コロナ禍の旅行は「机上」でGO! 東京から北海道「留萌」までワクワク想像しながら楽しんでみた

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コロナ禍の旅行は「机上」でGO! 東京から北海道「留萌」までワクワク想像しながら楽しんでみた

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弘中新一

鉄道ライター

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コロナ禍で外出できない今こそ「机上旅行」にぴったりの時期。今回は東京駅から留萌駅までを旅行します。解説するのは鉄道ライターの弘中新一さんです。

コロナ禍でも「机上旅行」ならOK

 もう夏も本番ですが、コロナ禍で今年も旅行は気が引けると、がっかりしている皆さんに朗報です。1000円札1枚程度の出費で日本各地に旅行する方法があるのです。それは、ずばり「机上旅行」。

 机上旅行は、かつてはかなりメジャーな趣味でした。行き先を決めたら、時刻表を手に目的地までの道のりを考えて紙に書いていきます。筆者の通っていた中学校には、クラブ活動の時間にみんなで机上旅行をするクラブがありました。全国の多くの学校でも「机上旅行クラブ」などさまざまな名称で存在していた時期があったようです。

 しかし現在ではスマートフォンで路線検索アプリを立ち上げれば大抵のルートは表示してくれるため、時刻表を手にしたことすらない人が多数派です。

 しかしアプリはあくまで最短・最速・最安値などの観点で目的地までのルートを教えてくれるに過ぎません。机上旅行はそうしたものではありません。

 まずは始めてみるのが一番。早速、時刻表を用意しましょう。

 今、定期刊行されている時刻表は

・JTB時刻表(JTBパブリッシング発行)
・JR時刻表(交通新聞社)

です。

 どちらも月刊で値段は1205円なので、好みで選びましょう。なお月刊では、このほかにも『北海道時刻表』(交通新聞社北海道支社)があります。

分岐のたびにさまざまなルートを想像

 この記事を書くにあたって、「今こそ行きたい! 留萌(るもい)本線ノスタルジー」という記事にひかれて『JTB時刻表』を購入しました。ただ『JR時刻表』は700号記念だったので迷いました……。

 今回の机上旅行では留萌本線を目指します。留萌本線はJR北海道が運行する鉄道路線で、北海道深川市の深川駅から留萌市の留萌駅を結んでいます。

留萌本線(画像:(C)Google)



 そんな同路線にはかつて、高倉健の映画『駅 STATION』で有名になった増毛駅がありましたが、留萌~増毛間は2016年に廃止。なお留萌市は残った区間も廃止を支持する姿勢を示しています。普段は閑散とした路線ですが、留萌駅の駅そば屋のにしんそばは絶品です。

 東京と北海道の移動は飛行機が主流です。しかし机上旅行では、時間も費用も無視して楽しめます。

東京駅から北へ

 まずは路線図を開いて、東京駅から北へ向かう路線を探します。

 通常だと東北新幹線や東北本線を選びますが、筆者は常磐線を選択。路線図に赤文字で記載された常磐線のページを開き、東京駅を6時44分に出発する勝田駅行きに乗車、8時45分に水戸駅に到着。

 時間はまだ午前、この先もっと遠くまで行けそうです。

水戸駅前の様子(画像:写真AC)

 水戸駅からは、なんとなくローカル感のある水郡線に乗ってみることにします。9時5分に水戸駅を出て、上菅谷駅着9時23分、ここで乗り換え、9時40分発の列車は12時33分に郡山駅へ到着。12時40分発の東北本線で13時26分に福島駅へ到着します。

 ここからまた旅の楽しい選択肢が。奥羽本線で山形方面を経由して北海道を目指すか、東北本線でさらに北へ行くか、です。実際の旅行では日程の都合もありますから、ダイナミックな寄り道は困難ですが、分岐があるたびにさまざまなルートを想像できるのも机上旅行の醍醐味(だいごみ)です。

東北本線で盛岡駅へ

 今回はもっと早く北を目指したくなったので、12時38分に福島駅発、白石駅で乗り換えて、14時4分に仙台駅着。ここでも、東に仙山線、西に仙石線と魅力的な分岐がありますがさらに北へ。14時36分仙台駅発の東北本線を、小牛田駅、一ノ関駅で乗り換えて、18時ちょうどに盛岡駅までたどり着きました。

