もはやテーマパーク! 進化する企業ミュージアム・工場見学、その最前線と背景に迫る

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もはやテーマパーク! 進化する企業ミュージアム・工場見学、その最前線と背景に迫る

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中村圭

文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナー

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これまで企業資産の保存や対外的なPR活動のために使われてきた企業ミュージアム・工場見学。しかし近年、その姿が大きく変化しています。いったいどのように変わっており、またその背景には何があるのでしょうか。文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。

2010年代は施設の開発・リニューアルラッシュ

 企業ミュージアム・工場見学は企業資産の保存やその理念の集約と提示、企業PR、地域教育への貢献などのために開発・実施されてきました。しかし、今や利用者はレジャー施設と同様のモチベーションを持つようになっています。専門ガイドブックが出るほど、レジャーとしての利用が定着してきたと言えるでしょう。

三重県津市にあるベビースター工場一体型テーマパーク「おやつタウン」(画像:アソビュー)



 全国には多数の企業ミュージアム・工場見学が存在しており、その内容は多種多様です。大型施設が多いものには鉄道系のミュージアムが挙げられます。最も代表的なものは「鉄道博物館」(埼玉県さいたま市)ですが、施設は各地に見られ、都内にも「東武博物館」(墨田区東向島)、「地下鉄博物館」(江戸川区東葛西)などがあります。鉄道は公共性が高いため、企業ミュージアムという印象は薄いかもしれません。

 同じく公共性が高く大型施設が多いものが電気やガス、エネルギー系のミュージアムです。「電気の史料館」(神奈川県横浜市)、「がすてなーに ガスの科学館」(江東区豊洲)、「東芝未来科学館」(神奈川県川崎市)など、科学館の形態で学び要素が強くなっています。

 いわゆる企業ミュージアム・工場見学の中で特に人気が高いのが、身近な食品を扱う食品メーカーの施設です。基本的には産地や起業地にあるため地方に多く存在します。ポピュラーなものは日本酒やビールなど酒造メーカーの施設で、外国人観光客にも人気があり地域の観光資源となっています。その他にも「うなぎパイファクトリー」(静岡県浜松市)や「白い恋人パーク」(北海道札幌市)など、地域を代表する菓子メーカーの施設も人気です。

 一方、2010年代には食品メーカーの企業ミュージアム・工場見学施設が都市部や首都圏近郊で開発され、首都圏のレジャーニーズを吸収して爆発的な人気を呼びました。2011年9月にオープンした日清食品の「カップヌードルミュージアム 横浜」(神奈川県横浜市)は、自分だけのオリジナルカップヌードルを作る「マイカップヌードルファクトリー」が人気となり、近年の企業ミュージアムブームの火付け役となりました。

 また2012年10月には江崎グリコの工場見学施設「グリコピア・イースト」(埼玉県北本市)がオープンし、オリジナルのジャイアントポッキーが作れる体験プログラムが話題となりました。このような動向を受けて、2010年代は企業ミュージアム・工場見学施設の開発・リニューアルラッシュとなっています。

2019年には埼玉に「中華まんミュージアム」オープン

 2014年6月にオープンした「マヨテラス」(調布市仙川町)はキユーピーの見学施設です。完全予約制で、90分のコミュニケーターによるフルアテンドツアーが特徴です。

「マヨテラス」サラダホール(画像:キユーピー)



 施設内は「キユーピー ギャラリー」「マヨネーズドーム」「ファクトリーウォーク」「キユーピー キッチン」の4つのゾーンから構成され、マヨネーズの容器を模した象徴的な「マヨネーズドーム」の中では、マヨネーズのおいしさを作り出す原材料へのこだわりや“乳化”などについて紹介しています。「キユーピー キッチン」では野菜やマヨネーズの美味しさを楽しく発見するため、オリジナルのマヨネーズソース作りや野菜の試食などを体験できます。

