平成に姿を消した公園の「遊具」、代わりに「健康遊具」が出現 その背景とは?

  • おでかけ
平成に姿を消した公園の「遊具」、代わりに「健康遊具」が出現 その背景とは?

\ この記事を書いた人 /

アーバンライフ東京編集部のプロフィール画像

アーバンライフ東京編集部

ライターページへ

 子どもの頃、遊んだ近所の公園は、コロナ禍の子どもたちにとっても変わらぬ大切な遊び場ですが、その公園で最近、“ある変化”が起きているのをご存じでしょうか。子どもが遊ぶ遊具の数が減り、代わりに大人向けの「健康遊具」が増えているのです。

公園から遊具が激減

 学校が終わって家に帰ると、ランドセルを放り投げて一目散に公園まで走った記憶は、誰しもが持っていることでしょう。小さい子が砂場で泥だらけになり、それをほほ笑ましく見守っているお父さん、お母さんの姿も覚えているのではないでしょうか。

「近所の公園」は、コロナ禍での外出自粛が叫ばれるようになると、遠出ができない家族連れでごった返すようになり、子どもたちからの需要はますます高まったように思えます。しかし、改めて公園内を見回してみると、私たちが遊んだ公園とだいぶ様子が違っていることに気付かされます。

 たとえば、以前はよく見かけた「ゆりかご型ぶらんこ」。国土交通省「都市公園における遊具等の安全管理に関する調査」によると、1998年から2013年にかけて、1万4198台あったものがなんと、1864台にまで減り、10分の1ほどになっています。

どちらが大きく揺らすことができるか、友達と競争したことがある人も多いのでは(画像:PIXTA)



 また、画像のような、真ん中に支柱のある傘のような遊具(正式名称は「回転塔」)も、小さい頃、ぐるぐる回して遊んだ記憶がある人も多いと思いますが、こちらも大きく減少。1998年に5526台ありましたが、2013年には2774台と、今では半分程度の設置数になっているのです。

掴まって回るだけでスリルが味わえる回転塔。近頃はめっきり数を減らしました(画像:PIXTA)

 このように、公園の遊具が急激な減少を続けている背景には、国土交通省が2002年に出した「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」があります。遊具で遊ぶ子どもたちの“安全のため”に、“危ない”遊具は次々と撤去されていったのです。

 実際、ゆりかご型ぶらんこや回転塔は2001年から2004年の間にがくんと減っています。遊んでいる間に子どもが遊具の下に挟まれたり、跳ね飛ばされてけがをするといった事故が複数起きたことをきっかけに、撤去が進んだのでした。

一方で、急激に増加する「健康遊具」

 公園から、子ども用の遊具が姿を消すかたわら、急増しているものがあります。それが大人やシニア向けの「健康遊具」です。

 健康遊具とは、ストレッチや軽い運動など、体を鍛えることや健康づくりを目的とする、大人・シニアを対象とした遊具のこと。脇や背中伸ばし、肩回しで筋肉をほぐしたり、足などの体のツボを刺激したり、懸垂などの筋肉トレーニングができるような器具もあり、種類はさまざまです。

 国土交通省の「都市公園における遊具等の安全管理に関する調査」(2015年3月発表)によると、都道府県などが管理する全国約14万6000カ所の公園で、遊具全体の数は3年前とほぼ同じなのに対し、健康遊具(都市公園においては「健康器具系施設」)の数は128%と3割近くも増えています。

背中や腰を気持ちよく伸ばせる健康遊具(画像:PIXTA)



 子ども用の遊具が減り、健康遊具が増えた理由には、“子どもの安全のため”以外にも、少子高齢化があります。子どもの数が昔に比べて減ったことに加え、遊びの種類も多様化しました。以前は、遊ぶところは公園くらいしかなかったという人も、今では家の中でもできるゲームなどが増えています。

 最近では、子どもが公園に遊びに行くと、そこで運動しているシニアから、「ボールを投げるのは危ない」「走り回ると危ない」「うるさい」といった言葉を投げられ、遊具が使用禁止になるといったトラブルが聞かれることさえあります。

 実際に国土交通省「平成26年度 都市公園利用実態調査」によれば、平日の公園利用者の数は、学齢前~小学校までの子ども(12歳以下)を、高齢者(65歳以上)が上回っていることが分かりました。

健康づくりに利用したい、都内の健康遊具があるおすすめ公園3選

 おうち時間が増えたことにより、運動不足ぎみなのはむしろ、大人の方かもしれませんね。そんなとき、子どもたちは遊具でのびのび遊び、大人は健康遊具で健康づくりができれば、一石二鳥です。今度の休日には、ぜひ、都内の公園に家族で出かけてみませんか。

1)新宿区 新宿中央公園

すぐそばには東京都庁がそびえ、まさに都会のオアシスのような公園です(画像:新宿区みどり公園課)



 新宿中央公園は、新宿区立の公園としては最大の面積を誇る都市公園。新宿の高層ビル群の中にありながら、四季折々の植物が咲き誇る緑豊かな公園です。

 健康遊具は懸垂やぶら下がりができるものや、上体を回して、腰のストレッチができるもの、簡単に腕立て伏せができるものやスクワット用の屈伸器具など、全部で7つほどそろっています。

 子どもに大人気の大型複合遊具や、水遊びができる池もあります。2020年7月には、カフェやボルダリングができる施設「SHUKNOVA(シュクノバ)」もオープンし、子どもから大人まで一日中楽しめる、大充実の公園です。

★新宿中央公園(東京都新宿区)
・東京メトロ丸の内線「西新宿駅」から徒歩約5分
・JR「新宿駅」から徒歩約10分

2)練馬区 電車の見える公園

鉄道好きにはたまらない! 東武東上線の線路近くの公園(画像:練馬区道路公園課)

 東武練馬駅と上板橋駅の間にある区立公園。その名の通り、公園内から、次々に走っていく電車を見ることができるため、鉄道好きの子どもには絶好のスポットです。

 健康遊具は、ゆれる円盤に乗り、バランスを取って足腰を鍛えるものや、ぶら下がってストレッチしたり、懸垂ができるものなど、全部で3つほど設置されています。

★電車の見える公園(東京都練馬区)
東武東上線「東武練馬駅」から徒歩6分/「上板橋駅」から徒歩12分

3)中野区 上高田台公園

閑静な住宅街の中にある、広々とした気持ちの良い公園(画像:中野区提供)

 団地の前にある区立公園。木製のアスレチックがあり、滑り台やネットなど、たくさんの遊びができるようになっています。ターザンロープもあり、遊び応えは十分。

 健康遊具は、脇腹を伸ばしてストレッチできる器具や、背中を伸ばせるベンチなど定番のものはもちろん、平均台や、壁に書かれた番号に合わせて手のひらを動かすという頭と体を使うものなど、全部で7つほどあります。

 高齢者会館に隣接していることもあり、遊具のそばには、高齢者向けの運動メニューが紹介された看板が。シニアの体力づくりにもピッタリの公園です。

★上高田台公園(東京都中野区)
西武新宿線「新井薬師前駅」南口から徒歩15分

関連記事