エレベーター利用可否を○△×で表示、シンプルさに重きを置いたアプリ
ホームと地上間の距離が長く、出口も多岐にわたる駅が少なくない東京メトロ。ベビーカーユーザーにとって、乗り換えやホームと地上間をエレベーターのみで移動できるか否かは、乗り換え駅や目的地の選択にも関わってきます。
東京メトロの駅について、これらを簡単に調べられる「ベビーメトロ」というWebアプリがあるのをご存じでしょうか。エレベーターの有無だけでなく、移動がスムーズに行えるよう乗車位置目安や駅構内図も調べられるという、ベビーカーユーザー必見のアプリです。また、一般の人にとっても、知っておくと便利に使えます。
検索の仕方は至ってシンプル。アプリのダウンロードや会員登録は必要なく、スマートフォンから直接URLにアクセスするだけです。
使い方をみていきます。
トップページを開くと、駅名の検索画面が出てきます。複数の駅を同時に入力して検索することも可能です。また、路線から探すこともできます。
駅名を入力して検索すると、「地上・ホーム間」「のりかえ」「ホームベンチ」の3つの項目が出てきます。「地上・ホーム間」が○になっている場合、ホームから地上までエレベーターのみで移動できます。△は、エレベーターのみで移動できる場合とできない場合があり、その下にある「ホーム別情報」を見ると詳細がわかります。
×の場合は、エレベーターのみで移動することはできませんが、東京メトロによると「駅の係員に手伝いを依頼することが可能」とのことです。これについては後述します。
「のりかえ」は、○になっていれば、全ての路線とホームでエレベーターのみでの移動可能、△の場合はホーム別情報をみると、全ての組み合わせについて○×表示されています。×は不可ですが、この場合も係員へ援助依頼が可能です。
「ホームベンチ」は、ホーム内にベンチがあるかどうかがわかります。現在はほとんどのホームにベンチが設置されていますが、工事のため一時的にベンチを撤去していることがあり、その確認ができます。
×の場合はホームの「駅係員よびだしインターホン」で手伝い依頼が可能
前述のエレベーターでの移動が×になっている場合ですが、ホームに「駅係員よびだしインターホン」があるので、そこにある呼び出しボタンを押せば駅事務室の係員につながり、援助をお願いできます。
駅係員よびだしインターホンは、ホームにある集中案内看板(時刻表などのあるボード)または、その付近にポール型や壁付型で設置されています。ホームの長さや構造により異なりますが、最大4か所取り付けられています。「緊急にご用の方」と書かれていますが、ベビーカー移動の援助を依頼して問題ないそうです。
一般利用者にも役立つ、乗車位置案内と構内図の出口案内
2ページ目の駅名下に表示されている『乗車位置案内』『構内図』から、検索駅のこれらの情報が得られます。
『乗車位置案内』は、行き先による乗車位置の目安となります。ホームへの階段を降りたすぐのところによく貼られている、各駅の乗車位置案内一覧と同様のものです。エレベーターやエスカレーター、トイレの位置ほか、乗り換える路線や駅近辺の代表的な建物のある出口がどの車両から近いかがわかります。
『構内図』は、駅構内の見取り図が立体的に描かれていて、エレベーターだけで移動できる経路が赤いラインで記されています。構内図詳細の他、出口案内ものっていて便利です。『乗車位置案内』と『構内図』の出口案内は、一般利用者にとっても役立つ情報と言えます。
トップ画面に「履歴」の項目があり、過去に調べた駅が表示されます。現状、使用できる機能はここまでで、エレベーター探しの検索に何ページも進んで行く必要がなく、シンプルな構造です。
ベビーカーユーザーの社員発案で実現した「ベビーメトロ」
「ベビーメトロ」は、東京メトロが「メトロのたまご」と名付けている社内企画提案制度から生まれました。同制度は、社員発案による新規事業の立ち上げで、チャレンジ精神の育成と新たな企業価値を創造するための取り組みです。
発案者である経営企画本部ICT戦略部の横溝大樹さんと、新規事業企画担当の天野純一さんに話を聞きました。
横溝さん自身も、子供がまだ小さくベビーカーユーザー。「地下鉄構内でエレベーターが見つけづらい、多機能トイレや自動販売機の場所など、妊婦や小さな子供連れが知りたい情報をすぐに得られないといった経験をしたことで、提案するに至りました」と話します。
当初は、妊婦と小さな子供連れの母親に役立つ様々な情報提供ができるアプリを考えていたとのこと。しかしながら、情報を多数詰め込むことで逆にアプリが複雑化してしまい、分かり辛さに繋がってしまう恐れがありました。そのため、チームで幾度も検討を重ね、汎用性や重要度を鑑みてベビーカーユーザーのためのエレベーター移動に的を絞ったそうです。
東京メトロでは従前、公共交通機関であるため公益性を重んじ、「ベビーカーユーザー」のように利用者を限定した情報発信は行っていなかったそうです。しかし、「メトロのたまご」の導入によって、未知数なものや、企業価値を向上させるサービスへのチャレンジを奨励するとして実現しました。
同アプリは既に使用可能ですが、実用性を計るための実証実験段階にあります。当初、実証実験の期間は、2018年3月から7月まででしたが、一定の効果が認められたため、2019年7月末まで延長。同4月頃にバージョンアップ予定で、本格運用はそのユーザー評価をもって判断されるそうです。
天野さんによると、バージョンアップではこれまでに得られた結果をもとに修正を加え、さらに新たな機能も複雑にならない程度に加える予定とのこと。
一例を挙げると、エレベーターで地上に出た場合、そこが目的地に近い出口かどうかわかりづらいため、地図アプリと連動させてどの辺りに自分がいるかがわかるようなシステムを構築すること、多機能トイレの場所の簡単検索、エレベーター利用が「×」の場合、係員の呼び出しが可能であることの明記などを検討中だそうです。
天野さんは「今後も、必要な情報を皆さまのお手元までしっかりとお届けできるように工夫していきたいです」と抱負を語ります。「メトロのたまご」から産まれた“ベビー”の成長が期待されます。
●ベビーメトロ
URL:https://www.babymetro.jp
※掲載の情報は全て2019年1月時点のものです。