答えのない「閉塞感」に覆われた世界で、われわれはどうしていけばよいのだろうか

日本に漂うこの「閉塞感」に対して、われわれはどう向き合えばよいのでしょうか。イベントプロデューサーのテリー植田さんが持論を展開します。

「サマーソニック 2019」に参加

 日本に漂う、東京に漂う、この「閉塞感」はいったい何なのでしょうか?

 私(テリー植田)はイベントプロデューサーとして、イベントや小売店の売場や催事の企画をプロデュースし、メディアで発信していくことを仕事にしています。イベントは、常に新しい文化の「兆し」であるべきだと思っています。

まん延する閉塞感のイメージ(画像:写真AC)



 音楽フェスティバルは、その閉塞感からわれわれを一瞬だけ解放してくれる貴重なイベントで、毎年定番の存在となっています。

 8月16日(金)から18日(日)までの3日間、幕張メッセ(千葉県千葉市)と千葉マリンスタジアム(同)で行われた大型音楽フェスティバルの「サマーソニック 2019」に参加しました。参加と言ってももちろんミュージシャンとしてではなく、チケットを買って遊びに行ったわけでもありません。

 実は私、夏だけ、そうめん研究家・ソーメン二郎の肩書きで活動しているのです。私が参加したのは、ソーメン二郎として監修したそうめんメニューを売る店がフードコートに出店しているから。

変化したフジファブリックの歌詞に対する印象

 2018年にそうめんメニューを販売した店は私が監修した店だけでした。しかし、2019年はなんと新規で2店もありました。

夏に消費されるそうめんのイメージ(画像:写真AC)

 サマーソニックのフードメニューは「ソニ飯」と呼ばれるほど、フェス飯の代名詞になっています。そうめん店が3店もあれば、ブームの流行りを感じざるを得ません。私は会場で、そうめん文化の新しい兆しを体感できました。

 7月は冷夏の影響で、そうめんとめんつゆの業界は打撃を受け、消費が非常に遅れましたが、8月に入ってすぐ夏のピークとなりました。ピークを感じるようになると、いつも私の脳内に鳴り響く音楽があります。フジファブリックが2007(平成19)年11月にリリースした「若者のすべて」です。

 この曲を最初に聴いたとき、「素敵なバンドが現れた」くらいに思っていたのですが、なんだか新しい爽快感を感じました。しかしながら、ここ数年は印象が違うのです。歌詞をじっくり読むと爽快感ではなく、まったくもって「どんより」しているのです。

これまで当たり前とされてきた権威が崩壊

 ここで、東京の閉塞感について考えてみたいと思います。いったいいつから閉塞感を感じるようになったのでしょうか。いろいろと記憶を遡ってみたところ、あくまでも仮説レベルですが、「ここもしれない」というタイミングがあったのです。

東京で行われるイベントのイメージ(画像:写真AC)



 元アメリカ副大統領のアル・ゴアが出演した、地球温暖化に警鐘を鳴らすドキュメンタリー映画「不都合な真実」の公開が2006(平成18)年です。ゴア氏はのちにノーベル平和賞を授与されました。しかし、そんなノーベル賞も今ではセクハラ・スキャンダルにまみれて権威は失墜。村上春樹の受賞有無などで、浮かれているのは日本人だけでしょう。

 これまで当たり前とされてきた権威や伝統、労働、ルールが雪崩式に崩壊しているような気がします。人生100年も生きられないし、働き方改革もでたらめ。年金も払いっぱなしで、われわれが生きているうちに支払われないかもしれません。

 そういえば最近、映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインが有名女優からのセクハラ告発を受け、ハリウッドを揺るがしました。

閉塞感を完全に打ち破った映画「全裸監督」

 映画の話になったので勢いで書きますが、NETFLIXで8月から190か国に配信されている「全裸監督」(山田孝之主演)は、とてつもなく面白かったです。シーズン1の全8話を配信初日に朝までかけて全部観ました。

 贅沢な予算、1980年代が忠実に再現された新宿の美術セット、テレビではダブーとされている内容の数々、演技のクレイジーさ、どれをとっても、日本の映画業界に対する閉塞感を完全に打ち破っていて、爽快極まりません。

 NETFLIXの凄さは全世界に1億5100万人の会員がいて、その収益を予算としてオリジナルコンテンツを制作しているところにあります。コンテンツの配信中、コマーシャルはありません。

