私立中学校受験データで意外な真実が判明
2020年2月1日(土)から始まった東京と神奈川の中学受験も終わりを迎えつつあります。
私立大学の定員厳格化や大学入学共通テストの導入など、保護者から見ると不透明な情勢が続く中、先手を打とうと有名大学の付属中や系列中への中学受験が人気を集めています。
ちまたでは、最難関中学を避ける「手堅い」生徒が増えているといった話もありますが、実際はどうなのでしょうか。
2月1日から始まった首都圏の私立中学校受験に関するデータを見ると、意外な真実が明らかになったのです。
男女御三家の志願者数は増加
中学受験の世界で男女御三家と呼ばれ、大手進学塾でも合格者数を大々的にアピールするなど注目を集める6校(開成、麻布、武蔵、桜蔭、女子学院、雙葉)の志願者数に大きな変化はあったのでしょうか。
結論から言うと、麻布の前年比21人減を除き、軒並み増加という結果となりました。
開成は35人、桜蔭は26人、雙葉は44人、前年よりも出願者が増えました。トップ校に関しては、ワンランク下げずに意志を貫く受験生しか志願していないと考えられます。
最難関を目指す小学生は、自分が目標とする中学の合格切符をつかみ取るため、高い壁を乗り越えようと日々努力しています。困難な道を突き進む子どもたちには、「手堅く合格するために志望校を下げる」という発想がないのでしょう。
私立大学の定員厳格化の影響は、中学受験にまで及んでいます。
一般入試からの大学入学は狭き門となったため、早稲田や慶応の付属中や系列校にわが子を入学させて大学までの道筋を作ろう――と考える家庭が増えました。
その結果、両校への出願者数は増加。一方で、MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)系列校への変更をするケースも出ているのでしょうか。
難易度が上がった早慶の付属・系列校
早稲田と慶応は、それぞれ3校ずつ付属校と系列校があます。
早稲田の場合、2010(平成22)年度から新設された付属校かつ男子校の早稲田大学高等学院中学部(練馬区上石神井)と系列校である共学の早稲田実業学校中等部(国分寺市本町)と、男子校の早稲田中学校(新宿区馬場下町)への出願者数の合計は、前年より161人多い3357人となっています。
一方、三つの付属校を擁する慶応は、男子校の慶応義塾普通部(横浜市)、共学である慶応義塾中等部(港区三田)と慶応義塾湘南藤沢中等部(神奈川県藤沢市)を合わせた2月の出願者数は、前年よりも24人多い2779人となっています。
ただし、男女別で比べると両校ともに女子の出願者が減少しており、特に慶応の付属校ではその傾向が大きくなっています。
「早慶を避ける層が増えた」とは言い切れない
早慶の付属や系列校では女子の出願者が減少したものの、男子が増加したこともあり、合計の出願者数は前年よりも多く、ちまたでささやかれる「早慶を避ける層が増えた」とは簡単に言い切れない状況です。
一方、早慶の次と目されるMARCHの中学受験は興味深い結果となっています。MARCHの中でも、出願者数が減少した学校と増加した学校に大きくわかれているのです。
明治大学の三つの付属校の合計出願者数は、前年に比べて669人少なくなっています。同様に、法政大学中学校(三鷹市牟礼)と法政大学第二中学校(川崎市)の出願者も減少。中央大学も、中央大学付属中学校(小金井市貫井北町)と中央大学付属横浜中学校(横浜市)の出願者が減っています。
立教も大幅に増加
一方、青山学院大学と立教大学では増加傾向が見られます。特に立教大学では男子校の立教池袋中学校(豊島区西池袋)の出願者数は、この3年で180人近く増加しています。
また、提携校として有名な香蘭女学校(品川区旗の台)は生徒の半数が関係校推薦として立教大学に進学できる点と、また2018年2月の入試から単日入試から2回の試験日を設けたことで、出願者数が増加しました。
このように、MARCH内では受験生の人気を集めた学校と前年よりも落ち込んだ学校がはっきりしています。
どうなる2021年以降の出願動向
2020年の中学受験の出願者数をみると、男女御三家を取り巻く状況は大きな変化はありません。
付属中のトップに位置づけられている早慶も女子の出願者が減ったものの、合計数は前年を超えるなど、トップ層を目指すしている受験生が安全志向にかじを切ってはいないことがわかります。
その反面、MARCHの付属校や系列校では増減ふたつのパターンにわかれるなど、明暗がハッキリした格好です。
ここ数年続く中学受験者数の増加や私立大学の厳格化に伴い、人気校であるMARCHに関係する中学も年々ハードルが高くなっています。
難易度が高まったことで敬遠する受験生も増え、そこに大学入試の問題も絡んでくるのであれば、2021年以降の出願動向を読むのは非常に難しくなるのではないでしょうか。