外出自粛がつらい中年男性がついに手を出した「女性向け散歩本」の世界とは

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外出自粛がつらい中年男性がついに手を出した「女性向け散歩本」の世界とは

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下関マグロ

サンポマスター、食べ歩き評論家

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新型コロナウイルスの影響で世間は外出自粛。時間を持て余したサンポマスターの下関マグロさんは、「女性が書いた散歩本」を手に取って見ました。ページを通して感じた、男性と女性の散歩の違いとは?

「散歩歴」20年以上、知らなかった世界

 筆者(下関マグロ。サンポマスター)が散歩に関する原稿を書き始めてから数年が経過したころ、散歩本に関する連載をウェブサイトでやらせていただくことになりました。

 ちょうどテレビ朝日系で地井武男さんが『ちい散歩』という番組をやってらっしゃって、人気になっていた時期です。番組の関連本が発売されていて、散歩をしているとその本を持って歩いている中高年の方々をよく見かけていました。

 連載の内容は、毎回1冊の散歩に関する本をピックアップし、そこで紹介されているコースを実際歩いてみて、リポートするというようなものでした。

 当然のことながら、それまでも散歩に関する本はかなり読んではいました。

 人気エリアの散歩コースやスポットを紹介したムック本、古地図を参考にしながら現在の街を歩くといった地図本、かつて川があって今は地下水路になっているコースを歩くといった本を、購入したり、図書館で借りて読んだりしていました。

 しかし、改めて散歩本のラインアップを眺めてみると、自分の読んでいないジャンルがあることに気が付きました。それが「女性の書いている散歩本」です。たぶん、女性の書いている本は女性向けなんだと勝手に思い込んでいたので、敬遠していたのでしょう。

お気に入りの伊藤まさこさんの散歩本を持ち、たたずむ(画像:下関マグロ)



 しかしこれがいざ読んでみると、東京の散歩歴が20年以上になる筆者も知らないことがたくさん書かれていて、驚かされました。それこそ、散歩ライフは奥が深いなと改めて思った次第です。

女性にならって、自分写真をパチリ

 まず、タイトルで引かれたのが、伊藤まさこさんの『東京てくてくすたこら散歩』(文芸春秋)でした。なんとも軽やかでお気楽に散歩に出掛けられそうだということで手に取ってみました。

 この本を読むまで、著者の伊藤まさこさんのことは存じ上げなかったのですが、彼女なりの目線で町を歩いているのが好感が持てます。写真が満載で読みやすい文章でつづられているのもいいですね。

伊藤まさこ『東京てくてくすたこら散歩』(画像:文芸春秋)



 面白いのは、行ったことのある町でも筆者が見落としていた雑貨屋さんや駄菓子屋さんなどがたくさん紹介されていること。特に文京区本郷にある東京大学のキャンパス内を一般の人も散歩できるのはこの本で知りました。

 学食も一般の人も利用できるとのことで、実際行ってみると独特の雰囲気やここにしかないメニューがあったりで、その後何度も足を運びました。

 また、1914(大正3)年創業の文京区根津の小石川金太郎あめでお土産を買って帰ったりして、これまでに経験したことのない散歩を経験しました。

 それから、小さな娘さんとふたりで散歩するというのも、なるほどそうやって散歩されている方もいるんだなとこれまた新たな目線となりました。

 男性の場合、何か特別な理由でもない限り連れ立って散歩をすることはあまりしませんから。ふたり、3人寄ればその分いろいろ気づくこともある。これはある種、女性的な散歩の楽しみでもあるのでしょう。

 写真が満載と書きましたが、著者ご本人が散歩している様子を写した写真もたくさんあります。これまで筆者は散歩には必ずデジカメを持参していましたが、自分を撮影することはありませんでした。

 そこで、同作で紹介されている同じ場所で、同じようなポーズで自分の写真を撮ってみました。今なら自撮りなんでしょうけれど、これはこれでなにか新しい世界を見たような気がしました。

プードルの形のケーキがかわいい

 この本を読んだことで、もっと女性の著者のものを読んでみようと思い、次にピックアップしたのが、杉浦さやかさんの『東京ホリデイ――散歩で見つけたお気に入り』(祥伝社黄金文庫)。

 杉浦さんのイラストとともにいろいろな町のお散歩エリアやスポットが紹介されています。読んでいるだけで、なんだか行った気分になれる楽しい散歩本です。

 特に女性ならではと思えるのが、やはりスイーツとお土産ですね。

 残念ながら閉店してしまいましたが、千代田区神田神保町の「柏水堂」という老舗の喫茶店。その存在は知っていましたが、入ってみようと思ったのはこの本がきっかけでした。

 プードルの形をしたケーキがあって、いただいたことをよく覚えています。筆者はおっさんだけど、本で紹介されているようにかわいそうで食べられない、なんて感じたことを思い出します。

杉浦さやかさん『東京ホリデイ――散歩で見つけたお気に入り』(画像:祥伝社黄金文庫)



 ああ、こういうお店があるのかと実際に行ってみるのも楽しいし、ネットで検索しながら他にこんなメニューがあるのかとチェックするのも楽しいものです。

 杉浦さんも伊藤さん同様に散歩本を何冊か書いていらっしゃって、男性である筆者でもどれも楽しく読めました。

 以上の2冊は、けっこう前のものなので、掲載されているお店の中には今はないものも多くあるのですが、それでも読み物として面白く仕上がっているので、家に居ながらにして散歩を夢想するにはいい本だと思います。

もうひとつ未知のジャンル、犬の散歩

 小説家、小川洋子さんのエッセー『とにかく散歩いたしましょう』(毎日新聞社)も散歩の楽しさを教えてくれる1冊です。女性が書いた散歩本を読んでいなかったと書きましたが、もうひとつ読んでいないジャンルがありました。それは、犬との散歩本です。

 住宅街を歩くと、犬の散歩させている人とずいぶん出会います。新型コロナウイルスの影響で人通りが減っても、犬の散歩の方はいらっしゃいますね。やはり犬はお散歩させないといけないのでしょう。

小川洋子『とにかく散歩いたしましょう』(画像:毎日新聞社)



 筆者は犬を飼っていないので、犬の散歩をすることはないのですが、そんな人でも楽しく読めるのがこの本です。

 散歩の実用本というよりは、エッセーとしてめちゃくちゃ面白い。仕事をしたり、家事をしたりしながらも小さな不満がたまっていく著者が、犬の散歩によって癒やされていく様子がとても楽しいですね。

 これは、家にいながらにして読む散歩本としては最適ではないかと思われます。読み進むうちに犬だけではなく、散歩によって人間も癒やされているのがよく分かります。

※ ※ ※

 たぶん、男性のなかには筆者のように女性の書く散歩本のおもしろさに気が付いている方も多いのではないかと思います。いつもとは違った目線で散歩ができるので、最近では積極的に女性の書いた散歩本を読んでいます。

 男性の皆さん、いかがでしょう。この際、お家で読んでみるのはいかがでしょうか。

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