世代を超えた人気っぷり 東京・谷根千エリアが「単なる下町」にとどまらない理由

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世代を超えた人気っぷり  東京・谷根千エリアが「単なる下町」にとどまらない理由

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七海ユリコ

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東京の下町として人気の「谷根千エリア」。新しさと懐かしさが調和している同エリアの魅力について解説します。

谷中ぎんざ商店街が舞台のひとつ

 2021年4月から放送が始まったアニメ「ましろのおと」のテーマは、津軽三味線です。

 津軽三味線奏者の祖父を持つ主人公・澤村雪は、その優れた才能を引き継ぐ高校生。祖父の死をきっかけに演奏を止め青森から上京した雪は、周囲と関わりあいながら、再び自分の音を追求していきます。

 雪は東京の下町にある架空の場所「あやめ商店街」に下宿をしていますが、その商店街のモデルは台東区谷中にある谷中ぎんざ商店街(台東区谷中3)とされています。アニメの描写では、観光スポット「夕焼けだんだん」の風景が特にわかりやすく、気づいた人も多いと思われます。

谷中の「夕焼けだんだん」(画像:写真AC)



 その谷中ぎんざがある谷中と、根津・千駄木を含めた地域「谷根千」は、東京の中心部に今なお残る下町として、地元や観光客から親しまれている地域です。近年、レトロなスポットだけでなく、下町風情に調和した新しいお店もオープンし、新たに人を呼んでいます。

 この記事では、そんな谷根千エリアがどのようにして趣を残しつつ、新しさを取り入れた町になっているのか、まちづくりの観点もまじえて考察していきます。

「谷根千エリア」の特徴とは

 谷根千エリアとは台東区谷中と文京区根津・千駄木一帯を指し、都心にありながら下町風情や歴史、文化などのレトロな情緒が色濃く残る地域です。

「ましろのおと」のウェブサイト(画像:(C)羅川真里茂・講談社/ましろのおと製作委員会)

 谷中は東京の寺町であり、数多くの寺社と著名人の墓がある谷中霊園(谷中7)があります。また、地元の人から観光客まで、多くの人でにぎわう谷中ぎんざ商店街も有名です。

 谷中の西に位置する千駄木は、近現代の文人ゆかりの場所や大正時代の豪邸跡など、近代に活躍した人々の足跡を感じられる地域となっています。

 谷中と千駄木の南西部にある根津は、千本鳥居が有名な根津神社(文京区根津1)があり、木造の建物が多く残る落ち着きのある地区です。

カフェやスイーツショップも新規オープン

 谷中、根津、千駄木いずれも、幕末から昭和を中心にした歴史・文化的な要素が多く残っています。津軽三味線も明治時代からその歴史が始まったとされており、谷根千エリアは「ましろのおと」の舞台としてマッチしていると言えます。

文京区根津にある根津神社(画像:(C)Google)



 そんな谷根千エリアですが、昔のものだけではなく、それらと調和したカフェやスイーツショップ、雑貨店などの新しいお店も少しずつオープンしています。

 現在は名所・旧跡を訪れる以外にも、そういったお店を回ることも谷根千エリアの楽しみ方のひとつになっているようです。

 谷根千エリアは、どのようにして新旧のものが調和した魅力ある町並みになっているのでしょうか。

現在も下町の生活が息づく谷根千エリア

 谷根千エリアの昔ながらのお店は、今も地元の人に親しまれており、それが地域の魅力のひとつになっていると考えられます。

 最もわかりやすい例が、谷根千エリアで特に人気の観光スポット・谷中ぎんざ商店街です。谷中ぎんざ商店街は、下町の人情味が感じられる商店街で、食べ歩きが楽しめる場所として多くの観光客が訪れています。

 谷中ぎんざ商店街の特徴は、観光客だけでなく地元の人からも親しまれ利用されているところ。

台東区谷中にある谷中ぎんざ商店街(画像:(C)Google)

 谷中ぎんざ商店街を訪れると、肉屋さんやお総菜屋さんなどの昔ながらのお店もしっかり残っています。観光客として通りに入ると、地元の人同士のおしゃべりが聞こえてくるなど、下町らしい良さが感じられます。

 観光で訪れた人に対しても、気さくな距離感で接してくれるところに魅力を感じる人も多いようです。

 町並みの外観だけでなく、今も地元の人に愛され下町らしさが息づいている町だからこそ、外国人観光客など訪れる人を引きつける地域になっているのでしょう。

趣を生かしたリノベーションで新旧が融合

 また、この地域は古い建物をその良さを生かしてリノベーションした新しいお店や場所が多く、調和した町並みの一因になっていると考えられます。

 古い建物を活用した場所はいくつもあり、例えば根津にある串揚げ屋のはん亭(根津2)は、明治時代に建てられた木造3階建ての日本家屋を利用した店舗です。建物は登録有形文化財に指定されていますが、その建物で営業されています。

文京区根津にあるはん亭(画像:(C)Google)



 また、谷中にあるカヤバ珈琲(コーヒー、谷中6)は、大正時代に建てられた建物を利用しています。昭和初期からカヤバ珈琲として地域の憩いの場となっていましたが、平成に入り一度閉店。しかし、店を愛してきた地域内外の人々の思いから復刻を果たしました。

 ほかにも、一度解体が決まったもののリノベーションへかじを切った建物にHAGISO(谷中3)があります。昭和中期から木造アパートとして使用され、平成には東京芸術大学(上野公園)の学生がアトリエ兼シェアハウスとして使用してきたHAGISOは、現在はカフェも入る文化複合施設となっています。

 このように、人々の思いがまちづくりに反映され、歴史ある建物がいくつも現役で活用されています。谷根千のレトロかつ新しい雰囲気は、地域を愛する人々の思いが作り出していると言えます。

新たなトレンドの店が点在

 谷根千に人が集まるのは、下町らしさとリノベーションで新旧が融合した場所に加え、新しい流行を取り入れたお店や場所が点在することも要因と言えます。

 先に取り上げた食べ歩きで有名な谷中ぎんざ商店街では、観光で訪れる人を意識した「ここでしか味わえない」限定感のある今風の軽食やスイーツも豊富です。例えば、谷中に猫が多いことにちなんで猫をイメージしたドーナツや、和栗専門のスイーツなどが挙げられます。

谷中ぎんざ商店街にある猫をイメージしたドーナツを売るやなかしっぽや(画像:(C)Google)



 こうした観光地的な新しさ以外にも、小さな雑貨店やおしゃれなカフェなど、町歩きという現代的な新しい楽しみ方にぴったりのお店も多数あります。

 昔の町割りが残る谷根千は隠れ家的な店舗が多く、町を散策してすてきなお店を見つける、という楽しみ方も魅力のひとつ。日本の下町の中に溶け込むように洋菓子店や雑貨店があるのも、地域の趣深さを強調しています。

 歴史や文化が色濃く残る東京の下町・谷根千エリア。今も下町らしい暮らしが息づくことや、古いものを尊重し活用していること、そして町並みにマッチし現代のニーズに合った店があることで、新旧が調和した趣深い地域になっているのです。

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