紅白も見られない? お正月返上で受験勉強、会社員よりはるかに忙しい都内小学6年生の厳しい冬休み

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紅白も見られない? お正月返上で受験勉強、会社員よりはるかに忙しい都内小学6年生の厳しい冬休み

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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お正月休みに入り、のんびり過ごしている人も多いかと思います。しかし、中学受験を控えた東京など首都圏の小学6年生のいる家庭は例外です。大みそかや元日まで塾の講習が入っているという児童も珍しくありません。教育ジャーナリストの中山まち子さんがその実態を紹介します。

大みそかも元日も勉強しなければならない理由

 正月返上で勉強する、というと大学入試を直前に控えた高校生や予備校生をイメージする方も多いかもしれません。しかし東京をはじめとした首都圏では、中学受験を控えた小学6年生が正月休み返上で勉強をしていることをご存知でしょうか。

中学受験を目前に控えて冬休み中の冬期講習に臨む小学6年の児童たちのイメージ(画像:写真AC)



 今回は、受験までのカウントダウンが始まり、緊張の糸が切れないよう年末年始も机に向かう受験生の勉強時間や費用などをご紹介していきます。

年が明ければ一気に受験シーズン本番

 首都圏の中学受験は例年、埼玉県の1月10日を皮切りに千葉では1月20日、2月1日は東京と神奈川がそれぞれ入試解禁日となっています。中学受験をする小学6年生にとって、冬休みは勉強時間がたっぷり取れる最後の長期休みでもあります。そのため、大手進学塾の冬期講習や正月特訓にはラストスパートをかける受験生が参加しています。

 東京の主な中学受験塾では、日能研(本部・横浜市港北区)を除くサピックス(株式会社日本入試センター、本社・渋谷区代々木)や四谷大塚(中野区中野)そして早稲田アカデミー(豊島区南池袋)が冬期講習とは別に正月特訓を設けています。

 世の中がお休みモードのなか、受験への意識が切れないよう11~12歳の子どもが年末年始関係なく、お弁当持参で朝から夕方まで勉強をし、目前に迫った入試に備えているのです。

年末年始の遠出はまず不可能な日程

 2019年度の冬期講習会が12月25日(水)から始まるサピックスは13時30分から18時50分と午後からのスタートとなっています。一方、12月26日(木)から冬期講習会が始まる四谷大塚と早稲田アカデミーは朝の9時頃から始まり、17時前後まで勉強するカリキュラムになっています。講習会とは別日に行われる正月特訓は3つの塾とも午前9時からスタートし、四谷大塚と早稲田アカデミーでは17時前後に終了し、サピックスは17時40分とトータル7、8時間にも及びます。

 正月特訓の期間は三者三様で、サピックスは元旦を除く2019年12月30日(月)から2020年1月3日(金)の4日間で実施しています。四谷大塚は大みそかの12月31日(火)から元日、1月2日(木)の3日間とコンパクトにまとめているものの、早稲田アカデミーでは12月30日から1月3日の5日間の正月特訓を行っています。

 このように、冬期講習や正月特訓に参加する場合、年末年始に家族で遠出することは不可能に近いといえます。

家計負担も……冬期講習と正月特訓は別料金

 冬期講習会と正月特訓は別コースとして分けられているため、どちらにも参加したい場合はそれぞれの費用を支払うことになります。その額は、家計への負担という点で無視できない金額になっています。

 サピックスの場合は塾生のみ受講可能で、冬期講習会と正月特訓それぞれ5万2800円(税込、以下同)と同じ費用を設定。両方に参加すると合計10万円を超すことになります。3日間の正月特訓が1万3200円の四谷大塚の場合、最終日のテストを含む冬期講習会の料金は6万9850円です。

東京の主な中学受験塾の冬期講習・正月特訓(画像:教育ジャーナリスト中山まち子さんの調べを基にULM編集部で作成)



 早稲田アカデミーは一般生と塾生で価格が異なりますが、割安な塾生でも冬期講習会で4教科を受講すると7万3800円、正月特訓は5万9000円。どちらも参加をすると計約13万円掛かります。子どものラストスパートのために、親もかなりの資金を投入する必要があるのです。

集中力と経済力、両方を求められる現状

 長時間に及ぶ塾での勉強と、講習会と特訓参加で発生する料金を考えると、受ける子どもには集中力が求められ、さらに親の経済力や送迎やお弁当などの協力がないと参加することもままならないのです。

 ある意味、正月返上で勉強に励む小学6年生は恵まれた環境で育ってきている子ども達といえるでしょう。

 しかし、親主導で参加をさせられた子どもにとって、冬期講習会や正月特訓は苦痛以外の何物でもないかもしれません。周囲からは「緊張の糸が切れたら元のやる気を取り戻すのは大変」と聞かされ、「年末年始くらい休ませてほしい」という本音も言えぬまま家と塾との往復をする子もいるはずです。

 2週間ほどの冬休みはあっという間に終わりますが、中学受験をする家庭では全てを注ぎ込み、年間を通して一番前のめりになる時期なのかもしれません。

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