新型コロナで休業中のレジャー施設が無料コンテンツを公開するワケ
新型コロナウイルス感染拡大を受け、休園などの対応を行っている国内のレジャー施設。その一方、施設の動画などを無料で視聴者に提供しています。いったいなぜでしょうか。文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。外出自粛で相次ぐ休園 新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛に呼応して、国内のレジャー施設は休園などの対応を取っています。 感染拡大が深刻な、大都市圏における大型レジャー施設の中でも最も集客規模の大きいテーマパークの状況を見ると、「東京ディズニーランド」「東京ディズニーシー」(以上、千葉県浦安市)は2020年4月19日(日)まで、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(大阪市)は4月12日(日)まで、「サンリオピューロランド」(多摩市落合)では4月上旬までの休園延長が決定しました(3月28日時点。以下同じ)。 サンリオピューロランドの外観(画像:(C)Google) 一方、「レゴランドジャパン」(名古屋市)は3月23日(月)に一部営業を再開しています。その他、首都圏の主要遊園地では一部営業を始めた施設もありましたが、現在はおおむね4月上旬、もしくは中旬までの休園、当面の間の休園となっています。 同じく首都圏の主要動物園と水族館は4月13日(月)や14日ごろまでの休園、もしくは当面の間の休園。また、首都圏の主要博物館、美術館、科学館も当面の間、休館が延長されました。 今は「我慢のとき」 休園を決めた施設は春休みの行楽シーズンをほとんどふいすることになり、集客に大きな打撃を被ることは間違いありません。しかし、営業していれば外出自粛であったとしても相応数の入場者数があり、感染拡大につながる懸念があります。 これらの大型レジャー施設はガバナンスの意識が高く、経営体力が比較的あり、遊園地や動物園、水族館も経営母体が電鉄系の大手企業だったり、公的施設だったりするため、社会的影響を十分に考慮し、国や自治体の意向に沿ったと言えます。今は我慢のときと言えるでしょう。 日本を楽しむインバウンドのイメージ(画像:写真AC) 宿泊施設や観光施設、レジャー施設などの観光産業は外部から人を呼ぶと言う構造上、外的要因に影響を受けやすいというリスクがあるのも事実です。 そもそも日本は地震など災害の多い国であり、物理的に施設や周辺インフラに被害が及ぶだけでなく、営業自粛や風評被害による国内観光客、インバウンド(訪日外国人)の大幅な減少の憂き目にあっています。最たるものは2011年の東日本大震災で、原発事故の風評被害もあり、一気にインバウンドの客足が遠のきました。 最近では夏場の台風や豪雨による水害、火山噴火などがそうです。インバウンドのリスクは災害だけではありません。実は中国や韓国の外交問題も集客に大きな影響を与えています。このようにわが国の観光産業にはさまざまなリスクがあり、常にリスクヘッジを考慮しなくてはいけないのです。 スペシャル動画を公開する施設もスペシャル動画を公開する施設も 今、休園しているレジャー施設では外出を自粛している人に家で少しでも楽しんでもらうため、普段は見られない特別感のある動画を公開するなどの取り組みを行っています。 「東京ディズニーランド」「東京ディズニーシー」は、東京ディズニーリゾート公式YouTubeチャンネルで「ファンタズミック!」や「イッツ・ベリー・ミニー!」などのショーを通常とは違う角度で見られるスペシャル動画を公開しています。 東京ディズニーリゾート公式のYouTubeチャンネル(画像:オリエンタルランド)「サンリオピューロランド」は公式YouTubeチャンネルで「ピューロランド、休んでたって…虹はみんなの上に」と題した動画を公開。ハローキティやマイメロディなどサンリオキャラクターたちが休園中の園内でスタッフと一緒に掃除をしたり、開園準備をしたりしている楽しい内容になっています。 ハローキティ公式チャンネルは、ピューロランドの人気パレード「ミラクルギフトパレード」を特別アングルで見られる動画も公開しています。 ハッシュタグを使ってSNSで積極公開 動物園や水族館は連携し、「#休園中の動物園水族館」のハッシュタグで休園中の動物たちの様子をツイートしています。 「恩賜上野動物園」(台東区上野公園)のパンダの日常生活の様子や「サンシャイン水族館」(豊島区東池袋)のコツメカワウソの散歩や遊びの様子など、かわいい動画が満載です。 恩賜上野動物園公式のツイッター(画像:恩賜上野動物園) また、「札幌市円山動物園」(札幌市)や「神戸市立須磨海浜水族園」(神戸市)など視聴者にリクエストのあった生き物の動画を上げる施設もあります。そのほかに、トカゲやカメ、サメの食事シーンなど普段の来園時にはあまり見られない光景も動画になっており、いくら見ても飽きません。 もともと動物園、水族館は赤ちゃんや面白い行動など、動画の配信は活発に行っていましたが、ここまでいっぺんにたくさんの動画が見られるのは初めてです。 博物館や美術館、科学館では「#エア美術館」や「#自宅でミュージアム」などのハッシュタグで館内の展示品を紹介する動画をツイートしています。 またニコニコ動画内のチャンネル「ニコニコ美術館」は、休館のため休止している企画展を生中継しており、こちらはリアルタイムでコメントできるため、展示品を見ながらおしゃべりして楽しむことができます。 カラオケ業界各社もさまざまな対応をカラオケ業界各社もさまざまな対応を 一方、カラオケや映画館、ボウリングなどの都市型レジャー施設は、首都圏の大手チェーンをはじめとして28日、29日の臨時休業が見られました。専門家委員会に名指しで危険性を指摘されたカラオケですが、消毒を徹底して営業を継続しているものの、客足は遠のいています。 そのカラオケでもさまざまな取り組みが見られます。「カラオケパセラ」では臨時休校により給食がなくなった子どもたちへの支援として、東京、神奈川、大阪の6店舗で3月31日(火)まで、カレーとサラダを1食100円でテークアウトできる「こども食堂」を臨時運営しました。また、テレワークの推奨を受けて、カラオケ個室をコワーキングスペースとして利用できる「おしごとパセラ」も開始しています。 個室内でテレワークができる「テレワークパスポート」をPRする「カラオケの鉄人」のウェブサイト(画像:鉄人化計画)「カラオケの鉄人」でも個室内でテレワークができる「テレワークパスポート」を期間限定で提供。3月27日から4月10日までの11日間(3月28日、29日は除く)、980円(税抜き)のパスポート料金で部屋代とドリンクバーが無料です。 また「JOYSOUND」はテレワークにおける運動不足やストレス発散のために、カラオケの音楽に合わせて歌ったり身体を動かしたりする動画を5月11日(月)までの期間限定で無料公開しています。 東日本大震災以降に変わった企業の価値観 自分たちのできることで少しでも気持ち的に楽になってもらおうと、外出自粛している人を応援する取り組みを展開している施設では、「大変な時には助け合い」という意識が少なからず働いています。 「助け合い」のイメージ(画像:写真AC) この意識は東日本大震災以降に強くなったものです。震災以降、消費者にエシカル(倫理的)消費の意識が高まり、東北の地酒を購入したり、積極的に東北旅行したりと、消費して応援すると言う動向が見られました。 また、SNSの利用が活発化し、消費者とレジャー施設がSNSを通して距離が近くなり、信頼関係がより生まれていると言えます。 今回は「未来の需要を創り出す」というキーワードもあり、今は無理な営業はせず、消費者に少しでも貢献することを考え、落ち着いて平常時になったときには利用者が戻ってきてくれることを期待しています。 感染が一日も早く収束し、気兼ねなくレジャー施設で遊べる日が来ることを願うばかりです。
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