懐かしのコッペパンと「マリトッツォ」に共通点? 日本独自の進化を遂げた歴代売れっ子パンの数々

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懐かしのコッペパンと「マリトッツォ」に共通点? 日本独自の進化を遂げた歴代売れっ子パンの数々

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中村圭

文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナー

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2021年、一大ブームを巻き起こしたスイーツと言えば「マリトッツォ」。本場イタリアと同じくパンにクリームをはさんだスタイルのほか、フルーツのトッピングや抹茶クリーム入りなど、日本独自の進化を遂げています。こうした日本のパン食文化について、文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。

2021年、空前のマリトッツォブーム

 近年、パン系のスイーツが注目されています。

 特に2021年に入ってから「マリトッツォ」が空前のブームになっています。マリトッツォとはイタリアの伝統的なスイーツで、簡単に言うと丸いパンにクリームを挟んだもの。コンビニでも売っていますので、手に取ったことのある人も多いでしょう。

いろいろな具材をはさんで食べるコッペパンと、クリームやフルーツをはさむマリトッツォ。両者の共通点とは?(画像:写真AC)



 パックマンのような見た目もかわいいと評判です。このマリトッツォ、本来はパンとクリームのシンプルなもので、中に入っていてもナッツやドライフルーツ程度なのですが、日本では独自の進化を遂げました。

 最近は日本オリジナルアレンジのマリトッツォが次々に登場しています。

 例えばイチゴやキウイ、バナナ、ブルーベリーなどフレッシュフルーツをクリームと一緒にはさんできれいな断面を見せたり、クリームに花びらやハーブをトッピングして飾ったり、クリームもチョコやピスタチオ、イチゴなどのフレーバーでカラフルになっていたりします。

 また、あずきや抹茶クリーム、桜クリームなどの和スイーツ的なものも出てきています。本場イタリアではそんなに知名度が高いスイーツという訳でもないのですが、日本でブームになって華麗に変身している姿は、感嘆をもって現地のメディアにも取り上げられています。

 日本ではパンと言うことで主にベーカリーやカフェで多く提供されていますが、人気の高まりとともに専門に扱う店も出てきました。

もっと前から人気だったパン系スイーツ

 パンと生クリームにフルーツと言うと、近年、フルーツサンドも人気が上がっています。

 老舗のフルーツ専門店やフルーツパーラーでは、目玉メニューとして従来から存在はしていました。またサンドウィッチ専門店の定番メニューとしても安定した人気があります。

 しかしここ数年、大ぶりなフルーツのきれいな切り口を売りとした、いわゆる「萌え断」のフルーツサンドがインスタグラムなどのSNSで話題となり、フルーツサンドを扱う店舗が増加。静かなブームとなっています。

 フルーツサンドは日本オリジナルのサンドウィッチで、パン食文化圏の欧米人からすると、生食パン・生クリーム・フレッシュフルーツと言う組み合わせはなかなか理解できないものらしいのですが、実際味わってみると意外とおいしいと評価のよう。

 やや塩味のあるふかふかとしたパンと生クリーム、フルーツの組み合わせは日本人ならではの味覚から生まれたものかもしれません。

 2021年7月にオープンした「凪屋(なぎや)by 東京ノアレザン」(新宿区新宿3)は高級食パン専門店のサンドイッチレーベル。

ハート形のようなイチゴがかわいい、凪屋の大きなイチゴマリトッツォ。税込み900円(画像:中村圭)



 中央区日本橋人形町の高級食パン専門店・東京ノアレザンの耳まで柔らかい生食パン「生食ハニークリーム」を使用し、クリームやフルーツにもこだわったフルーツサンドを提供しています。

 日本人の口に合うようにアレンジしたマリトッツォも目玉商品で、たっぷりのイチゴとミントで飾りつけた大きなイチゴのマリトッツォやみかんのお花のマリトッツォなど、見た目もかわいいものがそろっています。

