あなたはどちら派? 「東京タワー」「スカイツリー」の人気、30代前後で入れ替わるワケ
あなたは、東京タワー派ですか? 東京スカイツリー派ですか? 甲乙なんて付けられない魅力を持つ東京の2大シンボルですが、どちらを選ぶかで年代が分かってしまうようなのです。あなたはどちらが好きですか? 東京を代表する2大シンボル、東京タワー(港区芝公園)と東京スカイツリー(墨田区押上)。友人同士の雑談で「どちらの方が好きか?」という話題になり盛り上がることもあるのではないでしょうか。 30代の筆者の周りには、比較的「東京タワー派」が多いという印象です。理由を尋ねると、 「生まれたときからずっとあるし、思い出も多いから」 「高さではスカイツリーに抜かされたけど、存在感は今も勝っている」 「スカイツリーにはない哀愁や情緒を感じる」 といった声が聞かれます。 東京タワー(左)と東京スカイツリー。あなたはどちらの方が好き?(画像:写真AC) この意見は果たして一般的なものなのか。SNS上の投稿を探ったところ、興味深い傾向が見られました。 ツイッターで、東京タワーとスカイツリーという2ワードで検索すると、ヒットするつぶやきのほとんどが「東京タワー派」のものなのです。 「私は断然、スカイツリーより東京タワーです」 「誰が何と言おうと東京タワー」 「やっぱり東京タワーの方が好きだな」 「東京タワーは、いつまででも眺めていられる」…… それぞれの名称を単体で検索すると、どちらもユーザーたちの楽しげなエピソードや撮影写真がヒットしますが、2ワードともを含むつぶやき――言い換えると“両者を比較する”投稿に関しては、上記の通り「断然、東京タワー」を主張する内容がほとんどを占めていました。 ツイッターとインスタで異なる傾向ツイッターとインスタで異なる傾向 一方、若年女性ユーザーが多いとされるインスタグラムはどうでしょうか。 両者に関する投稿数を比較すると、「#スカイツリー」というハッシュタグを付けたものは約147万件、さらに「#東京スカイツリー」は約58.9万件で、計205.9万件に上ります。 インスタグラムの「#スカイツリー」というハッシュタグが付いた投稿の一覧画面のスクリーンショット(画像:ULM編集部) 対して「#東京タワー」というタグ付きの投稿は、約133万件。タワーの絵文字も付いたタグは7.2万件で、計140.2万件。インスタグラムにおいては、スカイツリーに関する投稿の方が東京タワーより1.5倍近くも多いのです。 5200人以上を対象にした調査の結果は 東京タワーとスカイツリー、実際どちらの方が人気なのか? その疑問に答えを探していると、各世代を対象とした大規模アンケートの結果を発見しました。 LINE(新宿区四谷)が運営するリサーチプラットフォーム「LINEリサーチ」が2020年12月に発表したデータで、全国の15~59歳の男女5252人を対象に「あなたは、ずばり東京タワー派? それとも東京スカイツリー派?」と尋ねたものです。 全体の結果は「東京タワー派」が36%、「スカイツリー派」が35%と、なんとほぼ同数。人気が大きく二分されていることが分かりました。東京タワー派が多いのでは、と思っていた人にとっては、予想外の結果なのではないでしょうか。 さらに注目すべきは、性年代別の結果です。 10~20代、40~50代で真逆の結果に10~20代、40~50代で真逆の結果に まず10代は、東京タワー派と答えたのが男性で17%、女性で18%と少数派。対してスカイツリー派はそれぞれ62%、60%と圧倒的多数を占めました。 20代では、10代ほどの開きは見られないものの、やはりスカイツリーが多数派。30代になると、東京タワー派が男性38%、女性34%、スカイツリー派が男性37%、女性32%と、わずかながら東京タワーがスカイツリーを上回ります。 2020年11月、15~59歳の男女5252人を対象に「あなたは、ずばり東京タワー派? それとも東京スカイツリー派?」と尋ねたアンケート調査の結果(画像:LINEリサーチの発表資料を基にULM編集部で作成) 40代、50代では、代わって東京タワーが多数派に。ただし、10代で見られた差ほどの開きはなく、スカイツリーも一定程度の支持を集めていることが分かります。 また男女とも、年代が上がるにつれて「分からない/選べない」と答える割合が多くなるといった傾向も見て取れました。 「Googleトレンド」の人気度は拮抗 この調査を踏まえると、ざっくりと20代以下はスカイツリー派が多く、40代以上は東京タワー派が多いということになります。30代は、どちらの支持層をも擁する中間的な世代でしょう。 青い線がスカイツリー、赤い線が東京タワー。過去5年間の「人気度」(画像:Googleトレンド) ちなみにキーワードの人気度を調べられる「Googleトレンド」で過去5年間の人気度の動向を調べると、2016~2019年まではスカイツリーの方が上位。一方2020年春以降はほぼ同程度で推移しています。 まさに世論を二分する東京タワーとスカイツリーの人気。30代の前後で支持が入れ替わる分水嶺は、どういった理由によるものなのでしょうか。 自身の青春や思い出と重なるシンボル自身の青春や思い出と重なるシンボル 2012年5月に開業したスカイツリーは、2021年に9周年を迎えました。たとえば当時10歳だった子どもにとって、テレビや新聞で伝えられたニュースは鮮烈な記憶として残っていることでしょう。 現在の10代、20代の若者にとってスカイツリーに愛着がある理由はこうした時系列からも想像することができます。 また現在30代前半の世代にとっては、スカイツリーの建設や開業は高校生や大学生だった頃の思い出。開業とともに友人や恋人と展望台に上った人も少なくないのではないでしょうか。 2008(平成20)年の着工から開業までの4年間が、この世代の青春の時期とちょうど重なっているのです。 展望台に上ったり、遠くから眺めたり。さまざまな思い出がつまっているからこその都市のシンボル(画像:写真AC) 一方、30代後半から50代の大人世代にとって、1957(昭和32)年開業の東京タワーは文字通り、生まれたときからあり続けてきた東京のシンボル。「哀愁や情緒を感じさせる」といったう印象も、自身が生まれた昭和の時代の香りを色濃く残す建造物ゆえと言えそうです。 2019年4月、フランス・パリのノートルダム大聖堂が大規模火災によって焼失したとのニュースが流れたとき、「もし東京から東京タワーが消えてしまったら」と想像してパリの人々の心中をおもんぱかった日本人も多かったのではないでしょうか。 東京タワーもスカイツリーも、見上げる人それぞれの半生を重ね合わせ、映し出す鏡のような存在です。数十年後の大人たちにとっては、スカイツリーもまた今の東京タワーと同じように、歴史と哀愁と情緒を感じさせる建造物へと変化しているのかもしれません。
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