日帰り静岡「東海道五十三次」を感じる旅へ。―新しい伝統工芸体験&人気の新カフェ巡り、 外せない名物グルメまで
日本の東西を結ぶ大動脈「東海道」。江戸時代、東京・日本橋から京都・三条大橋の間に53の宿場町が整備され、うち22カ所が静岡県にありました。今回はその中から、日帰り旅行に便利でレトロ&おしゃれな体験スポットについて、旅行ジャーナリスト・フォトグラファーのシカマアキさんが紹介します。●東海道にある53の宿場、そのうち22カ所が静岡県に 五街道とは「東海道」「中山道」「日光街道」「奥州街道」「甲州街道」のこと。いずれも江戸(東京)の日本橋が起点です。江戸時代、全国の大名が家来らを引き連れ、地元と江戸を移動する参勤交代の道が必要だったことから整備されました。「お伊勢参り」などの旅人たちも、東海道を歩いて旅をしました。 東海道で20番目の丸子宿にある、ととろ汁の「丁子屋(ちょうじや)」(画像:シカマアキ)【その他の画像】>> 東海道にある53の宿場のうち、東の11番「三島宿」から西の32番「白須賀宿」までの22カ所が静岡県にあります。その中で静岡市にあるのは「蒲原宿」「由比宿」「興津宿」「江尻宿」「府中宿」「丸子宿」の6つ。特に、丸子宿(まりこしゅく)では、当時の「とろろ汁」が今も味わえるほか、国内最大級の伝統工芸体験施設がリニューアルオープンして話題となっています。 ●20番目の宿場町「丸子宿」名物とろろ汁、現在も人気の老舗食事処 静岡市で最も西にある丸子宿は、自然薯を使った「とろろ汁」が有名です。「丁子屋」は、昔ながらの茅葺屋根の建物で、地元はもちろん県外からも多くの人が訪れる人気の食事処です。 歌川広重の浮世絵「東海道五十三次」に描かれた丸子宿(画像:シカマアキ) 丁子屋の創業は慶長元(1596)年で、400年以上の歴史があります。歌川広重の浮世絵『東海道五十三次』ではととろ汁を食べる弥次喜多らしき姿が描かれているほか、松尾芭蕉が詠んだ俳句「梅わかな 丸子の宿の とろろ汁」も有名。十返舎一九の『東海道中膝栗毛』にも、丸子宿のととろ汁が登場します。 江戸時代、東海道の難所である宇津ノ谷峠を前に、栄養価が高いととろ汁で精をつけようという旅人たちで、にぎわったそう。丁子屋には歴史資料館も併設され、食事と合わせて当時の貴重な資料などが見学できます。 丁子屋の看板メニューであるとろろ汁。これに麦飯が付く(画像:シカマアキ) 定食「丸子」は、ととろ汁、麦飯、みそ汁、香物、薬味と、とてもシンプルなメニュー。地元の自然薯をすりおろし、だしとみそで割ったとろろ汁を古民家で食べると、また味わい深いものがあります。 ●伝統工芸体験とおしゃれカフェなどが人気「駿府の工房 匠宿」 丸子地区にある伝統工芸体験施設「駿府の工房 匠宿」は、2021年5月にリニューアル。「歴史と未来を結ぶ場所」をコンセプトに、今川・徳川時代から受け継がれてきた駿河竹千筋細工(するがたけせんすじざいく)の照明を使用したカフェ、和染や陶芸、漆などの伝統工芸体験施設、タミヤ監修の模型工房などが自然に囲まれた敷地内に点在し、子どもから大人まで楽しめる施設です。 「駿府の工房 匠宿」は、木の温もりが感じられる国内最大級の伝統工芸体験施設(画像:駿府の工房 匠宿) 徳川家康は晩年、駿府城を居城とし、多くの職人たちを全国から集めたとされています。「駿府の工房 匠宿」では、古くから受け継がれてきた静岡の伝統工芸を今に伝えるため、駿河竹千筋細工の始まりとされる虫かご製作、静岡茶を使ったお茶染めトート作り、陶芸の器づくりや絵付けなど、数多くの体験ができます。 駿河竹千筋細工のドームは「The COFFEE ROASTER」でスイーツを提供する際などに使われる(画像:駿府の工房 匠宿) また、地元丸子「村本養蜂場」のはちみつや、静岡産の食材を使ったフードやドリンクなどが味わえるカフェ「HACHI & MITSU(ハチアンドミツ)」が人気。休日は行列ができ、平日でもリピーターが多く、おいしさはもちろん体にいいメニューがそろっています。国産紅茶の発祥といわれる地場産「丸子紅茶」もおすすめ。 2023年春にオープンした、焙煎士が厳選した豆でいれるコーヒーと専属パティシエールのスイーツが楽しめる「The COFFEE ROASTER(ザ・コーヒーロースター)」は、地元で早速話題となっています。隣接する「静岡醸造」のクラフトビールを、樽生で味わうこともできます。 