補助者の収入は一般的な事務職と同程度です。
法律知識がある人が望ましいものの、資格がなくても働けるため給与が特別高いわけではありません。ほかの職種と同じように、経験やキャリアを積んでいくと給与が上がる傾向にあります。
給与がどの程度上がるかは事務所によって異なるため、高収入を目指す人は面接の際に確認するのがおすすめです。
資格を持っていると、持っていない人より給与が高い状態で入社できるケースがあります。
正社員の場合、地方都市では月給13万円から、都内では月給20万円から30万円が相場です。アルバイトの場合、地方都市では時給850円から、都内では時給1,100円から1,500円が相場です。
司法書士補助者として働きながら受験勉強するメリット
受験勉強をしながら補助者として働くメリットは多くあります。
理解のある職場であれば勉強しながら実務経験が積めるため、資格取得を目指す人にとって最適の職場環境です。一方で、求人数が少ないなどのデメリットも理解しておきましょう。
メリットはたくさんある
司法書士資格の取得を目指している人にとっては、最適の職種と言ってよいでしょう。
サポート業務を通じて実務に触れながら経験を積めるのは、将来のキャリアに役立ちます。実際に事務所で働くことで職場選びのポイントがわかるようになり、就職する際には自分にあった事務所を選べるのがメリットです。場合によっては、働いた事務所にそのまま残る選択肢もあります。
資格の取得を応援してくれる事務所であれば、勤務時間の配慮や勉強休暇が与えられるケースがあります。勉強時間を確保しながら働けるのは大きなメリットです。また、司法書士から受験に関するアドバイスを受けられるのも利点です。
働くと経験者とみなされるため、資格取得後の初年度の年収が上がりやすい状況です。
初年度の年収は事務所によって変動するため必ずアップするわけではないものの、経験者のほうが収入が高い傾向にあります。
デメリットは補助者の求人が少なく事務所を選べないこと
このように司法書士補助者として、勤務しながら受験勉強するのは非常に有効なのですが、求人数が少なく就職先を探すのが難しいのが実情です。
さらに、少ない求人の中から受験勉強に理解のある事務所を探すのは簡単ではありません。求人があっても経験者に限定されている場合もあり、未経験でも可能な事務所はさらに絞られる傾向にあります。
すべての事務所が受験生に配慮してくれるわけではありません。中には労働環境がブラックな事務所もあります。そのような事務所に勤務した場合は残業時間が多く、勉強時間の確保が難しくなります。
また、働いたからといって試験の難易度が格段に下がるわけではありません。理由は実務と試験に出る問題には若干の違いがあるためです。
基本的には実務内容と試験勉強は直結しているものの、一部は取り扱いが違い、試験で混乱してしまうケースがあるのもデメリットと言えるでしょう。
司法書士補助者の求人傾向
司法書士補助者の求人は減少傾向にあります。不動産登記が減り書類作成支援ソフトが充実してきたためです。業務負担が減り、需要も少なくなっています。
東京や一部の大都市を除いて不動産取引の件数は減少しています。郵送での登記申請や登記完了書類の受け取りができるようになり、法務局に行く機会は減っています。また、書類作成支援ソフトの充実により、専門的な書類が効率的に作れるようになりました。
以前は、本来司法書士が行うべき業務をベテランの補助者が担う場面が多くありました。具体的には不動産取引の「決済」の場で、登記書類や本人確認、債務整理の際に行う債務者との面談です。
司法書士法違反による処分が厳しくなってからは、全ての業務を直接行うことが徹底されるようになりました。
これらの理由により、経験が浅い司法書士でも業務に差し支えることが少なくなりました。その結果、無資格の補助者より有資格者が重宝されるようになっています。
まとめ
司法書士を目指す人にとって、司法書士補助者は最適な職業です。
補助者は司法書士の負担を減らすため、登記業務のサポートや提出する書類作成の補助、裁判所や法務局へ提出書類の運搬などの業務を担います。ほかにも来客対応や事務作業などを担当するので、一般的な事務職の経験があるとスムーズに業務が行えます。
補助者は司法書士の資格がなくても働けますが、司法書士補助者証がないと公的書類の提出や取得ができません。事前に司法書士会に登録して司法書士補助者証を発行してもらいましょう。
雇用形態は正社員、契約社員、パート・アルバイトと、ほかの職業と違いはありません。受験生を応援している事務所では、勉強時間確保のため勤務時間に配慮してもらえるケースがあります。
不動産登記の減少や書類作成支援ソフトの充実により求人は少なくなっているものの、実務に触れて経験を積めるのは、将来のキャリアに役立ちます。