コロナ禍で需要拡大、シェアサイクル
東京都内では「3密」を避けて利用者が右肩上がりのシェアサイクル(シェア自転車)。
自転車を借りて返却することのできるサイクルポート(拠点)は続々と増設されていて、日に日に便利になっています。
まだ利用していない東京人には、ぜひとも試してもらいたいサービス。今回は、そのメリットとデメリットをあらためて検証することにしましょう。
ちょっとした移動に便利なシェア自転車は、コロナ禍も背景に急速に需要が伸びている(画像:写真AC)
シェアサイクルを利用することのメリットとしてまず挙げたいのはコストの安さです。
都内で大きなシェアを持つのは「ドコモ・バイクシェア」と「HELLO CYCLING」の二つのサービス。 どちらも全国規模で自治体と連携してサービス網を拡大しています。
双方の料金を見てみると、次のようになっています。
<ドコモ・バイクシェア>
1回会員:最初の30分165円/回
以降、30分ごとに110円/30分
1日パス: 1650円/1日(交通系ICカード使用。購入当日23時59分まで)
<HELLO CYCLING>
15分ごとに70円、12時間1000円
料金体系は異なりますが、どちらも低料金で利用することができます。必要なときすぐにサイクルポートを見つけることができるように、スマホには両方のアプリをダウンロードしておくのがお勧めです。
サービス対象の自転車は電動アシスト付き
たまに利用するときだけでなく、毎日最寄りの駅からちょっと離れた会社や学校までアクセスすると考えても、料金はかなりお得。
ドコモ・バイクシェアでは通勤・通学向けに月額会員の料金体系を設定していますが1か月2200円で 何度利用しても最初の30分は無料になります。月額会員で利用しても1年で2万6400円です。
そして、利用できる自転車については、どちらのサービスも電動アシスト付きのものを使用しています。
シェア自転車は、電動アシスト付きのものが利用できる(画像:写真AC)
「3密」を避けることや健康を考えて自転車での通勤・通学を考えたとしましょう。両社のサービスで提供している水準の電動アシスト付き自転車を購入するのは、ちょっとした冒険です。
近年は値段も安くなっているとはいえ、10万円程度はします。そんな値段のものですから、個人で所有する場合に保管する際も気を遣います。
自宅や勤務先に屋根のついた自転車置き場があればよいのですが、そうでなければ購入をためらってしまいます。また、出かけた先で路上にちょっと止めておくというわけにもいかないでしょう。
ですので、サイクルポートが増えている現在、シェアサイクルはいきたいところまで片道だけ乗っていける便利な交通手段として価値を高めているといえます。
このように鉄道やバスとは違った形でいきたいところを移動できるシェアサイクルですが、まだ発展途上ゆえのデメリットもあります。
さらなる普及、課題は車両整備やポート確保
現在、最大のデメリットとなっているのが利用者の急激な増加です。
利用者が増えたために使用頻度の高いエリアでは、サイクルポートには自転車があるのに、全てがバッテリー切れだったり、ブレーキの故障やパンクなどで乗ることができないまま放置されていることもあります。
いざ自転車を借りようと思ってもバッテリーの充電が切れていたりパンクしていたりということも(画像:写真AC)
ただ、需要の増加に対して運営サイドも細かな対応を行うようになっているため、次第にこの問題は解決されつつあります。
よりデメリットになっていると感じられるのは、サイクルポートの所在地が偏っていることです。
各区役所と連携して事業を展開しているドコモ・バイクシェアの場合、それぞれの区役所ではサイクルポートの設置数を増やそうと努力をしています。
ただ、どこの区でも設置しやすい公共施設はほぼ利用しており、民間の施設の土地に設置してもらう働きかけを進めているところです。こうした事情のため、サイクルポートの設置場所に偏りがあることは否めません。
たとえば都心の中央区の場合、東日本橋駅(同区東日本橋3)周辺はサイクルポートがほとんどありません。
新宿区でも戸山周辺には巨大な空白地帯が存在しています。また、需要がありそうな高田馬場駅(同区高田馬場1)周辺には駅からちょっと離れたところにしかサイクルポートが設置されていません。
都電荒川線の面影橋駅(同区西早稲田3)付近には住宅地の奥まったところにひっそりとサイクルポートがあったりします。とにかく空いている土地があればということで、設置の努力が進んでいることは分かります。
都内の急坂、上ってみたら……
シェアサイクルの想定される需要の多い利用形態は、駅からちょっと離れたところに出かけるときの足ということが多いでしょう。にもかかわらず、駅前に必ずサイクルポートがある状況までは達していないのはとてももったいないことです。
今後の関係者のさらなる努力に期待したいところです。
もうひとつ、すでに利用したことのある人ならご存じだと思いますが、電動アシストへの過信は禁物です。
「電動」ではなく「電動アシスト」ですからあくまで、キツい坂道をこぐときにちょっとアシストしてくれる程度と捉えましょう。千代田区や中央区、江東区などの平地を移動するのでしたら問題ないと思いますが、坂道はやっぱりそれなりにキツいのです。
都内にはさまざまな急坂が(画像:写真AC)
例を挙げると高田馬場駅から茗荷谷駅(文京区小日向4)付近を経由して東へ本駒込駅(同区向丘2)方面へシェアサイクルで移動したときは、けっこうな運動量になりました。有楽町から皇居をぐるっとまわって半蔵門駅方面へ移動したときも、やはり坂道はキツかったです。
それでも電動アシストがあることで、通常の自転車に比べるとかなり楽ではあります。
こうして見ると、人気スポットでは借りにくいことや、それなりに体力は使うという点を考慮しても、自力で好きなところに移動できるメリットは大きいといえます。東京暮らしの新たな足としてシェアサイクルを日常に取り入れてみてほしいものです。