清澄白河で「ワイルドシルク」体験しちゃおう! シルクとは違う着心地やメリットも

2018年9月19日

お出かけ
ULM編集部

清澄白河のブルーボトルコーヒーの近くに、ワイルドシルクのミュージアムがあります。シルクではなくワイルドシルク。ワイルドっていったい何でしょうか。取材しました。


ブルーボトルコーヒーから徒歩1分、木・土曜に開館

 日本におけるサードウェーブコーヒーブームの立役者「ブルーボトルコーヒー 清澄白河 ロースタリー&カフェ」が2015年2月にオープンしたことをきっかけに、「コーヒーの街」として知られるようになった江東区・清澄白河。休日ともなると、コーヒーを片手に街を歩く人たちを見かけるまでになりました。そのような清澄白河に、日本であまり名前を知られていない「ワイルドシルク」を展示したミュージアムがあります。

ワイルドシルクで作られた製品が並ぶ館内(2018年6月28日、ULM編集部撮影)

 その名もずばり「ワイルドシルクミュージアム」。館内はいったいどのようになっているのでしょうか。

「ワイルドシルクミュージアム」は、ブルーボトルコーヒーのすぐ近く、歩いて約1分の距離にあります。マンションの1階部分に入っており、広さは8.2坪と、ミュージアムにしてはこじんまりした造りになっています。酒店だったスペースを改装して2016年2月、オープン。営業は木曜と土曜の2日間のみです。

「ワイルドシルクミュージアム」の外観(2018年6月28日、ULM編集部撮影)

 館内では、家蚕(かさん)や野蚕(やさん)など「絹糸(けんし)昆虫」の繭(まゆ)や糸、関連資料などを常設で展示しているほか、ワイルドシルクで作ったストールや靴下、下着、衣類など約150種類の製品を販売しており、土曜には60~70人が訪れます。館内では、繭を使って工芸品を作ったり、繭から糸を取ったり、手で糸を織ったりできるワークショップも開催しています。なお、製品のオンライン販売は行っていません。

 絹糸昆虫とはその名のとおり、絹(シルク)を吐く昆虫たちの総称で、一般的には蚕(かいこ)が有名です。家蚕は蚕の中でも、品種改良されて家畜化した蚕のことで、いわゆるカイコ。野蚕はカイコ以外の絹糸昆虫のことで、その野蚕が吐く糸で作ったシルクがワイルドシルクなのです。

「ワイルドシルクミュージアム」の前に置かれたプレート(2018年6月28日、ULM編集部撮影)

 家蚕の糸で作られたシルクは滑らかで光沢があります。いわゆる一般的なシルクのイメージです。しかしワイルドシルクは、繊維がシルクより太いため、触感が少しきしんでいるのが特徴です。

軽量で通気性が良く、消臭・抗菌効果も

笑顔を見せる館長のかいこやさん(2018年6月28日、ULM編集部撮影)

「それは、糸の構造がまったく違うからです。身に着けた時の効果も同様ですね」

 こう話すのは、同館館長のかいこやさん(蚕野蚕)です。野蚕の糸は家蚕のものと比べて、無数の穴が開いているため、軽量で通気性が良いのだそうです。また、綿や麻と比べて縮みにくいとも。さらに消臭・抗菌効果やUV効果、体の血流をよくする効果もあるそうです。

 さまざまな魅力をもつワイルドシルクに出会える「ワイルドシルクミュージアム」ですが、なぜ週2日だけの営業なのでしょうか。かいこやさんはその理由について、笑いながら話します。

「自分で野蚕と家蚕の繭を育てているので、とても忙しいんです。最近は旅行にも全然行けていません(笑)」

繭を使ったピン止めを作るワークショップの様子。参加した40代の主婦は今回で3回目の参加だという(2018年6月28日、ULM編集部撮影)

 蚕の繭を育てているのは、区内のマンションの中。広さ8畳の部屋ふたつに、飼育用のビニールハウスなどを置いているそうで、蚕の総数はなんと約1000匹。その6割がエリサン(野蚕)で、1割はカイコ(家蚕)で、そのほかにも、日本固有種のテンサン(野蚕)などを飼っているそうです。

 蚕への餌やりは毎朝8時から。それと並行してハウスの掃除を行い、昼食は14時ごろ。その後、18時ぐらいまで餌やりと掃除、ペアリング(繁殖のための交尾)を行うとのこと。部屋の温度や湿度の管理にも気は抜けないといいます。ちなみに産卵は、年5~6回行われるそうです。

館内では、野蚕「エリサン」の幼虫には餌やり体験ができる。虫が苦手な人には「隠すこともできます」とかいこやさん(2018年6月28日、ULM編集部撮影)

 そのような苦労を経ても、製品用に出荷できるワイルドシルクの原料は年間わずか500g程度だといいます。繭の数に換算すると1250個です。それ加えて、蚕の寿命はわずか2カ月ととても短く管理も大変です。

「確かに作業は大変で、一匹の寿命も短いですが、生命が次の世代へと確実に受け継がれていくさまを見ていると、そのサイクルに大きな連続性を感じ、感動しますね」

身近な健康素材としてアピールしたい

 そのようなかいこやさんが蚕の魅力に出会ったのは10年以上前のことです。大学卒業後、映像関連などの仕事を経て、工房で縫製業に従事していたかいこやさん。シルク衣料の縫製後に出る端切れに注目し、それらで下着や枕カバーを自作していたといいます。生まれつき肌が弱かったかいこやさんですが、それらを身に着けている時だけは、肌にストレスを感じがないことに気づいたそうです。

ワイルドシルクなどに関する貴重な資料がディスプレイされた棚(2018年6月28日、ULM編集部撮影)

 かいこやさんの関心は次第に、シルクの糸やその繭、蚕そのものまでに広がり、2011年、野蚕の研究や商品開発を手掛ける「日本野蚕学会」に入会。学会内で複数の論文を発表するにつれて、「ワイルドシルクを『身近な健康素材』としてアピールしたい」という思いに駆られたといいます。しかし、学会には課題がひとつありました。

「論文などの研究の成果物は多かったのですが、それらを一般公開する場を持っていなかったのです」

家蚕と野蚕の吐く糸の構造の違いを示したポップ(2018年6月28日、ULM編集部撮影)

 研究の成果物を一般公開できたら、さまざまなアドバイスを聞けると考えたかいこやさん。その思いを胸に2016年2月、学会で知り合った専門家たちの協力を得て、「ワイルドシルクミュージアム」をオープンしました。内装は2か月間かけてほぼひとりで手掛けました。

「オープン当初は、自然素材に関心のある方が多く来館していましたが、最近は口コミで来る方が増えました。ブルーボトルのコーヒーを片手に持った若い人たちも覗きに来てくれます」

ワイルドシルクの繭(2018年6月28日、ULM編集部撮影)

 2018年1月には、インドのアッサムで開催された国際野蚕学会のイベントに初めて参加したというかいこやさん。野蚕が市民権を得ているインドや中国のように、日本にもその文化を広げていきたいと考えています。

「ちょっとしたきっかけで、私がワイルドシルクに魅せられたように、来館者の方にこのミュージアムがその入口となってもらえれば」とのことです。

●ワイルドシルクミュージアム
・住所:東京都江東区平野1-5-5
・交通アクセス:半蔵門線「清澄白河駅」から徒歩約8分
・電話番号:090-4019-0081
・営業時間:13:00~18:00 
・定休日:月~水曜、金曜、日曜祝日(不定期)


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