価格は2万円から40万円まで
2019年3月6日(水)、東京メトロ銀座一丁目駅から徒歩4分の場所に「DRYBONSAI Tokyo GINZA Salon(ドライボンサイ・トーキョー・ギンザ・サロン)」(中央区銀座)がオープンしました。
銀座通りの喧騒を離れた場所に立つ小さなビルの6階。広さ約20平方メートルのサロン内には「ドライ盆栽」が40点近く展示されています。
ドライ盆栽とは、盆栽の土を落として乾燥させ、枝や根などを調整した、その名のとおり「枯れた」盆栽のこと。枝のせん定作業や水やり、鉢替えなどのメンテナンスを必要としないため、和モダンのインテリアとして、現在国内外から注目を集めている新感覚の盆栽です。作品の価格は2万円から40万円までで、平均3万5千円程度。サロンは完全予約制となっています。
そんなサロンをオープンしたのはなんと現役の女子大生、佐藤明香里さん(22歳)です。
「若い自分が広告塔になって、『お年寄りの趣味』というイメージがある盆栽を、幅広い世代に愛されるものにしたいんです」
佐藤さんは力を込めてこう話します。
青山学院大学文学部に在籍
1996(平成8)年7月。広島県の南東部に位置し、江戸幕府の直轄地として栄えた府中市に生まれた佐藤さん。幼いころからひとつのことに向かって突き進む「猪突猛進タイプ」だったといいます。
幼いころからピアノが得意で、芸術や東京のカルチャーにも関心があったことから、「自分の好きなことを東京の大学で勉強したい」と2015年4月、渋谷区にある青山学院大学文学部比較芸術学科に進学しました。大学では美術や音楽、演劇映像を総合的に学んでいます。
起業に関心を持つようになったのは、大学2年生のとき。大学近くの、スキンケア製品を扱う化粧品ベンチャーで1年半、長期インターンを行ってからです。
「新商品開発プロジェクトや他社へのコンサルティング案件に参加し、自分のアイデアを商品化する楽しさを知りました。男女5人のチームリーダーを経験したのも大きかったですし、そもそも自分が一会社員として働くことをあまりイメージしていなかったんです(笑)」(佐藤さん)
その勢いのまま、2018年4月に大学を休学。ウェブシステムの構築に強い人材を探していたところ、大手企業出身で現在の経営パートナーとなる男性(59歳)と5月に知り合いました。そして自己資金100万円を元手に6月、銀座に「ブライトリンク」を設立しました。
ブルーオーシャンなドライ盆栽
ある日、休学前の授業で盆栽が話題になり、そのときに少し関心を持ったことを思い出した佐藤さん。それを男性に伝えたところ、男性はこう言いました。
「僕の友人に藤田さんという人がいるから紹介するよ」
藤田さんとは、世界的に活躍する盆栽アーティストの藤田茂男さんで、のちにサロンに展示されるドライ盆栽の生みの親でした。
千葉・九十九里にある藤田さんのアトリエを訪れたのは9月のこと。藤田さんからドライ盆栽に関する熱い思いを聞くうち、ふとビジネスのイメージが湧いてきたといいます。
「(ドライ盆栽同様、メンテナンスに水を使わない)プリザーブドフラワーは若い女性に人気ですが、商品として扱うには競合が多すぎます。その点、ドライ盆栽は競合がほぼいないため、ビジネスチャンスだと思ったんです。ニッチなジャンルだから、とことん極めれば、そのジャンルの第一人者になれるんじゃないかって。盆栽は海外、特にインドネシアで近年とても人気ですから、長い目で見れば、グローバルなビジネスにもつながると思いました」(佐藤さん)
一方、藤田さんはこれまで百貨店などで期間限定のイベントを行っていたものの、自身のサロンを持っていませんでした。「自分の作品をゆっくり見てもらえる環境が欲しい」と話す藤田さんを見て、「これだ」と感じた佐藤さん。それから、オフィス併設のサロン作りを決め、3月のオープンにこぎつけました。
収益は、企業オフィスや飲食店へのレンタル事業などの企業間取引(BtoB)を売り上げの7割、一般消費者向け(BtoC)の販売を3割と想定しています。レンタル料金は作品ひとつあたり月額1~5万円。サロンに訪れる一般消費者は月に30人から40人を見込んでいます。
今後、eコマースに対応するほか、インバウンド(訪日外国人)に向けたドライ盆栽の手作り教室も開催を予定しています。月商は5月までに250万円を目指しています。
「無知さ」「チャレンジ精神」が武器
しかし「猪突猛進」な佐藤さんでも、不安がないわけではありません。
「ドライ盆栽は見た人の琴線に強く触れる一方、生の盆栽作品を作るアーティストやファンの人たちから、『生きている盆栽の命を奪って作品にするなんて、邪道だ』と言われることがまだまだあります。だからこそ私が情熱を持って、その魅力をPRしていかなきゃなって」(佐藤さん)
それでも佐藤さんは失敗のリスクを恐れていません。自身がまだ学生だからです。
「就職してからの起業だと、過去の実績からまず判断されてしまいますよね。でも私は就職の経験がありませんから『無知さ』や『チャレンジ精神』がまだ許されます。その分、作品にかける気持ちを思いきり発信し、積極的に行動することが求められます。アイデアよりもまずは行動です」(同)
とはいっても、肩書は社長。佐藤さんは自らを有名マンガの主人公に例えて、こう続けます。
「私って、自分に特別な才能やスキルがあると思っていないんですよ。だから社長っていっても、『ワンピース』の主人公の『ルフィ』みたいな社長になりたいかな。自分ひとりの力というより、仲間の力を借りて一緒に困難を解決する、あんな感じかな(笑)」
佐藤さんは4月に大学へ復学し、学生と社長の二足のわらじを履きながらドライ盆栽の魅力を発信し続けていきます。
●DRYBONSAI Tokyo GINZA Salon
・住所:東京都中央区銀座1-20-9 岡崎ビル6F
・アクセス:東京メトロ「銀座一丁目駅」から徒歩4分
・電話番号:050-3577-6464
・メールアドレス:[email protected]
※掲載の情報は全て2019年3月時点のものです。