近年開発ブームの「水族館」、令和の時代にいったいなぜ?

近年、水族館の開発ブームが加速しています。その背景にはいったい何があるのでしょうか。文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。


初期水族館の改修にともない開発が加速

 今、水族館ブームが来ています。そう言ってもピンと来ない人が多いと思いますが、利用者のブームではなく、デベロッパー(土地開発業者)の水族館企画・開発ブームということです。

葛西臨海水族園のタマカイ(画像:写真AC)



 国内において単独で大量集客できる定番レジャー施設はテーマパークや遊園地、動物園、水族館、植物園などがありますが、現在、水族館を除いた業態は数年に1施設の開発があれば良い方で、長い期間新規開発が停滞している状況です。ブームとは少し大げさかもしれませんが、水族館は定番レジャー施設の中では新規開発・リニューアルが活発な業態と言えます。

 例えば、2015年7月に「仙台うみの杜水族館」(仙台市宮城野区。「マリンピア松島水族館」の展示物を継承)、2017年6月に「マリホ水族館」(広島市)、2018年4月にレゴランド・ジャパン・リゾート内に「シーライフ名古屋」(名古屋市)、同年6月に「上越市立水族博物館 うみがたり」(新潟県上越市。旧「上越市立水族博物館」の全面リニューアル)がオープンしました。

 2020年にも四国最大級の水族館「四国水族館」(香川県宇多津町)や最新の映像表現を駆使した海洋体験ができる「DMMかりゆし水族館」(沖縄県豊見城市)、駅前商業施設「川崎ルフロン」内にオープンする「mizoo 川崎水族館」(川崎市)など、新規オープン予定の施設が見られます。更に水面下では複合開発計画の机上に水族館が度々登場しており、今後も開発計画は後を立たないことでしょう。

 水族館の開発数が増えているのには、1980年代以前にオープンした初期の水族館が建築構造的に建て替え・改修が必要な時期に突入したことがあります。そのため、ここ数年は新たな水族館として生まれ変わる施設や大型リニューアルを実施する施設が相次いでいる状況です。2017年7月には「サンシャイン水族館」(豊島区東池袋)がリニューアルオープンし、ペンギンが泳ぐ姿を下から見ることのできる水槽施設「天空のペンギン」が話題となったことは記憶に新しいでしょう。

都市部の開発の陰に人工海水の存在

 新規の水族館の企画・開発が活発化しているのには、いくつかの背景があります。インバウンドの急増によって国内観光マーケットが活性化し、大型レジャー施設の開発が希求されている中で、定番レジャー施設業態の多くはそれぞれの業態の事情で開発リスクが高いか、もしくは新規開発が困難な状況であります。それらと比較すると水族館は開発実現の可能性が高いと言えます。

サンシャイン水族館の「天空のペンギン」(画像:写真AC)



 基本的には屋内施設で、ビルイン(建物の中に施設などを構える形式)開発も可能です。多くの物件に携わってきた著名な水族館プロデューサーや、横浜八景島(横浜市)、オリックス水族館(港区浜松町)といった複数の水族館の開発・運営に携わる企業などがいて、運営の受け皿があることもポイントです。また他の定番レジャー施設と比べて、集客の展望がイメージしやすいと言うことも挙げられます。

 水族館は展示手法のイノベーションなどにより、過去に何回もブームが訪れています。1980年代後半~1990年代前半にはアクリル技術の進化により、超巨大水槽やチューブ型水槽などの特殊水槽による大型水族館の開発ラッシュがあり、「葛西臨海水族園(江戸川区臨海町)、「横浜・八景島シーパラダイス」(横浜市)、「海遊館」(大阪市)など、現在の水族館を代表する大型施設がオープンして、多くの人が利用しました。

 2000年代後半には都心部や大型観光地に立地する都市型水族館が現れました。「エプソン 品川アクアスタジアム(現マクセル アクアパーク品川)」(港区高輪)や「すみだ水族館」(墨田区押上)、「京都水族館」(京都市)がそうです。

 水族館は大量の海水を必要とするため臨海部に開発するのが常でしたが、人工海水の開発により海から離れた都市部での開発が可能となったことも後押ししました。この都市型水族館はイルミネーションとコラボするなどエンターテインメントとの融合を謳い、夜間帯の水族館の魅力を上げてアフター5の利用を取り込むなど、水族館の可能性をさらに広げました。

新しい水族館が次々に生まれる

 近年の動向として複数の商業デベロッパーを複合商業施設のサブ核(スーパーマーケットなどのキーテナントに対し、主に時間消費型のサブ的な集客核を指す)として水族館の導入を検討しています。

 アウトレットと水族館の相乗効果は非常に高く、例えば「広島マリーナホップ」(広島市)と「マリホ水族館」、「三井アウトレットパーク仙台港」(仙台市)と「仙台うみの杜水族館」などで効果が確認されています。それぞれが半日程度の滞留時間であり、両方利用することで1日の日帰りレジャーになることから客足が伸びるという構造です。

「すみだ水族館」のエンゼルフィッシュ(画像:写真AC)



 また、2015年11月に複合商業施設内にオープンした海遊館が運営する「NIFREL」(大阪府吹田市)は水族館や動物園を複合した新業態として子連れファミリーに人気で、改めて水族館が注目されることとなりました。

 都市型水族館は中規模クラスで、都市郊外立地に商業施設に複合した開発が促進されると考えられます。これにより新しい水族館が次々に生まれることは楽しみです。

生き物へのストレスも大きく考慮せよ

 一方で危惧される点も少なくありません。開発に水族館が選択されるのは「ハコモノ」だからという意識があることは否めません。同じ方向性を向きやすく、似たような開発が増加する可能性もあります。

マクセル アクアパーク品川のクラゲ(画像:写真AC)

 元々水族館は基本的に観光地の周遊観光のひとつとして発展してきました。大勢の人が滞留している都心部や大型観光地か、アウトレットのような広域集客型の商業施設との複合なら良いのですが、都市郊外立地で都心部からの安定的な集客には強い目的性が必要となります。

 すでに都心部には複数の都市型水族館があり、それらとの差別化も必要でしょう。都市型水族館の場合、エンターテインメント性の向上による差別化が考えられますが、光の演出が過剰になれば生き物へのストレスも高くなります。生き物を扱う業態だけに本当に利用者が望んでいることなのか、その立地に適しているのか慎重に検討してもらいたいところです。

 既存の水族館では新規開発やリニューアルが活発だったため、比較的集客がアップダウンしています。現在はイベントやSNSへの情報提供などで集客する傾向が見られます。例えば、蒲郡市竹島水族館(愛知県蒲郡市)では魚の立場になって飼育員が書いた「魚歴書」など手書きした説明板などが話題となりました。従来型のハコモノの発想だけでは集客を捉えられない時代になってきていると言えるでしょう。

 水族館はさまざまな試みで新たな付加価値を模索しています。よろしければ是非足を運んでみてください。


【画像】2020年夏オープン! 日本初の駅前商業施設一体型水族館「mizoo 川崎水族館」のイメージを見る

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