東急ハンズがたった1品を引っ提げて「テレビ通販」に参入する理由

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東急ハンズがたった1品を引っ提げて「テレビ通販」に参入する理由

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東京都心や郊外に大型店舗を構え、数多くの商品が並ぶ売り場が魅了の「東急ハンズ」。このたび、同社にとって初となるテレビ通販をスタートさせます。なぜ今? 狙いとは? 担当者に話を聞きました。

東京都心に大型店を構える小売大手

 新宿・渋谷・池袋の大型店のほか、郊外のショッピングモールなど東京都内だけで10店舗を構えるご存じ「東急ハンズ」(新宿区新宿)が、2021年2月からテレビショッピングをスタートさせると発表しました。

 ジュピターショップチャンネル(中央区新川)の放送内に「開店!東急ハンズショップチャンネル店」と題した番組を設け、両社で厳選したイチ押し商品を紹介するとのこと。

 ハンズにとって定期的・継続的なテレビ通販への参入は今回が初めて。なぜ今? どんな商品を販売するの? 両社の担当者に話を聞きました。

実店舗ならではの楽しみに注力した結果

「『アレがあるから行く』にとどまらず、『何だかわからないものに出会えるかもしれないから行く』……発見買いのヨロコビがあふれている」

 この紹介文が示す通り東急ハンズは、街で知られたヒットアイテムから初めて見る変わりダネまで、実にさまざまな商品(モノ)がそろう売り場が魅力のひとつ。

 さらに、体験型のワークショップ(コト)や販売担当者とのコミュニケーション(ヒト)といった楽しみ方の提案にも力を入れてきた小売店です。

広い売り場と豊富な品ぞろえ、物珍しい商品展開が魅力の東急ハンズが、2021年2月からテレビショッピングを開始する。その狙いとは?(画像:東急ハンズ)



 とりわけ随一の売り場面積を誇る新宿店では、専門知識を培った社員が「店主」を名乗って独自の売り場を設ける企画「Hi! Tenshu(店主)」を2018年3月からスタート。同店内に19の「商店」を設け、現在20人の「店主」がイチ押し商品の紹介や実演販売を行ってきました。

コロナ禍、来店者数の減少で苦戦

 そんな実店舗ならではの魅力に注力してきた東急ハンズもまた、今回の新型コロナウイルス禍で少なからず影響を受けています。

 同社の広報担当者によると、

「(2020年5月の緊急事態宣言の解除以降)郊外のショッピングセンター内の店舗などでは比較的客足が戻りつつありました。しかし広域から集客する首都圏の大型店はそれより遅く、(2020年の)年末頃になってようやくかなり戻ってきたという手応えがあったところでした」。

 しかし、ここに来て2021年1月8日(金)から再び緊急事態宣言が東京など1都3県に発令され「再び難しい状況になっているのは確かです」。

選び抜かれた「1商品」とは?

 一方、ショップチャンネルとの本格的な商談が始まったのは2020年7月とのこと。

 新たな取引先の発掘に積極的なショップチャンネルと、これまでとは異なる発信の手法を模索する東急ハンズの狙いが合致し、両社協同での番組制作をスタートさせました。

2020年9月、テレビ通販で紹介する商品をプレゼンする東急ハンズ担当者と、ショップチャンネル担当者(画像:東急ハンズ、ジュピターショップチャンネル)



 2月19日(金)19時からの初回放送で紹介するのは、厳選されたたった1商品だけ。

 有田焼の技術を取り入れて作られたセラミック製のドリンクフィルター「セラフィルター」。ハンズのオンライン通販ページでは税込み4950円の商品です。

 ペーパーフィルター・布フィルターの代わりに使い、コーヒーや緑茶、水、焼酎などを注ぐだけで「飲み物の味がまろやかになり、おいしくなる」のが売りといい、新宿店「Hi! Tenshu」企画のメンバー向井崇広さん(同店4階「一杯の珈琲商店」店主)イチ押しの商品なのだとか。

「売り上げを立てる」以上の目的とは

 ショップチャンネルの広報担当によると、東急ハンズの番組に出演して商品を紹介するのは、必ず新宿店の「店主」たち自身。

 東急ハンズ店頭での客との会話や経験を生かして、なぜその商品をお薦めするのか、特長や使い方を専門販売員ならではの知識で案内するとのこと。

「東急ハンズは商品に対する深い知識と情熱を持っていますから、それを番組で伝えることを重視しています。販売する商品も、まずは東急ハンズ(の「Hi! Tenshu」企画内)から当社バイヤーに提案プレゼンしていただいたうえで、候補商品を煮詰めて選定しています」

東急ハンズ新宿店があるタイムズスクエアビル。売り場は2~8階(画像:(C)Google)



 放送ペースは月に1回。一度にいくつもの商品を紹介するのではなく、今回まずは1商品。番組枠の1時間を掛けて、じっくり丁寧にその良さを紹介します。

 つまり東急ハンズにとって、テレビ通販で大きな売り上げを立てることそのもの(だけ)が目的ではないようです。

「新宿店の『Hi! Tenshu』の売り場を、ひいては実店舗で人と人とがコミュニケーションを取る楽しさをテレビの中で再現して、まずは東急ハンズの魅力を知っていただきたいと考えています。それをひとつのきっかけに、いずれコロナの状況が落ち着いたときには、ぜひ売り場に足を運んでいただけたら」(東急ハンズ広報担当者)

 数多くの商品が並ぶ店舗売り場を飛び出して、たったひとつのアイテムを紹介する、東急ハンズ初のテレビ通販。

 両社の目利き力とプレゼン力、そして東急ハンズの“商品愛”は、果たして消費者にどのように評価されるのでしょうか。

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