デパートから専門店街に生まれ変わる「立川高島屋」――テナント構成はどうなる?

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デパートから専門店街に生まれ変わる「立川高島屋」――テナント構成はどうなる?

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若杉優貴

都市商業研究所

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2023年1月に立川高島屋が百貨店としての営業を終了することを発表しました。立川高島屋は、立川駅前エリアはその後、どのように変わるのでしょうか。『百貨店閉店を発表した「立川高島屋」――その歴史は「立川の商戦と街づくりの遍歴」でもあった』を当ウェブサイトに掲載した都市商業研究所の若杉優貴さんが解説します。

 JR立川駅近くにある百貨店「立川高島屋」が、2023年1月に百貨店としての営業を終了、全館を「立川高島屋S.C.(ショッピングセンター)」として百貨店の売場跡に新たなテナントを誘致することを発表しました。

 大型店どうしの競争が激しい立川駅前エリア。果たして、今後どういったテナントの出店が予想されるのでしょうか。

>>関連記事:百貨店閉店を発表した「立川高島屋」の歴史【前編】

立川高島屋の下層階は1月で閉店。 具体的な後継テナントは未定としています。(撮影:若杉優貴)



現時点でテナントは未定――近くにある「家電量販店」「大型雑貨店」は厳しいか

 立川高島屋が現店舗に移転したのは1995年のこと。もともとほぼ全館が百貨店の売場でしたが、2010年代以降は上層階に「ニトリ」や「ジュンク堂書店」などの専門店を誘致することで百貨店直営面積の縮小をおこなってきたため、2022年10月時点の立川高島屋の百貨店直営売場は地階・1階・2階の一部・3階のみとなっています。1月に閉店するのはこれらの下層階にある百貨店直営売場。跡地について、高島屋は「2023 年秋に新たな専門店を加えてリニューアルオープンする予定」としている一方、10月時点では具体的なテナント構成などは発表されていません。

 再活用方法として考えられるのは、言うまでもなく「百貨店となっている区画を大型専門店に一括全床貸し」、もしくは「フロア・区画ごとに複数のテナントを入れる形式」の2つです。

 先述したとおり、立川高島屋の売場のうち1月で閉店となる百貨店部分は地階・1階・2階の一部・3階のみですが、建物の一部といえども店舗面積は約1万1,000㎡ほどもあり、これは徒歩圏にある「ビックカメラ」(伊勢丹跡、店舗面積13,377㎡)や「ドン・キホーテ」(ダイエー跡、専門店含む全館店舗面積10,620㎡)と同じくらいの広さになります。

 建物を高島屋が所有しつづけて「立川高島屋S.C.」として運営する以上、隣接する伊勢丹(の別館)や、かつて八王子等にも店舗があった大丸、もしくはその傘下のパルコなど他のデパートの出店はないでしょうし、また「新たな専門店を誘致する」と発表しているため、高島屋が「フードメゾン」など小型百貨店業態として残留することも考えづらいでしょう。

SNSなどでは高島屋跡に家電量販店を求める声もあるものの、近隣には複数の家電量販店が…。 立川駅前・第一デパート跡に2016年開業したタクロス内「ヤマダデンキLABI」。(撮影:佐藤庄一郎)

 都内百貨店跡の活用方法としてよく見られる「大型家電量販店」や「大型雑貨店」についても、大型家電量販店については先述した伊勢丹跡の「ビックカメラ」と第一デパート跡地・タクロスの「ヤマダデンキLABI LIFE SELECT」が、大型雑貨店についても都心店よりは小さいながら「ロフト」はルミネ立川に、「ハンズ」はグランデュオ百貨店とららぽーと立川立飛に店舗を構えています。

 そのため、立川駅前商圏の大きさも考えると百貨店跡への「大型専門店の一括入居」は難しく、下層階も上層階と同様に「フロア・区画ごとに複数のテナントを入れる形式」となる可能性が高いと思われます。(それゆえ、一部に無印良品などの中規模雑貨店や中規模家電量販店が入ることはありえるでしょう。)

立川高島屋とその周辺図。(国土地理院の空中写真を加工・加筆して作成)(作成:若杉優貴)

「お手ごろ感がある店」に生まれ変わる可能性も?

 もし仮に「立川高島屋(直営売場)の跡に複数のテナントを入れる」となれば、伊勢丹等との「百貨店対決」に苦しめられてきた高島屋だけに、現在の高島屋や伊勢丹のような高級感がある売場とは異なり「ロピア」や「オーケー」などといった近年人気を集めるディスカウントスーパーをはじめとする「お手頃感があるテナント」を集めることもありえそうです。

 「高島屋系がディスカウントスーパーを入れることはないだろう」と思う人も居いるかも知しれませんが、実は高島屋系列のショッピングセンターで「お手頃感があるテナント」を集めているところが、しかも立川市内に存在します。それは、市内北部の東大和市や小平市境に近い場所にある「若葉ケヤキモール」です。

 そもそも「若葉ケヤキモールが高島屋系」と聞いて驚く人も少なくないでしょうが、もともと同店は高島屋の物流センター跡地を再開発して2006年に開業したもので、運営は立川高島屋S.C.と同じ「東神開発」がおこなっています。

若葉ケヤキモール。 高島屋系列ですが、2021年よりディスカウントスーパーを集客の要とします。(撮影:ナカガワタイガ)

 ケヤキモールは、開業当初こそマルエツの高級業態「リンコス」をはじめ複数のアパレルブランドが出店するなど「百貨店系らしさ」があったものの、2022年現在は殆ほとんどのテナントが入れ替わっており、核店舗はディスカウントスーパー「オーケー」、そのほか「ファッションセンターしまむら」や「キャンドゥ」、「サンドラッグ」など、日常遣いに特化したお手ごろ感があるテナント中心で構成。とくに2021年のオーケー開業時には駐車場に長い列ができたほどで、物価が高騰しつつあるなか、新装から約1年を迎えた現在もヤングファミリーや学生を中心とした多くの住民の支持を集めています。

 高島屋は戦前より均一雑貨店(100円ショップの原型)を展開していたほか、たとえ旗艦店であっても新宿高島屋ではニトリやノジマなどといったお手ごろ価格の大型専門店を、日本橋高島屋S.C.ではポケモンセンターを導入するなど、大手百貨店のなかでは「時代に合わせた柔軟な店づくり」をおこなうことを特徴としています。

「柔軟な店づくり」を特徴とする高島屋。 日本橋店では「ポケモンセンター」が出店するほか、食品など一部店舗の早朝営業を実施。(撮影:若杉優貴)

 コロナ禍と物価の高騰により消費者の財布の紐が固くなっている昨今。それゆえ、立川高島屋S.C.がケヤキモールの成功にならってこれまでの百貨店とは全く異なったテナントを集め、新たな顧客獲得をめざす可能性は大いにあるでしょう。

 リニューアルの行方によっては、近い将来に立川高島屋がヤングファミリーや学生でにぎわいを見せ「今や高島屋のライバルは伊勢丹ではなくドン・キホーテ立川店だ」と言われる日が来るかもしれません。

参考:
・多摩スリバチ学会(2021)「多摩武蔵野スリバチの達人」昭文社
・高島屋史料室
・立川市ウェブサイト
・三井住友トラスト不動産ウェブサイト

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