盛岡駅前の様子(画像:写真AC)



 まだ18時ですから北へ向かう列車はあります。でも今日はここで止めておきます。これまでの乗り換えを振り返ってみましょう。駅弁を買っている時間はありますが、ほとんどの時間は電車に乗りっぱなし。お尻は痛いし、車窓にも飽きていることは確実です。

 そのため、この日は盛岡に宿泊。最近は時刻表にホテルの広告があまり見られなくなったので、駅の案内所かインターネットを頼ります。なお、盛岡での食事のオススメは「じゃじゃ麺」です。ネットで検索して気分を味わうといいでしょう。

青森~函館はフェリーで

 翌日の出発は遅め。12時37分盛岡駅発に乗って大館駅へ15時25分。15時28分発の奥羽本線を弘前駅で乗り換えて17時4分に青森駅に到着します。いよいよ、津軽海峡の向こうは北海道です。

 津軽海峡を越えるルートもさまざまです。新幹線で青函トンネルを越えるのが早そうですが、鉄道とバスを乗り継いで大間崎から船もよさそうです。青森港からも航路があります。今回は、比較的便利な青森港~函館港のルートにしましょう。この航路は以前体験しましたが、青森駅から徒歩圏内で、2月の雪の降る中でしたが大丈夫でした。

 青森港~函館港間は需要のある航路なので、津軽海峡フェリーと青函フェリーの2社が運行しています。青函フェリーは貨物フェリーから転換した航路なので、以前は「旅客は貨物のついで」感がありましたが、近年は整備が進んでいます。どちらのフェリーも24時間運行しているので、青森か函館かどちらかのターミナルで横になれば宿賃が1泊節約できます。

フェリーの船内(画像:写真AC)

 うまく時間を調整して、8時22分に五稜郭(ごりょうかく)駅を出発する函館本線の長万部駅行きに間に合うフェリーに乗船します。なお、函館のフェリーターミナルから五稜郭駅も歩けます。

 ここからは、鈍行のみという縛りをかけるとなかなか大変です。11時16分に長万部駅に到着し、先に行くには15時29分の東室蘭駅行きです。乗り換えて、苫小牧駅着は18時20分、18時42分発の列車で19時59分に札幌に到着します。もうだいぶ留萌は近づきました。

留萌駅からバスでさらに北上

 翌日は、7時の札幌駅発で8時36分に滝川駅に到着。いよいよ深川駅から留萌本線に乗車できます。ここで今しばらくの我慢。11時10分発の列車に乗り、12時7分に留萌駅に到着しました。ここまで、つらい旅をしてくれば、駅のにしんそばも格別の味わいなのは間違いないでょうし。

留萌駅(画像:写真AC)



 しかし、まだ旅を終えたらもったいない気がします。

 路線図を見てみましょう。留萌駅から先のバス路線のページ番号があります。これは、かつて存在した羽幌線のルートを走る沿岸バス。羽幌線が廃止されたのは1987(昭和62)年とかなり前なのですが、今でも沿岸バスでは「羽幌線廃止代替バス」として案内しています。

 12時40分に留萌駅前を発車するバスに乗車すると、終点の豊富駅には16時35分着です。このバス路線、あくまで路線バスなのでトイレがないのですが、運転手さんにお願いするとトイレがあるところで停車してくれます。

 豊富駅からは18時57分の宗谷本線に乗車し、19時49分に稚内駅へ。ちょっと寄り道しながら3泊4日の旅路で日本最北端へと到達しました。

 さらに、ここからどこを目指すのか。実際の旅行では、会社や学校の都合を考えなければなりませんが、机上旅行ではその制約はありません。どこへでも旅できる机上旅行。東京駅からのさまざまな旅路を考えてみましょう。

 なお稚内から先、以前はサハリンのコルサコフ港への航路案内も時刻表に掲載されていましたが、現在は休止中。また復活したときには、さらなる北への旅を試してみたいところです。

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