晩秋の東京が告げる「もうひとつの桜並木」を、あなたは知っていましたか?
桜の木は春に見上げるだけではもったいない。秋もとても魅力的だって、ご存じでしたか。晩秋、赤や黄の淡いグラデーションに色づいた葉を眺めるのもとても楽しいもの。フリーライターの下関マグロさんが都内の名所とともにその魅力を語ります。春夏秋冬、見上げる者にいつも優しい木 散歩をする人にとって「優しい木」とは何か、ご存じでしょうか。それは桜の木です。 ご存じのように桜は春になると美しい花を咲かせます。散歩者はその美しい花を眺めながら歩くことができます。真夏になると葉が青々と茂ります。並木には日影ができ、強い日差しから散歩者を守ってくれます。そして冬になると葉は落ちて、暖かい日差しが散歩者まで届くのです。 そして秋の紅葉シーズン。桜の葉も紅葉し、美しいオレンジ色に染まります。 ご存じでしたか? 桜の紅葉の美しさ(画像:下関マグロ) 紅葉というとモミジやイチョウが有名ですが、桜もまた「桜紅葉(さくらもみじ)」と言われ、紅葉のひとつに数えられています。天気のいい日、桜紅葉を鑑賞するために出かけてみませんか。 呑川親水公園から呑川緑地へ続く並木を歩く呑川親水公園から呑川緑地へ続く並木を歩く では、桜紅葉が楽しめるスポットとはどういうところなのでしょう。それはもうズバリ、桜並木が美しい場所ということに尽きます。 たとえば千代田区・九段下の靖国通りに伸びる桜並木。ある年の12月の初旬、「北の丸公園」脇の牛ヶ淵(うしがふち)方向にカメラを向けてみると、桜の葉の色づきを見ることがきました。 12月初旬、九段下の靖国通り沿いにある桜(画像:下関マグロ) その年によって色づく時期は違いますが、東京では11月から12月初旬くらいの時期に桜紅葉を鑑賞できます。ほかの木々の紅葉よりも早く始まり、遅くまで鑑賞できるのが桜紅葉の特長です。 葉そのものの色づきでいえば桜紅葉は、モミジやイチョウほどの派手さはありません。葉もやや大振りのため、落葉していてもモミジやイチョウのように気軽に拾って持ち帰ろうという気持ちにはならないかもしれません。 桜紅葉は単体の美しさというよりも、桜並木を歩くことで楽しさが分かってくる類いのものではないかと思います。春先はあれだけ花見の見物客でいっぱいで、シートを広げて宴会している団体に道をふさがれ歩くこともままならない桜並木ですが、桜紅葉の時期にはほとんど人はいません。ゆっくり、のんびり歩くことができるはずです。 都内の桜の名所として有名な上野公園、目黒川沿い、神田川沿い、飛鳥山などももちろんいいのですが、穴場的な桜並木は、サザエさんの街として有名な桜新町からほど近い呑川(のみかわ)親水公園から呑川緑道へ続く桜並木です。 呑川は現在は暗渠(あんきょ)になっていて、昔あった川には水は流れておらず、ここに桜の落ち葉がたまっていて、なかなか美しい景色です。場所によっては落ち葉はすぐに掃除されてしまいますが、ここは地面に落ちたままなので、落葉した葉とそうでないものと両方を鑑賞することができます。 モミジ、イチョウとの競演もまた美しいモミジ、イチョウとの競演もまた美しい 呑川は、世田谷区、目黒区、大田区という3つの区を流れています。全長は14.4kmで東京湾に注いでいます。 かつての呑川沿いに続く桜並木は春も秋も美しい(画像:下関マグロ) 呑川という名前の由来は諸説あります。呑めるほど美しい水が流れている川という説。また、川の氾濫で呑み込まれる川という説。また、牛が誤って川に落ち、水を呑んでしまったという説もあります。ユニークなネーミングならではでしょうか、いろいろな説があるようですね。 歩きながら桜紅葉を見ていると、視界に入る景色も大きく変わってきます。ちょっとした花壇があったり、公園になっている場所があったりして、ベンチや遊具も目に留まります。ファミリーで桜紅葉を見に出かけるのもいいかもしれませんね。 歩いていると、さらにうれしいこともあります。 それは、並木道沿いにモミジやイチョウがあることです。そういうポイントでは、桜紅葉とダブルで紅葉を楽しむことができるのです。それまで見ていた景色がボリュームアップしていく様は圧巻ですね。 春のお花見のときのようにお弁当を持って出かけてもいいかもしれません。カメラやスケッチブックを持って行くのもいいでしょう。いろいろな楽しみ方ができるのが桜紅葉です。 ちなみに桜並木は多くの場合、無料です。それがまたうれしいポイントのひとつ。近所に桜の木があれば、晩秋に出かけてみてはいかがでしょうか。
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