日本の喜劇王2世が絶賛する駅遠そば屋の逸品 浅草「辰巳庵」のしょうゆラーメン【連載】東京レッツラGOGO! マグロ飯(10)
都内散歩と食べ歩きにくわしいフリーライターの下関マグロさんが、都内一押しの「マグロ飯」を紹介します。炎天下の中、国際通りを北上 ある夏の暑い日、銀座線「田原町駅」で下車し、国際通り沿いのお店でランチをいただきましょうかと北へ歩き始めました。国際通りというと沖縄県那覇市が有名ですが、新宿にもありますし、浅草にもあります。 散歩というものは、特定のエリアをウロウロするときもあれば、通りをひたすら歩くときもあり、とても楽しいものです。 台東区千束にある「辰巳庵」のしょうゆラーメン。600円(画像:下関マグロ) 国際通りという名前は、この通りにかつて国際劇場があったからです。劇場ができたのは1937(昭和12)年。銀座線が浅草~上野間で営業を開始したのが1927年ですから、国際劇場ができたとき、すでに田原町駅はあったのですね。 国際劇場へ向かうお客さんは田原町駅で降りて、この国際通りを歩いたそうです。なお国際劇場は、松竹歌劇団や人気歌手などが公演を行っていました。 1982(昭和57)年4月5日の公演を最後に国際劇場は閉鎖されます。そして、その場所に浅草ビューホテル(台東区西浅草)が建設されました。 いくつものよさげなお店を見送り、そんな浅草ビューホテルまでやって来ました。 まっすぐ進むと、言問通りにぶつかります。いよいよお腹は減るし、暑くて汗がダラダラ流れてきました。日陰を見つけて、進みます。さっき通り過ぎた町中華で冷やし中華でも食べればよかったなぁと引き返そうかとも思いましたが、もう少し歩いてみました。 「花園通り」という台東区が建てた道しるべがあり、その先におそば屋さんを見つけました。「辰巳庵」(台東区千束)という看板があります。冷たいおそばもいいですね。外観はかなり歴史がありそうです。 冷やし中華は初めて食べる珍しい味冷やし中華は初めて食べる珍しい味 店構えを見て、以前この店に来たことを思い出しました。のれんが出ていなくて、ネットで検索してみたら、このお店は土曜日が休業で、やって来たのはまさに土曜日。そして今回は火曜日なので、のれんが出ていました。 店に入って壁に貼ってあるメニューを見ると、「冷やしラーメン 700円」というのがありました。おそば屋さんかと思っていましたが、ラーメンもあるんですね。これは食べてみたいですねぇ。早速注文しました。改めてメニューを見ると、このお店、おそば屋さんだけど、洋食や中華のメニューも充実していますね。 この地で創業して、60年以上になるという老舗「辰巳庵」(画像:下関マグロ) 程なく「冷やしラーメン」が到着。持ってきてくれた女性に「写真を撮っていいですか?」と聞きました。 筆者は1996(平成8)年にデジカメを購入して以降、自分が食べたものを撮影してきました。当時は飲食店で料理の写真を撮る人はまだ少なく、カメラを向けていると「なにやってんだ、やめろ」と店のオヤジさんから怒鳴られることもありました。以来、撮影許可をとることにしています。 こちらでは、「どうどうぞ」とおっしゃっていただき、さらに「あちらこちら、食べ歩かれているんですか」と聞かれました。にこやかな女性は、おかみさんでしょうか。下町的な接客にちょっとうれしくなりました。 さて、目の前の「冷やしラーメン」は刻まれたチャーシューとキュウリが大量にのせられています。さらにその上からごま、刻んだ万能ねぎがかかっていますね。冷たいスープは和風です。 初めて食べる味でした。これはおいしいですね。食べ終えると、おかみさんから「どうでした?」と聞かれました。「いやぁ、初めて食べる味でおいしかったです」と素直に感想を言いました。 この日は、国際通りをさら北上し、日比谷線の三ノ輪駅まで歩きました。 店主は3代目、創業は60年以上店主は3代目、創業は60年以上 その後、何度か「辰巳庵」にうかがいました。筆者はこのお店のロケーションが気に入りました。駅前のお店もいいのですが、こちらのようにどの駅からも遠いお店は、散歩がてらに寄れるからいいですね。 このほかにも天丼やカツカレー、中華丼などもいただきましたが、どれもおいしいんですよね。 昼ではなく、夜にうかがったこともあります。「五目そば」をお願いすると、おかみさんから「日本そばですか、中華ですか」と聞かれました。なるほど、両方あるんですね。中華でお願いしました。いっしょに酎ハイもいただきましょう。 やってきた「五目中華」はチャーシュー以外は、和風な感じの具材ですね。ナルト、カニカマ、かまぼこ、わかめ。そうそう、それから王冠のように切られているゆで卵もいいですね。具材をつまみながら、酎ハイをぐびぐび。いやぁ、至福のときですね。スープは塩味、麺は細めのストレートで、おいしくいただきました。 酔いに任せて、お店の創業を聞いてみました。3代目だという大澤良徳(よしのり)さんによれば、創業から60年以上たっているそうです。かなりの老舗ですねぇ。 右が3代目の大澤良徳さんとお母さまのみな子さん(画像:下関マグロ) メニューが、和・洋・中と豊富ですが、どうしてこんなに増えたのか聞いてみました。 「中華でいえば、ラーメンだけはありましたけど、そのほかは私の代になってからです」 ラーメンは以前から人気なのだそうです。 「テレビで東MAXさんがウチの店を取材してくれたんですが、そのときも紹介されたのはラーメンでした。そば屋なのに(笑)」 とのこと。そういえば、ラーメンをまだいただいていませんでした。 甘味のあとにやってくる奥深いうまみ甘味のあとにやってくる奥深いうまみ 次にうかがったとき、迷わずラーメンを注文しました。おかみさんから、「しょうゆにします? それとも塩? あ、みそもありますよ」と言われました。ここは、まあ、王道ということで「しょうゆ」でいきましょう。 やってきたのは、なんとも美しいビジュアル。具材がいいですね。ナルト、かまぼこ、わかめにネギ、チャーシューもいいかんじです。 スープをひとくちいただくと、甘味があります。そのあとに奥深いうまみがやってきます。これはおいしいですねぇ。一気にいただきました。 「どうですか」とおかみさんに聞かれたので、「いやぁ、想像以上のおいしさでしたよ。こちらのお店のいろいろなメニューをいただいて、どれもおいしかったのですが、このしょうゆラーメンは飛びぬけておいしいですね」と答えました。 おかみさんはうれしそうに「そうですか、でもウチのラーメンで一番人気は塩なんですよ」とおっしゃいました。 なんだぁ、言ってよぉ。今度は塩をいただきますね。それじゃ、また来ますとお会計をしました。
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