東京都内には専門店が次々とオープン

 12月31日までの期間限定「MARITOZZO ROMANO(マリトッツォ ロマーノ)」(港区麻布十番)は、ローマ出身のシェフが日本的なマリトッツォを作る専門店です。

 店にはピスタチオやティラミス、ブリュレ、イチゴ、マンゴーなど約10種類のカラフルなマリトッツォがそろっています。

「MARITOZZO ROMANO」の商品(画像:シティダイニング)



 2019年4月にオープンした人気ベーカリー「なんすかぱんすか」(渋谷区神宮前)でも、レモン味のクリームにエディブルフラワーがトッピングされたもの、チョコクリームにジャンドゥーヤとブラッドオレンジを混ぜたものなど、インパクトのある味や外見のマリトッツォが販売されています。

 その他にも「carino(カッリーノ)」(新宿区高田馬場)や「MARIMO(マリモ)」(八王子市南大沢)など、さまざまなフルーツやフレーバーを取り入れたマリトッツォをテイクアウトできる専門店があります。

 また、既存のベーカリーチェーンでもオリジナルのマリトッツォを販売するところが増えており、「Heart Bread ANTIQUE」の、あんことクリームチーズ入り生クリーム、「アンテンドゥ」のイチゴなど、実に多彩なアレンジのマリトッツォを手軽に購入することができます。

※ ※ ※

 世界の国々にはさまざまなパン文化が根付いていますが、日本には独特の菓子パン文化があります。

 わが国ではパン食は明治期になってから本格的に導入されましたが、もともとが米食文化の国であり、主食としてのパンはなかなか根付きませんでした。

日本で誕生した名だたる菓子パンたち

 第2次世界大戦後は、急速にパン食の啓蒙が推進されましたが、手早く済ませたいと考える朝食はともかく、夕食の主食にパンを選ぶことが一般化したのはせいぜい昭和後期ぐらいからでしょう。

 その一方でおやつや軽食として食べられる菓子パンは、わが国の食文化によくなじみ、消費者の支持を得てどんどん普及していきました。

 菓子パンの起源は1875(明治8)年に銀座木村屋(中央区銀座)が開発したあんパンとされています。あんパンやクリームパン、ジャムパン、チョココロネ、メロンパンなど、なじみの深い菓子パンは全て日本オリジナルのパンです。

あんパンやチョココロネ、メロンパンなどは日本発祥のスタイル(画像:写真AC)



 もちろん、海外にもデニッシュペストリーやシナモンロールなど、甘い系のパンは数多く存在しますが、ふかふかのやわらかいパンに甘いペーストを包んだり、はさんだりする日本の菓子パンの形態は独自の進化形と言えるでしょう。

 そういえば、昔懐かしい菓子パンの中にもパン、クリームの組み合わせがいくつか見られます。

 ふかふかのコッペパンに、ミルククリームをはさんで赤いドレンチェリー(現在はあんずジャム)を乗せた「スペシャルサンド」は、日本版マリトッツォと言えるかもしれません。

 また、ドーナツ型のパンにあんことクリームを包んだ「あんサークル」と言う菓子パンもありました。こちらの表面をコーティングしているのはチョコではなく、なんとヨウカンで、販売当時でも不思議な印象がありました。

パン食の欧米人も驚く日本の独自文化

 最近は昔懐かしい定番の菓子パンを現代風にバージョンアップした形で販売する店舗も見られます。

 メロンパンの専門店は以前から行列ができるほどの人気で有名ですが、近年の高級パンブームを反映して、クリームパンやジャムパンも素材にこだわった高級志向の専門店が誕生しています。

 このように進化を続ける日本の菓子パンですが、パン食文化圏の欧米から見ると、やはり特異なものに見えるようです。

 2021年夏の東京オリンピック・パラリンピックでは海外メディアが日本の菓子パンのロングセラー「ランチパック(ピーナッツクリーム)」を絶賛していたことは記憶に新しいでしょう。

 今後も、新たな菓子パンやパン系スイーツの展開が期待されます。この機会に懐かしい菓子パンや日本独特のパン系スイーツを試してみてはいかがでしょうか。

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