東京都「自転車保険」義務化で注目 荒川区の取り組み「自転車免許制度」とは?

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東京都「自転車保険」義務化で注目 荒川区の取り組み「自転車免許制度」とは?

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小川裕夫

フリーランスライター

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自動車の交通事故件数が年々大きく減少しているのに比べて、自転車事故は「微減」状態。こうした状況を踏まえ東京都は、2020年4月1日から「自転車保険」への加入を義務づけます。事故件数減に向けた行政の取り組みについて、フリーランスライターの小川裕夫さんが解説します。

車の事故が減る一方、自転車事故は

 昨今、全国で発生する交通事故件数は年を追うごとに減少しています。

 警察庁の発表によると、2019年の交通事故発生件数は40万件を割りこみ約38万1000件。同様に、交通事故による死亡者数も減少しており、同年は統計開始以来最少となる3215人になりました。

東京は4月1日から「自転車保険」への加入が条例で義務づけられる(画像:写真AC)



 交通事故の件数・死者数が減少しているのは、安全運転意識が浸透していることに加え、自動車の安全機能が強化されたことなどが理由として挙げられます。

 その一方、近年は自転車による事故が目立つようになりました。そのため、地方自治体や所轄の警察は対策に追われています。

保険加入の義務化、ただし罰則はナシ

 自転車が起こす交通事故は、毎年10万件前後起きていました。ここ数年で特に急増したというわけではありません。

 しかし、自動車事故が減少トレンドにあることから、警察庁は自転車事故が軽視されていると考え、2015年に改正道路交通法を施行しました。同法により、悪質な自転車運転者への安全講習が義務づけられたのです。

 また、地方自治体では「自転車保険」の加入を義務づける動きが加速しています。そこには、自転車事故によって1億円近い高額賠償判決が相次いでいることが背景にあります。

駐輪場に並ぶ自転車の数々(画像:写真AC)

 2015年、兵庫県は自転車保険の加入を義務付ける条例を初めて制定しました。以降、神奈川県や埼玉県なども自転車保険の加入を義務化する条例を制定しています。自転車保険の加入を義務化する動きは拡大し、2020年4月からは東京都でも自転車保険の加入を義務化する条例が施行されます。

 ただし、「義務化」とは言うものの、未加入でも罰則規定はありません。そのため、施行前から、条例の効果を疑問視する声も聞かれます。それでも、保険加入が義務化されることで安心感が高まることは間違いありません。

 とはいえ、大切なのは何より「事故に遭わないこと」、そして「起こさないこと」です。

 そうした事故を防ぐ取り組みは、都道府県よりも私たちの暮らしに身近な市区町村や小中学校単位で取り組まれています。

「自転車免許」が安全運転の浸透に一役

 市区町村が実施している自転車の安全講習で、極めてユニークな取り組みを始めたのが荒川区です。

 荒川区は2002年から「自転車免許制度」をスタートさせ、区内の交通公園で自転車の講習会を定期的に実施してきました。

 これらの講習会は小学生などが参加対象で、受講後には自動車免許とそっくりな自転車免許が交付されます。

自転車の「免許証」が交付される荒川区の自転車安全利用講習会(画像:荒川区ウェブサイト)



 自動車免許を取得していなければ自動車の運転はできませんが、荒川区が交付している自転車免許は、あくまでも受講証です。そのため、自転車免許がなくても自転車を運転することはできます。

 しかし、自転車免許制度が創設されたことで荒川区内の小学生たちは自転車の運転マナーの向上や交通ルールの順守を意識するようになりました。そうした安全意識を高める効果が認められたこともあり、荒川区の自転車免許制度を模倣する自治体が相次ぎました。

 自転車の安全講習を受講した市民に対して、インセンティブを付与する自治体もあります。武蔵野市は、市が実施している自転車安全講習を修了すると、自転車保険に加入する際の保険料の一部を助成することや有料駐輪場の優先利用権といった特典を付与しています。

 こうした取り組みが、自転車による事故を減らし、安全で安心な街をつくっていくことにつながります。

増える自転車利用、ハード整備も急務

 東京は鉄道やバスといった公共交通機関が充実していますが、近年は都心部でサイクルシェアなどが増え、大きな荷物を背負いながら道路を疾走する料理配送サービス「ウーバーイーツ」も珍しくなくなりました。

新宿区役所に設置されているNTTドコモの自転車シェアリングのポート。ドコモのほかソフトバンクなども自転車シェアリング事業に参入している(画像:小川裕夫)



 歩行者と自転車の混在は事故の元になるため、行政は歩車を分離する自転車専用道の整備も急ピッチで進められています。

 安全・安心への備えに終わりはありません。自治体は市民の生活を守るため、ソフト・ハードの両面からいっそうの安全対策に取り組んでいます。

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