 私が、NETFLIXにハマったのは「ストリートグルメを求めて」というグルメドキュメンタリー作品がきかっけです。世界中のストリートにある人気屋台の主人を追ったドキュメンタリーで、朝の仕込みから仕事が終わるまでの風景や語りが、最新の映像でつむがれているのです。

タイの屋台のイメージ(画像:写真AC)

 この番組は、過去ではなく現在のストリートにある面白い店を扱っており、ドキュメンタリー形式の旅行ガイドとも言えます。それも世界中。実際に作品で配信されていたベトナムのホーチミンにある、バインミー(ベトナムのサンドイッチ)が有名な人気屋台は私が行った店でした。

「ストリートグルメを求めて」はメディアが持つ閉塞感を完全に打破して、全世界のエンタテイメントに仕上げているのです。

会社員としての働き方に違和感

 閉塞感だらけといえば、東京2020オリンピックです。昔と比べて、オリンピックへの期待感や興奮は格段に下がりました。ゼネコンや広告代理店の利権の巣窟ですし、アスリートたちが汚染されている海で泳ぐことも、まったくもって意味不明です。

 2019年にこれだけの猛暑で亡くなっている人もいるというのに、夏にオリンピックをすること自体、理解に苦しみます。これもまた伝統と権威への違和感といえます。

新国立競技場の様子(画像:写真AC)



 閉塞感の話に戻りましょう。私がフリーランスになって、2019年で12年が経ちます。2007年に37歳で会社員を辞めて独立しました。フリーランスになったのは、フジファブリックの「若者のすべて」がリリースされた年です。今思い返してみると37歳の私は、無意識のうちに会社員としての働き方に違和感を持ち始め、会社から脱出したのではないかと思っています。

ホーチミンに1週間滞在することに

 フリーランスになって一番良かったのは、満員電車に朝乗らなくなったのと、上司も部下もいないことです。私が何度か転職した理由は、上司のやり方が合わなかったから。フリーランスで大切なのは、クライアントとのやり方に合わせながら仕事を成功させること。精神的なストレスと体力的な苦痛から解放されたのが良かったです。

 この数年東京への違和感を抱き、働き方を意識的に変えてきました。具体的には「1年のうち3か月は東京にいない」としたことです。またその3か月の中で、ベトナムのホーチミンに1週間ほど滞在することにしました。

ホーチミンの様子(画像:写真AC)

 なぜホーチミンかというと、世界中で今一番勢いがある都市だからです。あらゆるカルチャーの種が咲き始めており、ネット環境も問題なく、日本との時差が2時間と働きやすいのです。ベトナムは季節が通年夏なので、すこぶる体調も良い。ホーチミンのことは、また別の記事で書けたらと思います。

「未来のリハーサル」は始まっている

 あとは、故郷の奈良県桜井市の実家で過ごし、地域ブランド委員として市役所と仕事をやっています。実家の母親のごはんをもう一度食べ直すこと、そして生まれ故郷への恩返しと再生のお手伝いをしたいのです。また先述のとおり、毎年6月から8月までのそうめんシーズンはそうめん研究家として、テレビやラジオ、イベント出演で地方を回っています。このライフスタイルが、今の私にとって閉塞感を感じない唯一の処方箋です。

奈良県桜井市にある長谷寺(画像:写真AC)



 昭和、平成と続いてきた日本らしい価値観や空気感が大きく変化しています。これからの令話時代、閉塞感を打破するための特効薬や解決策はもうないかもしれません。しかしながらこのような閉塞感や違和感の中で、世界中のあちらこちらで「未来のリハーサル」が始まっています。

 ホーチミンのストリートでは、iPhoneを持った靴磨き少年が走り回っています。

 モンゴルのウランバートルでは、中学生が宇多田ヒカルの歌を日本語で完璧に歌っています。

 アメリカの大リーグでは、次世代の大谷翔平選手がいるでしょう。

 バスケットボール界では、八村塁に並ぶ日本人選手が現れるでしょう。

 そして、今を輝く17歳の歌姫ビリー・アイリッシュを超える若手ミュージシャンすらも、すぐそこの未来にスタンバイしているのです。

【写真】「働く」を楽しむコミュニティ型プラットフォーム「フリーランスビレッジ」開始

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