下町を駆け抜け、いざスカイツリーへ! 新橋発の路線バス「業10」系統で楽しむ1時間プチ旅行とは

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下町を駆け抜け、いざスカイツリーへ! 新橋発の路線バス「業10」系統で楽しむ1時間プチ旅行とは

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鳴海侑

まち探訪家

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新橋と東京スカイツリーを結ぶ都営バス「業10」系統。その魅力について、まち探訪家の鳴海侑さんが解説します。

新橋と東京スカイツリーを結ぶ系統

 2012年に開業した、世界で最も高い電波塔・東京スカイツリー(墨田区押上)にはいまも多くの人が訪れています。タワーの下には商業施設「東京ソラマチ」があり、2020年はさらに「東京ミズマチ」が隣接地に開業、東京スカイツリーと浅草が結ばれ回遊性が強化されました。

 東京スカイツリーへのアクセスは鉄道がメインですが、実は都心から路線バスでもアクセスできます。その路線バスが都営バス「業10」系統です。新橋と東京スカイツリーを結ぶ系統で毎時4本ほど走っています。

都営バス「業10」系統(画像:(C)Google)



 この「業10」系統は新橋から東京スカイツリーを結ぶという意外性もさることながら、ナゾがふたつあります。

 ひとつめのナゾは系統番号の「業」の字です。都営バスの系統は多くが「漢字1文字+数字2ケタ」で表記することを基本としており、漢字には何らかの意味があります。

 例えば「上」であれば上野エリア発着、「宿」であれば新宿エリア発着を指します(経由地の漢字の場合もあります)。また特殊な系統には学生バスを表す「学」や深夜バスを表す「深」といった漢字が割り当てられます。では今回紹介する「業10」系統の「業」は何を表すのでしょうか。

 実は「とうきょうスカイツリー」駅の改称前の駅名、「業平橋」駅を表しています。もともと「業10」系統は日暮里から木場を結ぶ路線から始まっており、その後新橋に延長され、系統分割を経て業平橋~新橋の路線になったといういきさつがあります。そのため、業平橋駅前が始発地という扱いになり、現在も「業」という字を使っているようです。

バス停は銀座線3番出口近く

 もうひとつナゾは、新橋駅側の始発バス停「新橋」です。新橋駅近辺を発着、経由する他の都営バスの停留所名は「新橋駅前」や「新橋駅北口」というバス停名がついているのに対し、この系統だけがバス停の名前が「新橋」と駅の近くではない、まるで別の場所にあるようなバス停名になっているのです。

 歴史をひも解くと、どうやら駅北側の大通りを挟んで北側には「新橋」、南側には「新橋駅前」というバス停名を割り当てていたようです。以前は「新橋」バス停を発着、経由するバス停はいくつもありましたが、現在では「業10」系統だけになっています。

「業10」系統に乗るためには、新橋駅銀座口から大きな通りを渡ってバス停へ向かいます。東京メトロ銀座線からであれば3番出口近くです。乗り場まで着いても行き先に気をつけてください。

都営バス「業10」の乗り場(画像:(C)Google)



 主にとうきょうスカイツリー駅行きと深川車庫前行のふたつの行き先があり、東京スカイツリーへ行くためにはとうきょうスカイツリー駅行きに乗ります。

銀座から晴海エリアへ

 新橋バス停を発車したバスは外堀通りを北上し、東京高速道路をくぐると銀座エリアに入ります。間もなく東急プラザ銀座が左手に見えると、数寄屋橋交差点で右折します。数寄屋橋交差点を昼間に右折可能なのは路線バスのみで、南側からの右折はこの「業10」系統のみ許可されています。

 数寄屋橋交差点からは晴海通りを南東に向かいます。銀座の東西軸とも言える道路で、銀座の中心である「銀座4丁目」交差点を通りすぎ、銀座三越の前にあるバス停に停車します。

数寄屋橋交差点から晴海方面を望む(画像:(C)Google)