静岡醸造のクラフトビール醸造所もガラス越しに見学できる(画像:シカマアキ) さらに、地元で愛されてきた名店のきんつばを継承した「蓬きんつば ときや」も2022年春にオープン。一つ一つ丁寧に焼き上げられるきんつばは、生のよもぎを使ったもっちり生地に甘さ控えめの餡が絶品。静岡茶と一緒に食べると、そのおいしさが引き立ちます。 ●旧東海道の雰囲気が残るエリア、レトロなレンガ造りのトンネルも 丸子宿からさらに西へ行った場所にある「間の宿 宇津ノ谷(あいのしゅく うつのや)」は、これから峠を越えようとする旅人たちが休憩する茶屋が並んでいた場所。その当時の雰囲気が、今も残っています。 丸子宿と、隣の藤枝市にある岡部宿の中間に位置する「間の宿 宇津ノ谷」の入口(画像:シカマアキ) この集落には、豊臣秀吉が忠義をほめて羽織を拝領し、さらに徳川家康が茶碗を贈呈したという名物茶屋もあります。参勤交代の大名たちも「縁起がいい」と立ち寄っていたとのこと。 さらに山のほうへ進むと、明治のトンネル(明治宇津ノ谷隧道)が見えてきます。明治9(1876)年、宇津ノ谷に開通した日本初の有料トンネルです。 明治のトンネル(明治宇津ノ谷隧道)は誰でも無料で見学できる(画像:シカマアキ) 平成9(1997)年には、現役のトンネルとして初めて国の登録有形文化財に登録。レトロ感たっぷりのレンガ造りのトンネルは、ぜひ見ておきたいスポットです。 東海道の資料を多く見られるのは、静岡の市街地にある「静岡歴史博物館」です。2023年1月にグランドオープンし、徳川家康に関する展示を中心に東海道について紹介するコーナーもあります。 東海道に関する資料も充実している「静岡市歴史博物館」(画像:シカマアキ)●新幹線で片道1時間超、東京都心から日帰り旅行も十分可能 東京都心から静岡市へ向かうなら、東海道新幹線が非常に便利。「ひかり」または「こだま」で、片道約1時間~1時間半という近さです。そのため、日帰り旅行も十分可能。東京から向かう際、右側の座席に座ると、よく晴れた日には富士山がきれいに見えます。指定席を早めに予約するのもおすすめです。 旧東海道は現在ではそれほど広くない道に思えるが、当時は参勤交代や多くの旅人たちが行き交う主要街道だった(画像:シカマアキ) 東海道は日本橋を起点に京都まで結ばれ、旧東海道沿いには当時の名残が今もいくつも見られます。東海道の名所や新たに話題になっているスポットなどを巡ってみてはいかがでしょうか。 取材協力:静岡市 ■元祖とろろ汁 丁子屋 住所:静岡市駿河区丸子7-10-10 TEL:054-258-1066 営業時間:月~金11:00~14:00、土日祝11:00~15:00/16:30~19:00 定休日:木曜日(毎月末は水曜と木曜の連休) アクセス:JR「静岡駅」北口7番乗り場から中部国道線藤枝駅前行きバスで約30分「丸子橋入口」下車徒歩1分 ■駿府の工房 匠宿 住所:静岡市駿河区丸子3240-1 TEL:054-256-1521(10:00~18:00) 営業時間:10:00~19:00 定休日:月曜日、年末年始 アクセス:JR「静岡駅」北口7番乗り場から中部国道線藤枝駅前行きバスで約30分「吐月峰駿府匠宿入口」下車徒歩約5分 ※最新情報については公式サイトをご確認ください ■間の宿 宇津ノ谷 住所:静岡市駿河区宇津ノ谷 アクセス:JR「静岡駅」北口7番乗り場から中部国道線藤枝駅前行きバスで約30分「宇津ノ谷入口」下車徒歩約5分 ■明治のトンネル(静岡市側) 住所:静岡市駿河区宇津ノ谷 TEL:054-251-5880(するが企画観光局) アクセス:JR「静岡駅」北口7番乗り場から中部国道線藤枝駅前行きバスで約30分「宇津ノ谷入口」下車徒歩約5分 ■静岡市歴史博物館 住所:静岡市葵区追手町4-16 TEL:054-204-1005 開館時間:9:00~18:00(入館は閉館30分前まで) 休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、12月29日~1月3日、その他展示替えの際など臨時休館の場合あり 入場料:1階無料、基本展示 大人600円ほか アクセス:JR「静岡駅」より徒歩約15分、静岡鉄道「新静岡駅」より徒歩約8分
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