 2019年に入ってからも「中華まんミュージアム」(埼玉県入間市)など、食品メーカーの施設開発は後を絶ちません。食品メーカー以外では文房具など身近な製品の工場見学も人気がありますが、よく知っている企業のダイナミックなバックヤードを見学できる施設も人気です。ヤマト運輸の巨大物流拠点で実際に荷物が流れる様子が見学できる「羽田クロノゲート」(大田区羽田旭町)や日本航空の格納庫のフロアで整備中の航空機を間近に見られる「JAL工場見学~SKY MUSEUM~」(大田区羽田空港)などが人気です。

中堅テーマパークと変わらない集客インパクト

 このような企業ミュージアム・工場見学の魅力はそこにしか無い体験があること。企業の裏方が見られるほか、ものづくりを体験できる、オリジナルのカスタマイズができるなど、普段はできない消費者の希望を企業が叶えます。学びの要素があり、エデュテイメント施設として子連れファミリーや祖父母を含めた三世代の利用に適していると言えます。さらに、無料施設が多く、試飲・試食やお土産が付いてくることもあって、お得感があります。

 また、食品メーカーの工場見学では直販所が設けられることがあり、限定商品や訳あり商品の販売も魅力です。人気のある施設は年間百万人を超えるレベルの集客を果たしており、これは中堅テーマパークをひとつ開発した集客インパクトと変わりがありません。そのため、地域自治体やデベロッパーでは集客施設として企業ミュージアム・工場見学を誘致する動きも見られます。

 企業にとって企業ミュージアム・工場見学はコーポレート・コミュニケーションの観点から重要視されてきました。よりエンターテインメント性を強め、一般の人に多く利用してもらい、企業のファンになってもらいたいという想いがあります。消費者に直接触れる機会が少ないメーカーにとっては、直接消費者のリアクションを確認でき、コミュニケーションが取れる場と言えます。

強まるコミュニティとの繋がり

 企業ミュージアム・工場見学のコーポレート・コミュニケーションは形態を変えてさらに拡大していきました。

 そのひとつが企業の体験型アンテナショップ・コンセプトショップです。「カルビープラス」(渋谷区神宮前、千代田区丸の内)や「ぐりこ・や Kitchen」(千代田区丸の内)などお菓子メーカーのアンテナショップは店内でお菓子の製造工程が見られ、できたてのお菓子を食べることができます。

 そこには企業ミュージアム・工場見学のエッセンスがあると言えるでしょう。さらにアンテナショップ・コンセプトショップはコミュニティとの繋がりを強め、共に考え、共に生み出すことを目指す方向性にあります。

「RICOH Future House」ワークラウンジ(画像:リコー)



「RICOH Future House」(神奈川県海老名市)は複写機メーカーリコーの商業施設で、海老名駅西口の地域活性化に貢献しています。コワーキングスペース、アフタースクール、カフェレストランのほか、リコーのビジネスパートナーが対象の、リコーグループの技術開発テーマをベースとしたものづくり共創やビジネス共創を実践する「リコー コラボレーション ハブ」からなり、地域のコミュニケーションハブとなることを目指しています。

消費者とのコミュニケーションの場に

 また、2019年2月にオープンした「スターバックス リザーブ(R) ロースタリー東京」(目黒区青葉台)は、コーヒーのワンダーランドとして誕生した体験型店舗です。

「スターバックス リザーブ(R) ロースタリー東京」の1階焙煎風景(画像:スターバックス コーヒー ジャパン)

 スターバックスの同施設は世界で5店舗目、日本では初です。1階では焙煎工程の見学ができるほか、今までにない「TEA体験」ができる「ティバーナ」や、バー、ベーカリーがあります。また、4階では数多くのセッションが実施され、消費者とのコミュニケーションの場ともなっています。

 このように都市部の身近なところにさまざまな形態の施設が開発されています。自分の興味のある企業の施設に足を運び、新しい体験を楽しんではいかがでしょうか。

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