 この銀座4丁目バス停は勝どきや晴海エリアへ向かうバスが通ることからバス待ちの人が多くいます。銀座へのアクセスは鉄道のイメージが強いですが、バスでアクセスする人も少なくありません。

 銀座4丁目バス停を出発すると東銀座で歌舞伎座を左に、築地場外市場を右手に見ながら南東に進み、勝どき橋を渡ります。国の重要文化財でもある可動橋で、1960年代までは船の通行のために中央部を実際に跳ね上げていた橋です。

 勝どき橋を過ぎ、勝どき駅前で左折して晴海通りを外れます。そして間もなく右折し、月島駅近くの住宅街の中を走り、再び晴海通りに戻ります。

 今度は豊洲方向へ向かい、豊洲へ渡る春海橋からは車窓左前に東京スカイツリーが見えます。少し東京スカイツリーが遠くに見えるため、これからバスがあの場所まで向かうことが不思議に思えるかもしれません。

大小のビルが立ち並ぶ「三つ目通り」

 豊洲エリアの新しいまち並みを見ると今度は北に向きを変え、東京スカイツリー近くまでは深川、本所と下町を南北に貫く三つ目通りを進みます。

三つ目通りの様子(画像:(C)Google)



 通りの名前の由来は首都高速7号小松川線の下を流れる竪(たて)川にかかる橋「三之橋」で、隅田川から「三つめの橋」の通りということで三つ目通りと名付けられました。

 竪川には一之橋から六之橋までかかっており、うち四つの橋がいまも江東区・墨田区を南北に貫く大きな通りの橋になっています。下町は運河が多く、「業10」系統は三之橋までに橋を何本も渡ります。

 車窓にはコンクリート造りの中小のビルと住宅、時折マンションが入り交じります。下町というと、木造の家や人と人が行き交う義理と人情のまちというイメージが強いと思いますが、実際は深川や本所は小さいビルのような建物が多く、碁盤の目状に道路が張り巡らされ、車やバスが行き交う都市中心と郊外の間らしい風景が広がります。

 商業施設も商店街だけではなく、大規模商業施設もありあす。「木場6丁目ギャザリア前」バス停では最寄りの大型商業施設「深川ギャザリア」に用向きのある多くの人が乗り降りします。下町のリアルな人の動きを見られるという意味でも「業10」系統は面白い路線です。

浅草通りに入るとラストスパート

 深川ギャザリア以外に三つ目通り沿いにある施設としては「東京都現代美術館」が挙げられるでしょう。美術館としては非常に大きくユニークな展示が多い美術館ではあるのですが、駅から遠く、行くのには思い切りが必要な美術館です。

 しかし「業10」系統であれば美術館のすぐ近くまで行くことができ、ぜひ立ち寄っておきたいスポットです。

 菊川駅前では都営新宿線に乗り換える人が多く下車し、墨田区内は駅への接続がないことから、大きな人の乗り降りはあまりなく北上していきます。それでも各停留所で降りる人がいるところに下町エリアでバスが重宝されていることが感じられます。

 都営浅草線の本所吾妻橋上にある吾妻橋交番交差点を右折し、浅草通りに入るといよいよ「業10」系統のプチトリップもラストスパート。系統名の由来ともなった業平橋を渡ると東京スカイツリーの麓に到着します。

業平橋から見える東京スカイツリー(画像:(C)Google)

 東京スカイツリーは東武鉄道の社有地に建てられた電波塔で、周囲には東武鉄道所有ビルや施設が多くあります。浅草通りから左折し、最後にバスが渡る橋は「東武橋」。橋を渡ると間もなく終点のとうきょうスカイツリー駅です。

「業10」系統で新橋から終点とうきょうスカイツリー駅まで1時間ほど。車窓を楽しみながら歴史やいまを感じることができる、観光ルートにも組み込めそうなこのバス路線。ぜひプチトリップに利用してみてください。

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