創業60年の老舗ラーメンチェーン「どさん子」がわざわざ「SNS映え」メニューにかじを切ったワケ

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創業60年の老舗ラーメンチェーン「どさん子」がわざわざ「SNS映え」メニューにかじを切ったワケ

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アーバンライフメトロ編集部

かつて全国に1000店舗以上を誇ったラーメンチェーン「どさん子」が、7色のチーズソースをトッピングした「ハッピーレインボーラーメン」を発売しました。質実剛健なイメージの老舗がなぜ、SNS映えメニューに乗り出したのか? そこには日本の昭和史をなぞる同社の葛藤と挑戦がありました。

「老舗」の葛藤と挑戦を物語る1杯

「どさん子」という名のラーメン店をご存じでしょうか。

 創業は1961(昭和36)年。札幌みそラーメンが看板メニューの、東京をはじめ全国に約120店舗を展開する老舗チェーンです。

 太麺にコクのあるみそスープ、ひき肉にきざみネギ、メンマ、それにチャーシューがのった見た目も、味も、老舗ならではの歴史を感じさせる“質実剛健”な1杯。近年、変わり種ばかりが目にとどまるラーメン業界において、昭和の香りを残す貴重な店として歴の長いファンを抱えています。

 そんなどさん子に2020年12月8日(火)、「ハッピーレインボーラーメン」なるメニューが登場しました。

 ピンク、オレンジ、イエロー、グリーン、スカイブルー、ブルー、パープルという7色は一見、InstagramなどのSNSで見掛けるパンケーキかソフトクリームのようですが、れっきとしたラーメンの具。

 その正体は色付けしたチーズフォンデュのソースで、それぞれの色のソースを細長く切ったチャーシューに絡め、7枚並べて配置することで虹を表現しているのだそう。

 麺を箸で持ち上げると7色のソースが絡んでこれまたインパクト大。シャキシャキ食感の野菜ととろり半熟味付け卵、食べ応えのあるチャーシューがいっそう食欲を加速させる味も自慢の1杯なのだとか。

 いわずもがな、これは流行の「SNS映え」を狙って作られたメニューですが、老舗の「どさん子」がなぜ今、“映え”メニューを投入したのでしょうか?

 発売までの道のりを訪ねると、そこには間もなく創業60年を迎える老舗ならではの葛藤や挑戦の足跡が垣間見えてきました。

ベースのみそラーメンは同店伝統の1杯

 同チェーンを運営するアスラポート(中央区日本橋蛎殻町)によると、「ハッピーレインボーラーメン」は同店の看板「味噌(みそ)カレーラーメン」をアレンジした1杯。

 派手な見た目のトッピングとは裏腹に“本体”である味噌カレーラーメンの歴史は古く、2021年に誕生50年を迎えるアニバーサリー・ラーメンです。

 同店伝統のその味にカラフルなだけではない濃厚な味わいのチーズが加わり、「ラーメン好き、みそ好き、カレー好き、チーズ好きの心を満たすぜいたくな1杯に仕上がっています」と同社。

 SNS映え分析を得意とするスナップレイス(品川区南品川)と共同で臨んだ今回の企画は、同店にとって社史上のターニングポイントといっても過言ではない1杯です。

60年代、1000店舗へ急成長 創業者の商才

「どさん子」は高度経済成長期の1961(昭和36)年、創業者の青池保氏が墨田区八広にギョーザ飯店「つたや」をオープンしたのが始まりです。

2020年12月8日発売、SNS映えをばっちり意識した「ハッピーレインボーラーメン」(画像:アスラポート、SNAPLACE)



 当初はギョーザとチャーハンをメインとした中華料理店でしたが、創業者がたまたま食べたみそベースの札幌ラーメンに魅了され、程なく同区両国に「札幌ラーメン どさん子」1号店をオープンさせました。

 東京にラーメン専門店はまだ少なく、「この味は受ける」との確信がありました。そしてこの勘は見事に的中します。

 当時まだ珍しかったフランチャイズ形式を採用したことで、開店の名乗りを上げる希望者が相次ぎ、同店は東京だけでなく全国各地で着々と店舗数を増やしていきました。

 創業から10年後の1971年には出店数が500店舗を突破。さらに1977年には加盟店1000店舗を上回る超巨大チェーンへと急成長を遂げていきます。

苦境に直面、ブランドの再構築を模索

 ただ、時代とともにラーメン店の数は増え、同種のチェーン店も次々現れたことなどから、急拡大を続けた“ひとり勝ち”状態には陰りが見え始めます。ファミレスやファストフード店の展開も同店にとって逆風となりました。

 また、フランチャイズ形式の黎明(れいめい)期に拡大したからこその課題にも直面します。

 現在のようにメニューやレシピ、サービスが全てパッケージ化され「どこでも同じ味を楽しめる」というシステムが確立されていなかったために、味付けや使用する麺は店によってまちまち。

 よく言えば地域の好みに合わせた店の個性が感じられる半面、悪く言えば「同じ味」を期待する来店客にとって「肩透かしにも思える」(同社担当者)状況でした。

 同時に、成長期を支えた各店の店長や客らの高齢化も進みます。跡継ぎがなく、のれんを下ろす店も徐々に現れ、店舗数はかつての数分の1程度まで落ち込みました。

 40代以上の古参ファンを多く擁する一方で、20~30代を中心とした新しい客層の取り込みを課題と捉えた同社は、2014年、若者をターゲットとしたブランドの再構築に乗り出します。

思いきり「振り切った」メニューの投入

 先述のスナップレイスと共同で企画開発を始めたのがちょうどこの時期です。

 単に新しさばかりを取り入れるのではなく「あらためて原点へ立ち返ろう」との思いから、看板のみそラーメンを前面に出すメニュー展開への見直し、みそ味の繊細な違いを楽しめるみそラーメンラインアップの充実、商品の見栄えを支えるどんぶりの刷新などを図り、若い世代へのリーチを模索してきました。

 ただし、今回のハッピーレインボーラーメンほど振り切った企画を実行したのは「今回が初めてです。私たちにとってもかなりのチャレンジとなりました。楽しんでいただけるといいのですが」と、同社広報担当の若林弘宣さん。

「どさん子」のグラウンドメニューのひとつ「味噌 赤練(あかねり)」(画像:アスラポート)



 SNS映えはどちらかといえば女性が、一方がっつりメニュー代表格のラーメンはどちらかといえば男性が好きというイメージがありますが、

「確かにハッピーレインボーラーメンはそれなりのボリュームがありますから、女性同士のグループやカップル同士で一緒に注文してシェアしていただいてもいいかもしれませんね。このメニューをきっかけに定番ラーメンやサイドメニューを食べていただく機会にもなればと考えております」

とのこと。

2021年は良い年に、との思いを込めて

 ちなみに、そもそもなぜ虹がモチーフなのかという疑問には、

「2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で多くの方が苦しみ、『どさん子』も飲食店として苦戦を強いられました。2021年こそはすてきな1年になるように、7色のチーズを明るい未来への懸け橋に……そんな願いを込めています」

との回答でした。

 1杯1280円(税込み)。直営の大手町店はじめ東京など計6店で展開するそうです。

※ ※ ※

 1960~70年代、日本の高度経済成長期に急成長・急拡大を遂げた老舗が、さまざまな困難をへながらも発表した今回の1杯。7色のカラフルなまろやかチーズからは、戦後日本のラーメン史・経済成長史の香りも立ち上がってきます。

「どさん子のラーメンを食べたことがない」という人も多いかもしれないSNS世代に、今回のレインボーラーメンの味は、果たしてどのように評価されるのでしょうか。

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