同性愛者じゃなくても楽しめる「新宿2丁目」入門、初心者はまず「MIXバー」に行こう

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同性愛者じゃなくても楽しめる「新宿2丁目」入門、初心者はまず「MIXバー」に行こう

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冨田格

ライター、編集者

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「新宿2丁目」という言葉を聞くと、あなたは何を想像するでしょうか。ゲイの街? それとも同性愛者の聖地? そのような固定化されたイメージを払しょくし、2丁目初心者に新たな楽しみを教えてくれるのが、ライターで編集者の冨田格さんです。いったいどのような場所がおすすめなのでしょうか。

「新宿2丁目の基礎知識」

 新宿2丁目――。

 知らない方は、今でも「ゲイの街」「同性愛者の聖地」と思っているかもしれません。しかし今では、ゲイ以外の人も気軽に楽しめる街となっています。そんな新宿2丁目の楽しさをご紹介しましょう。

夜の新宿2丁目の様子(画像:冨田格)



 伊勢丹やバルト9、世界堂、末廣亭などが並ぶ新宿3丁目より、ひとつ四谷方面のブロックが新宿2丁目です。昼間は2丁目にある専門学校や会社に通う人たちが行き交う街ですが、夜になると多くの飲食店を目当てに、たくさんの人が集まってきます。

 こだわりの居酒屋や中華・焼肉・エスニック・カフェなどの飲食店もありますが、夜の新宿2丁目の中心はゲイバーです。最近はレズビアン・バーも増えていますが、ゲイバーの方が圧倒的に多くなっています。新宿2丁目全体で数百軒のゲイバーがあると言われていますが、店の入れ替わりも激しい街のため、正確な軒数を把握している人はいないと思います。

 ざっくり分けて、ゲイバーには3種類あります。

・Men Only : 基本はゲイ男性しか入れない
・MIXバー  : 性別・セクシュアリティ関係なく誰でも入れる
・観光バー : お客さんの大半はノンケ(ゲイではない人を指す隠語)男女

「Men Only」の店は、基本はゲイ男性しか入れません。昔は「会員制」という札を出している店がほとんどでしたが、現在の新宿2丁目では見かけなくなりました。

「観光バー」は、ゲイがノンケ男女を楽しませるタイプの店です。本来2丁目で飲むような人ではない、2丁目に観光に来た人たちが飲みに来るので「観光バー」と呼ばれていると聞いたことがありますが、その語源は定かではありません。

「観光バー」はニューハーフやドラァグ・クイーン(女装した男性)がいる店から、ホスト風の若いイケメンが揃っている店、賑やかな会話で楽しませてくれる店までさまざまですが、全体的に料金設定は少々高くなっています。

 私が新宿2丁目でお勧めしたいのは、この20年で急増した「MIXバー」です。

2丁目MIXバーがゲイじゃなくても楽しめる理由

 2丁目のゲイバーに遊びに来る、ゲイではないノンケ客のことを指す「訳知り(わけしり)」という言葉が昔からあります。これは2丁目は同性愛者が中心であり、自分たちノンケは中心にはなれないのだ、という街のルールを分かった上で楽しみに来る人たちという意味だそうです。

青色部分が新宿区「新宿2丁目」(画像:Google)



 平成の後半に2丁目で急増して今や主流となっているのが、ゲイ客と訳知りノンケ客が一緒になって楽しめるMIXバーです。

 なぜノンケの皆さんがMIXバーを楽しめるのか? その理由は3つあります。

1.不必要な色気がない
 MIXバーのスタッフの多くはゲイ男性(女性やノンケのスタッフがいる店もあります)、お客のゲイも含めて、基本、女性に対する下心は持っていない人が多いです。ゲイ客が男性との出会いを期待するなら、Men Onlyのゲイバーに行くものです。ノンケ男性に対するホステス、ノンケ女性に対するホスト的なスタッフのお色気営業もなければ、お客さん同士の下心のあるアプローチも極めて少ないです。

「色気がない」というと悪口のように聞こえるかもしれませんが、視線を意識しあうような妙な緊張感もなく、リラックスして飲んで楽しめるという面から見ると、実はすごく褒め言葉であったりもします。

2.ひとりで遊びに行ける
 不必要な色気がないMIXバーにあるのは、たくさんの会話です。カウンターの中のゲイのマスターやスタッフとお客さんの会話もあれば、カウンターに並んだお客さん同士の会話も豊富です。下心を意識せずにリラックスしてお酒を飲んでいると、初対面の人とでも自然と会話が弾んでくるものです。

 ひとりでふらりと飲みに行っても、誰かと話しながらお酒が飲めて楽しい時間が過ごせる。そんな理由からリピーターになるノンケ男女はとても多いようです。そして2丁目は昼と夜で雰囲気がガラリと変わる街なので、いわゆる歓楽街のような危ない雰囲気が皆無です。ひとりで遊びに来る女性が多いのは、そんな理由も大きいと思います。

3.集う人の心がフラット
 MIXバーを選んで飲みに来るゲイのお客さんは、飲んで楽しく話せることにプライオリティ(優先順位)を置いているので、周囲のお客さんのセクシュアリティや自分の好みのタイプかどうかは関係ありません。また、他に飲む場所はいくらでもあるにもかかわらず、わざわざ2丁目に足をのばすノンケのお客さんは、ゲイに対して差別意識や苦手意識を抱いているはずがありません。

 世の中には、未だにゲイやLGBTに対しての誤解や偏見を持っている人はいます。でも、2丁目のMIXバーには、そんな誤解や偏見から来る「壁」のようなものは存在しません。そこに集まるゲイもノンケも、誰とでも楽しく飲んで話ができるフラットな心を持っているからです。

「一度飲みに来ればいいのに」

 私は2018年の夏まで3年と少しの間、2丁目のMIXバーで週1マスターとして営業をしていました。営業を続けるにつれ、ゲイ、ノンケ関係なくリピーターさんが増えていきました。多くの方はひとりでふらりと飲みに来られます。

昼間の新宿2丁目にはためくLGBTの象徴「レインボーカラー」(画像:冨田格)



 年齢や性別・セクシュアリティさまざまな、

・弁護士
・僧侶
・介護職
・雑誌編集長
・主婦
・主腐(夫のいる腐女子)
・主夫
・葬儀屋
・外資系エリート
・銀座ホステス
・電話相談カウンセラー

がカウンターにずらり並んで、ものすごい勢いで話が弾み、酒を酌み交わしているさまを見ていると、「多様性のあり方とは」「LGBTにどう接するのか」など、真面目に考えれば考えるほど答えが見えなくなりそうな問いで、頭でっかちになって悩むよりも、一度2丁目に飲みに来てみればいいのにね、なんて思っていました。

 かしこまって考えてしまうと、心の中に見えない「壁」が生まれてしまうものです。人と人との関わりですから、心の持ちよう次第で案外簡単に「壁」を崩すことができるもんだと、私は思っています。

 2丁目MIXバーに興味を持たれたのなら、怖がらずに是非一歩踏み出してみませんか? ちょっとの勇気を出すことで、あなたの考え方を変えてくれるような会話や気づきに出会えることもあるのですから。

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