休校延長か再開か 新型コロナで都内公立小中学校の足並みが全くそろわないワケ

新型コロナウイルスの感染拡大のなか、都内の公立小中学校の対応にばらつきがでています。その理由について、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。


都立高校はGW臨時休校なのに

 東京都内における新型コロナウイルスの感染者数は3月中旬以降、増加の一途をたどっています。

 新年度が始まり本格的な学校再開が目前に迫っていた4月1日(水)、都立高校は簡略的な始業式と入学式を実施後、5月のゴールデンウイーク明けまで臨時休校の決断を下しました。

 一方、公立小中学校では各校の足並みが乱れる状況となっています(4月4日時点)。なぜ東京都内では、自治体ごとに判断の違いが生じているのでしょうか。

自治体の判断に委ねられた判断

 政府の「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」が4月1日に行われ、会議終了後に副座長の尾身茂氏(地域医療機能推進機構理事長)は「現在の知見では子どもは地域において感染を拡大する役割をほとんど担っていない」との見解を述べました。

 子どもに関する新たなエビデンスが今後出てくれば対応を適宜変えていくとの方針ですが、今回の見解で、学校再開か休校延長かどうかの判断はより難しくなったと言えます。

 都内に住む保護者の不安は日増しに大きくなっているものの、これらの判断は、自治体の教育委員会に委ねられています。

休校で使われないランドセルのイメージ(画像:写真AC)



 多摩地域で最も人口の多い八王子市は、公立小中学校の入学式を20分間という短時間で行うことを決定。また学校が始まる4月の第2週は、指定された日時に各学年が登校し、滞在も2時間程度としています。

 また保護者が子どもを登校させたくない場合は「欠席扱い」にならないよう配慮し、4月13日(月)以降の予定については、状況を見て決定するとのことです。一方、文京区は始業式と入学式の実施後、5月1日(金)までの臨時休校を決定し、休校期間中は学年ごとに登校日を3回設けます。

 このように、同じ東京であっても自治体によって対応にばらつきがあるため、現場の混乱は想像に難くありません。

代用できない板書スタイルの授業

 なぜ、学校再開の判断は統一されなかったのでしょうか。

 その大きな理由は、日本の公教育が保護者世代からほぼ変わらずに「板書」スタイルを採用していることが挙げられます。板書とは、授業で黒板に書くことを意味します。

板書スタイルの授業のイメージ(画像:写真AC)



 現在では、算数の図形を学ぶときなどに「パワーポイント」を利用する授業もありますが、基本的には教師が教壇に立って教えています。これに代わるものがないため、休校措置が長引くと学習の遅れが取り返せず、挽回が不可能になるのです。

 それゆえ、現場は何とか学校を再開したいという思惑があり、休校延長の決定が遅れたり、4月中旬以降が未定だったりするのだと考えられます。

生じる教育格差

 また休校になることで、生徒間の学力格差が広がる恐れもあります。

自宅でゲームに興じる子どものイメージ(画像:写真AC)

 大手進学塾に通っている子どもは、授業の動画配信を利用して普段通りの学習時間を確保できます。保護者は通信教材やオンライン教材に申し込み、対策を講じることがきます。しかしこうした行動に出られるのは、経済的にある程度余裕がある家庭に限定されます。

 そのような機会のない子どもは学校に行かない分、勉強時間が激減する可能性があります。そのため、新型コロナウイルスによる休校期間が長引けば長引くほど、両者の学力差があり得ないほど広がってしまうのです。

急がれるオンライン授業の整備

 世界中では、多くの小中学校が臨時休校となっています。外出しなくても学校と同じような学習環境を提供すべく、インターネットを活用したオンライン授業の取り組みが行われています。

 総務省の「平成30年通信利用動向調査」によると、小中学生の保護者世代にあたる30歳から49歳までのインターネット利用状況は95%以上ですから、ICT教育を充実させるには問題ないように見えます。

 しかし、日本の公立学校はインターネットを介した学習サポートの整備が遅れているため、平時のように通学できない場合、そのしわ寄せが子ども自身に降りかかってしまうのです。

オンライン授業を受ける子どものイメージ(画像:写真AC)



 加えて在宅で授業を受けるには、画面の大きなタブレット型端末やパソコンが必要になりますが、パソコンを保有する世帯は全体の約74%、タブレット型端末にいたっては約40%と利用率が低くなっています。

 また、授業で与えられた課題を解くにはプリンターなどの印刷機も必須です。たとえオンライン授業の整備が進んでも、家庭によって周辺機器の充実に違いが出てしまうため、「公教育の平等」とは程遠くなってしまう恐れもあります。

絡み合うふたつの考え

 休校が長引くほど、教育現場に立つ教師たちは生徒間の学力格差が広がってしまうことを不安に感じていることでしょう。

不平等のイメージ(画像:写真AC)

 都内公立小中学校の対応のばらつきは、「子どもの安全は大切だが、教育機会を失う可能性がある」という学校側のジレンマと、専門家会議の「子どもは地域において感染を拡大する役割をほとんど担っていない」という見解が複雑に絡み合った結果と言えるのです。


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