大都会の東京駅からなんと「荒川土手」まで! 路線バス「東43」系統で楽しむギャップ旅とは
東京駅と荒川土手の意外なギャップ 東京の玄関口、東京駅。都内はもちろん、全国各地から鉄道路線や高速バス路線が集まってきます。周辺にはオフィスビルが多く立ち並び、まさに都心部と言えるエリアです。 そして、もちろん路線バスも多く東京駅を発着します。晴海や豊洲といった臨海部方面へ向かうバスが中心ですが、それ以外にも南千住、錦糸町、目黒方面へ向かうバスもあります。 その中にとても気になるバスの行き先があります。それが「東43」系統「荒川土手」行きです。都心部の「東京駅丸の内北口」を発着し、まちの端をイメージさせるような「荒川土手」に向かう路線バス。いったいどんな路線なのでしょうか。 都営バス「東43」系統が発着する「東京駅丸の内北口」6番のりば(画像:(C)Google)「東京駅丸の内北口」バス乗り場はJR東京駅丸の内北口を出てすぐのところにあります。このバス乗り場から発着するのは「東43」系統のほか、錦糸町に向かう2系統と観光用の特殊な車両で運行される「S-1」系統「東京→夢の下町バス」のあわせて4系統です。 「東43」系統と「S-1」系統は乗り場も共用しており、片や観光系統、片やまちの果てまで行ってしまいそうな「荒川土手」行きのバスとユニークな組み合わせとなっています。ちなみにこのバス停から荒川土手へ向かうバスは1時間に1~2本。乗る際は時刻表を確認していきましょう。 「東京駅丸の内北口」バス停を出たバスは日比谷通りに出ます。右折して北に曲がるとまもなく大手町バス停です。大手町は地下鉄路線の集まる場所ではありますが、路線バスはこの「東43」系統のみが通ります。 大手町を抜けると神田橋を渡り、道は日比谷通りから本郷通りに名を変えます。神田の中小オフィスビル群の中を抜けていくと、程なくして駿河台下交差点で靖国(やすくに)通りと交差します。このあたりでは神保町エリアらしく本屋やスキー用品店、カレー屋を車窓に見ることができます。 御茶ノ水から駒込、田端方面へ御茶ノ水から駒込、田端方面へ 駿河台下交差点からは上り坂。明治大学駿河台キャンパス(千代田区神田駿河台)や楽器店を見ながら御茶ノ水駅前バス停に着きます。ここまで東京駅からおおむね10分強。近くに駅や順天堂病院があることから多くの人が乗ってきます。また、ここから秋葉原駅と駒込駅を結ぶ「茶51」系統と同じルートをしばらく走ります。 御茶ノ水駅前を出ると千代田区から台東区になります。バスは順天堂病院の間を抜け、国道17号線に入ります。ここからはオフィス街から住宅街になり、マンションが多く見られるようになります。またお店もコンビニや飲食店が増えていきます。 国道17号線に入りしばらく進むと本郷エリアに入り、「東大赤門前」バス停、「東大正門前」バス停と東大本郷キャンパスを車窓右に見ながら本郷通りを北上します。やがて店の密度も低くなり、マンションやビルが低くなっていきます。地下鉄南北線本駒込駅のあたりでバスは本郷通りを外れ、北東へ進路を変えます。建物の密度や高さはさらに低くなり、都心部から外側に来たことが視覚的にも感じることができます。 東京駅から約35分で都立駒込病院前にある「駒込病院」バス停に到着します。ここまでが「東43」系統の本数が少ない区間で、ここから先、荒川土手までは毎時3~6本のバスが運行されています。 「駒込病院」バス停(画像:(C)Google) 駒込病院バス停を出るとすぐに坂を下り、不忍通りと交差。荒川区に入ると再び小さい丘を切り通しで抜け、田端駅の上を通る跨線橋(こせんきょう。鉄道線路を立体交差で越えるために架けられた橋)にさしかかります。 東京駅から約45分。跨線橋の上にある「田端駅前」バス停ではJR線から多くの人が乗ってきます。ここからが「東43」系統が多くの人を輸送する区間です。新幹線の高架をくぐると左手にJR東日本東京支社のビルがあります。ビル周辺の田端から尾久にかけては新幹線、貨物列車、通勤電車などさまざまな列車が留置される線路が敷かれています。まさに東京に関わる輸送を支える重要な拠点のひとつです。 跨線橋から降りていくと再び住宅地の中を進みます。住宅地の建物の密度は高く、各バス停で人を数人ずつ降ろしながら北へ進むと隅田川にかかる小台橋を渡り、足立区に入ります。地図で見ると隅田川と荒川がすぐ近くを流れ、バスが橋を渡った先の小台や宮城周辺は離れ小島のように見えます。 しかし、実は元々隅田川は荒川がそのまま注ぎ込んでおり、治水のためにつくられ、大正時代に完成した放水路が現在の荒川です。そのため、元々は川の左岸だった場所が島のようになってしまったという非常に面白い場所です。第2次世界大戦中のころから工場を中心に発展し、近年は工場が住宅に転換していきました。元々「東43」系統の原型になったバス路線も小台や宮城周辺の工場へ人々を輸送するためにつくられたのではないかと言われています。 本当に土手の下にあったバス停本当に土手の下にあったバス停 小台地区・宮城地区の中で住宅街を丁寧にカバーするようにバスは走り、降りる人も増えます。2008(平成20)年に日暮里舎人(とねり)ライナーが開業するとともに足立小台駅ができましたが、昔からあって住宅地まで来るバスの需要は高いようです。 宮城地区を抜けると江北(こうほく)橋を渡ります。車窓左には首都高速中央環状線の五色桜大橋が見えます。「ダブルデッキ式ニールセンローゼ橋」と呼ばれる構造の美しい橋です。夜にはライトアップするのですが、以前はその電気の一部を通行する車両の振動エネルギーでまかなっていました。 江北橋を渡ると土手から首都高速の高架下を通る道路に入り、すぐのところが終点の「荒川土手」バス停です。 「荒川土手」バス停(画像:(C)Google) 東京駅丸の内北口からここまで1時間10分。本当に荒川左岸の土手の下にバス停はありました。バス停は「東43」系統の終着になっているほか、池袋から王子、西新井を短絡し、本数が多い「王40」系統が通ります。なので、帰りは「東43」系統を利用してもいいですが、「王40」系統を利用すれば山手線の西側に抜けられますし、東武スカイツリーライン方面にも抜けることができます。 ちなみに「東43」系統の始発バス停は200m離れたところにある「荒川土手操車場」です。操車場は土手から少し住宅地を走る狭い2車線道路沿いに5台ほど停車できる場所ですが、バスが入る際にはバックが必要となります。そのため、誘導員が出て安全確保を行いバスの安全運行を支えています。 「荒川土手」バス停はできた当初、本当に何もない土手近くに折り返し場がつくられたのでこの名前になったのでしょう。現在は2002年に完成した首都高速江北ジャンクションの下にあたり、荒川左岸も住宅地が広がっています。果てのような場所に見えても、東京という都市の中。広大な郊外住宅地の中に「荒川土手」はありました。 「東43」系統沿線には今回書き切れなかった面白いスポットや知ると車窓の見方が変わる小話もまだまだあります。ぜひいろいろなスポットも探しながら東京駅から「土手」までのプチトリップを楽しんでみてください。
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