都心の古寺「圓融寺」で心と体をリセット 「学ぶ」より「気づき」で人生を豊かにする
碑文谷の圓融寺は平安時代創建の天台宗の古刹です。この寺で、写経や仏典、禅の他に、ヨガやアユルべーダなどの講習が開催されており、人気を博しています。初めての人にも気軽に参加しやすい内容で、仏教を通じてちょっとした「気づき」を得て、参加者の人生がより豊かになることを目的としているといいます。お寺に通いやすい雰囲気作ろうと「ちょっと座ろう会」開始 碑文谷の閑静な住宅街に突如として現れる山門。くぐり抜けた先の緑道の行く手には、厳かな仁王門が鎮座しています。さらにその奥に、しなやかな曲線を描く入母屋屋根の木造建築。経王山文殊院 圓融寺(えんゆうじ)の境内は、ここが都心であることを忘れてしまう深淵な空気が漂います。 緑豊かな圓融寺の参道(2018年8月23日、宮崎佳代子撮影)圓融寺の仁王門(2018年8月23日、宮崎佳代子撮影) 圓融寺は853(仁寿3)年に、最澄の弟子にあたる慈覚大師が創建したと伝わる天台宗の古刹(こさつ)です。旧本堂である「釈迦堂」は室町時代の建築物で、国指定重要文化財に登録されています。そんな由緒ある寺で、写経や仏典、禅のほかに、ヨガやアユルべーダなどの講習が受けられ、人気を博しています。 国指定文化財で、都区内最高の木造建築である釈迦堂(画像:圓融寺)。境内も緑豊か。写真手前の建物が釈迦堂で、奥が仁王門(2018年8月23日、宮崎佳代子撮影)。 禅は1時間コースで無料、写経は2時間(最長)で料金は「お賽銭程度」、禅×YOGA(ヨガ)×アユルべーダの3時間の講習が3000円。どれも、30分程度の住職の講話が含まれています。 このような良心的な料金で様々なプログラムを実施している目的について、住職の阿 順章(おか じゅんしょう)さんに話を伺いました。 阿さんはまだ副住職だった10年ほど前から自身でイベントやセミナーを企画。それは、かつては信仰の対象として日常的に多くの人たちが集まったお寺も、今は「冠婚葬祭の場」というイメージが強くなり、「仏教を伝える場」との寺本来の存在意義が薄れてしまっていることからといいます。 また、仏教について知りたいと思った人が僧侶から直接話を聞ける場がない状況を問題視。人々がお寺に通いやすい雰囲気を作るために、気軽に参加しやすいプログラムを企画するに至ったとのことです。 写経は先代が30年以上前から始めたもので、阿さんが最初に始めたのは禅の会。気軽さをアピールするために「ちょっと座ろう会」としました。とは言っても、釈迦堂でお釈迦様を前に座禅を組む神聖なものです。 座禅を行う、重要文化財の釈迦堂内部(画像:圓融寺)。 座禅と言うと、警策(木製の長い棒)で僧侶にピシャリと叩かれるイメージがありますが、希望者を除いてこれは行わないとのこと。「何かをしなければならない」という思いから解放され、瞑想により心を落ち着け、活力を取り戻してもらうことを目的としているためと話します。 「ムリに『無』になろうとする必要はなく、何かを考えたい人はとことん考えてもらっていいです。そこで気づいたことを人生に活かせればいいので」(阿さん) 「禅×YOGA×アユルべーダ」の組み合わせで、心と体を健康に「禅×YOGA×アユルべーダ」の組み合わせで、心と体を健康に 女性に人気なのが「禅×YOGA×アユルベーダ」のコースで、禅とヨガは本堂の阿弥陀堂で行われます。 阿弥陀仏像が鎮座する阿弥陀堂で行われる、ヨガのレッスン(画像:圓融寺)。 禅とヨガは、本来、ひとつであるべき心と体がアンバランスな状態にあるものを、このふたつに意識を傾けてひとつに結びつけていくためのものとしています。 アユルべーダは古代より確立されている東洋医学で、お釈迦様の時代、修行僧の体のケアにもアユルべーダが取り入れられたそうです。身体の健康は心の健康に繋がるため、この3つ組み合わせ、心と体を健やかにすることを目的としているといいます。 アユルべーダは日本ではエステと思われがちですが、インドでは家庭の中で互いに治療しあったり、身近な人に施すものだといいます。自分でできるようになることを重んじてその方法を学びます。 また、インドではアユルべーダにハーブオイルを使うことが多いですが、元来、自分の住んでいる地域にあるものを使って自然治癒力を高めるものだそうで、お寺ではゴマ油を使用。希望者は体験可能です(人数制限あり)。 新書院の座敷でアユルヴェーダの講義の模様(画像:圓融寺)。 これらのプログラムにおいて、阿さんは「気づき」を大切にしているといいます。 「例えば、私が『仏教ではこういう風に考える』と話すと、参加者が『自分がおかしいと思っていたことが、仏教の考え方と似ていると気づいた』と言って共鳴してくれることがあります。学ぶというより、ちょっとした気づきを得る。それによって人生が豊かなものになる、あるいはお寺が新しいスタート地点になる。それも私の願いのひとつです」(阿さん) 江戸時代に「仁王信仰」が流行した際、圓融寺の黒漆塗りの仁王像も「碑文谷の黒仁王」と呼ばれて崇められ、多くの人々が参詣。品川の宿場町から碑文谷まで巡礼道ができたほどで、今の4倍あったという寺領は、すれ違うこともできないほどごった返したとの記録が残っているそうです。 今もそこはなとなく漂う、人の心を捉えるパワースポット的な雰囲気と、訪れる者への住職の心遣いは、自分を見つめ直すひとときにぴったりな環境を与えてくれるのではないでしょうか。 ●経王山文殊院 圓融寺 ・住所:東京都目黒区碑文谷1丁目22番地22号 ・アクセス:丸ノ内線「西小山駅」より徒歩約15分、東急東横線「学芸大学駅」より徒歩約20分、東急バス「円融寺前」下車 徒歩約3分 ・行事(プログラム):「写経と仏典に親しむ会」「ちょっと座ろう会(朝禅、夜禅)」「禅×YOGA×アユルべーダ」「唯識三十頌」 ・問い合わせ・申込:03-3712-2098(圓融寺) ※「ちょっと座ろう会」「禅×YOGA×アーユルベーダ」は要事前申込。 ※2018年8月現在の情報です。
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