「SNS映え」は完全終了? インスタグラムに「文字投稿」が増えた必然的理由

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「SNS映え」は完全終了? インスタグラムに「文字投稿」が増えた必然的理由

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伊藤美咲

フリーランスライター

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「インスタ映え」が流行語大賞に選ばれたのは、わずか3年前の2017年。その流行には、すでに変化の兆しが見えているようです。「映え写真」に替わって今人気が高まっている投稿とは? フリーランスライターの伊藤美咲さんが解説します。

「『映え』こそ正義」は、もう古い?

 10~20代の若い女性を中心に人気のInstagram(インスタ)といえば、「写真映えが命のSNS」という印象を持っている人も多いのではないでしょうか?

“カワイイ”スイーツや自撮り写真であふれていたインスタのタイムライン。今、その流れに変化が起きているという(画像:写真AC)



 渋谷で見つけたカラフルなスイーツ、キラッキラのアイメイク、湾岸エリアのおしゃれスポット、原宿や表参道で話題のカフェやレストラン……。

 確かにインスタのタイムライン上には、こうした“カワイイ”写真があふれていました。ほんの少し前までは。

 そう、最近では、こうした「映え」を重視した写真が以前より少なくなってきているのです。なぜだかご存じでしょうか?

急増中の「文字入れ画像」投稿とは?

 もちろん、おしゃれな写真を撮ってアップしたいユーザーは今も多く存在します。しかし2、3年前までのような、カラフルでキラキラないかにも「映え」や「盛り」を追求した写真ではなく、シンプルで洗練された雰囲気の写真がより好まれているのが現状です。

 こうした変化とその理由をより端的に表しているのが、最近急増している「写真に文字入れをした投稿」です。

 ファッションやコスメのアイテム紹介から日常生活の節約術、恋愛ノウハウなど、ジャンルを問わずインスタのあらゆる投稿で今、この「文字入れ画像」を見つけることができます。

 文字情報は投稿者本人が書き込んだもの。書かれている内容はというと、たとえばファッションやコスメなら、どこのブランドのアイテムなのかといった基本情報はもちろん、使い方やポイント、具体的な使用感や感想まで多岐にわたります。

 さらには、写真を使わず文字と背景色だけで画像を作成した投稿も、今や珍しくありません。

「映える」や「盛る」への食傷

 なぜこのようにインスタの投稿内容は変化したのか。ひとつにはやはり「盛る」ことに必死になった結果の「インスタ疲れ」があると見られます。

 人にうらやましがられるような、「いいね」をたくさんもらえるようなキラキラした日常を演出して切り取ることにユーザーたちが違和感を覚え始め、だんだんに疲れてしまったのです。

 以前はどこへ出掛けるかを決めるのもインスタ映えを基準にしたり、さらには映えるスイーツの写真を撮ったら食べずに廃棄したりといったユーザーの行動が社会問題として取り上げられたこともありました。

 しかし、こうした過剰な振る舞いには永続性がありません。また投稿を見る側のユーザーにとっても、やや食傷気味だったというのが正直なところでしょう。

 結果やってきた「インスタ疲れ」によって、キラキラした非日常的な投稿よりも、リアルで、見る側にとってもまねしやすい投稿が好まれるようになっていったのです。

本当の日常は「キラキラ」ばかりではない。インスタ疲れを感じ始めたユーザーも少なからずいる(画像:写真AC)



「まねをしやすい」というのは、インスタだけでなくSNS上において非常に重要なキーワードであると筆者は考えます。そこには「わかりやすい」つまり「共感しやすい」という意味もまた含まれているからです。

 そして、投稿をよりわかりやすいものにするのが前述の「文字入れ加工」なのでしょう。

 今や誰もが情報発信者となって、インフルエンサーになれる時代。一般人だからこそ等身大のリアルなまねしやすい投稿ができ、見る側は「自分にもできるかも」と親近感が湧くので引き付けられるのです。

 実際インスタで人気の投稿は、気軽に購入できるプチプラアイテムを多用したファッションやメイクの紹介。それから、すぐに生活に取り入れられる節約術など。どこまでも身近で、多くのユーザーにとって共感を覚えやすい、身の丈に合った投稿です。

なぜわざわざ画像に文字を入れるのか

 ところで、インスタでは投稿写真とは別に文章を入れることもできるSNS。それなのになぜ、画像に文字を書き込んだ投稿をするパターンが多いのでしょうか?

 これは、やはりインスタが写真をメインにしたプラットフォームだからだと考えられます。

Instagramで「#秋コーデ」というハッシュタグが付けられた投稿一覧のスクリーンショット。「映える」写真より、コーディネート術を解説する投稿が目立つ(画像:ULM編集部)



 使ったことがある人ならご存じでしょうが、インスタに投稿する場合、最初に踏む手順は、スマホ内のギャラリーから写真を選択するか、その場で写真や動画を撮影すること。そもそも画像投稿ありきの仕様なのです。

 Twitterと違って拡散機能がないインスタで新規のフォロワーを獲得するためには、おすすめ欄やハッシュタグ経由で閲覧されることが重要視されます。

 これもユーザーならご存じの通り、インスタでは

1.まず1枚めの画像を見る
2.気になれば2枚め以降の画像を見る
3.その後にキャンプションを読む

といった順で見る場合がほとんど。いくらキャプションに有益なことを書いていても、1枚めの写真が見られなければ意味がありません。

 ウェブメディアなどの記事も途中で離脱されてしまう(読者が読むのをやめてしまう)ことがあるように、インスタでも、よほど興味のある投稿でない限りはキャプションまでは読まれないということが間々あります。

 そのため画像に文字入れをし、まずは閲覧者を引き付けることが重要になっているのです。

ニーズは「映え」より「有益情報」

 今、若い世代がスマホを使って何かを調べる際、検索サイトではなく「SNS検索」を使うことが非常に多くなっています。実際に20代前半の筆者も、コスメの口コミやカフェの情報など、あらゆる場面でSNS検索を活用します。

 ですから、自分自身が何かを投稿するときにも、友人や既存フォロワーだけでなく不特定多数のユーザーの目に留まる可能性を十分意識するものです。

 先ほど「誰もが発信者になれる時代」と述べましたが、フォロワーのたくさんいるインフルエンサーになることや、SNSを仕事につなげることは、決して簡単ではありません。

 見ず知らずのユーザーが「おいしかった!」とご飯の写真を載せていても、そのアカウントをフォローしようとはなかなか思いませんよね。「発信者になれる」ことと「影響力を持つ」ことは、全く別物なのです。

 しかし、もしご飯の味やお店の特徴など、見る側を引き付ける情報が詳しく書いてあったら「自分も行ってみようかな」と思うかもしれません。「このアカウントを見ればグルメ情報を知れる」ということが、すなわち「有益情報」となるわけです。

 情報があるところに人は集まるので、有益情報を発信することが良しとされる最近のインスタの評価軸は、なるほどうなずけるもの。

 SNSでは常に新しいトレンドが生まれ、やがて廃れゆくというサイクルがありますが、「有益性が求められる」ことそれ自体は、ある程度の普遍性をもって今後も継続していくのではないでしょうか。

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