浅草に「ラーメン二郎」っぽい蕎麦屋があった! 「東京の蕎麦 = 量が少ない」の図式をひっくり返す大盛ぶりとは?
浅草に「そば界の二郎」と呼ばれる日本そば店があるのをご存じでしょうか。フリーライターの猫柳蓮さんが同店の歴史を解説。実際に食しました。浅草にある「そば界の二郎」 東京の定番であるせいろそばはとてもおいしいですが、いかんせん量が多くありません。もっとたらふく食べたいと考えている人は少なくないでしょう。そんなニーズをかなえてくれるお店が、実は都内にあります。名前は「浅草角萬(かどまん)」(台東区浅草)。そのメニューは別名「そば界の(ラーメン)二郎」と呼ばれています。 台東区浅草にある「浅草角萬」(画像:猫柳蓮) ツイッターで浅草角萬を検索すると、そばを味わった人のツイートがたくさん表示されます。それを見ていると、9割近くの人が 「ひやにく大」 について、つぶやいています。 このひやにく大こそが、そばの概念と常識を一変させてくれるメニューなのです。 ひやにく大とは、冷やし肉そばの大盛りのことです。一般的なそば屋で肉そばを注文すると、ほどよい加減に肉がトッピングされたものが出てきますが、浅草角萬は違います。肉とネギがてんこ盛り。しかも、そばの量たるや完食できるかどうか迷うほどです。 もともとは別店舗のメニューだったもともとは別店舗のメニューだった 角萬の屋号を持つ店は都内に何店舗かありますが、そのなかでも浅草角萬は、ひやにく大の存在によって最も知られています。ほかの角萬でも同様のメニューはありますが、浅草角萬がもっとも支持されるのは、まず伝統です。 もともと、ひやにく大が話題になったのは浅草角萬ではなく、台東区竜泉にあった角萬でした。この店は三ノ輪橋駅から少し歩いたところにありましたが、大勢の人がひやにく大を求めて訪れていました。 台東区竜泉は都内でも比較的静かなエリアですが、この店のなかだけは特別。のれんをくぐると、大勢の客が昼時にひやにく大を堪能していたのです。 店内には ・ひやにく ・ひやにく大 ・ひやにく大ぎょく入り(生卵をトッピング) のコールと、客が一心不乱にそばをすする音が絶えませんでした。 在りし日の「角萬 竜泉店」(画像:(C)Google) もちろん、量が多いだけでこれだけの人が集まっているわけではありません。味も都内のそば屋では上位に入るほどの逸品です。巨大などんぶりに盛られたそばには、溶け出した豚肉の脂と出汁が絶妙に絡み、箸を一度付けたら手が止められませんでした。 そばの形状も特徴のひとつです。一般的な東京のそばに比べると数倍太く、それはうどんにも見えるようなインパクト。そして麺のかみ応え……それらがすべて調和し、ほかにはないうまさを生み出していました。ところが、この竜泉の角萬は2018年に閉店してしまったのです。 しかし同店閉店後、旧スタッフが新店を2019年1月にオープン。それが浅草角萬というわけです。オープンから2年以上たちましたが、筆者はあの味を再び体験するために、店へと足を運びました。 変わらなかったあの味変わらなかったあの味 浅草角萬は都営浅草駅から徒歩20分ほどの場所にあります。竜泉のお店も駅から離れていましたが、それにも増して遠くなっています。浅草の繁華街から浅草寺を抜けて住宅地を歩き続けなくてはなりません。しかしわざわざ歩いても食べる価値はあります。 筆者が訪れたのはまだ暑い盛りでした。スマートフォンで場所を確認しつつも、なかなかたどり着くことはありません。しかし、ひやにく大が待っているとなれば話は別です。 「浅草角萬」の所在地(画像:(C)Google) そして到着。外観は、街場にあるそば屋という雰囲気です。店内に入ると、一心不乱にそばを食べているお客さんばかりです。 筆者は迷うことなく、ひやにく大ぎょく入りを注文。運ばれてきたのは、竜泉時代と変わらないガッツリしたものでした。麺の太さと歯ごたえに「そう、これなんだよ」と思いながら、箸は止まりませんでした。 量が少ないと言われる東京のそばに対する固定観念をすべてひっくり返す浅草角萬のそば。寒い冬でもおいしくいただけるそうです。
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