アナ雪からスター・ウォーズまで――人気作品の「コラボカフェ」が商業施設に続々と登場しているワケ
人気の映画やドラマ、さらにタレントとの「コラボカフェ」が相次いでオープンし話題になっています。とくに2019年は大型作品とのコラボが続々と登場しました。その人気の理由に、文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが迫ります。満を持しての「アナ雪2」、カフェも大展開 ここ数年、映画やテレビドラマ、タレントとコラボした飲食施設などの業態が商業施設内に相次いでオープンし、話題になっています。コラボ業態というと、現在はテレビアニメとのコラボが活発に行われていますが、ここでは映画、テレビドラマ、タレントとのコラボを取り上げたいと思います。 2019年12月現在、実施されている話題のコラボ飲食業態の例を挙げると、ディズニー映画の最新作『アナと雪の女王2』のスペシャルカフェ「アナと雪の女王2」OH MY CAFEが2020年1月13日(月祝)まで、「東急プラザ表参道原宿」(渋谷区神宮前)などで実施されています。 「アナと雪の女王2」OH MY CAFE 店内のエルサとオラフ(画像:レッグス/(C)Disney) アナの「欲張りサンドウィッチ&トマトスーププレート」や、エルサの「マフィンサンドとスープパスタのマジカルプレート~不思議な歌声に誘われて~」のオリジナルスープボウル付きメニューでは、スープボウルをお土産に持ち帰ることができます。また2019年12月20日(金)からは「オラフ in Holiday」も加わり、サラダなどの期間限定の新メニューが投入されました。 丸の内では2019年12月25日(水)まで、同20日に全国公開された『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』とコラボの「MARUNOUCHI BRIGHT CHRISTMAS」が実施中。丸ビル、新丸ビル、丸の内オアゾ、丸の内ブリックスクエアなど丸の内の商業施設でのクリスマスイルミネーションのほか、丸ビルには「RISE CRYSTAL CAFE」がオープンし、「暗黒のパスタ」や「ライトサイドソイミルクパフェ」などのコラボメニューが提供されています。 さらに、新丸ビルなどのレストランでもインスパイアメニューを提供。またスター・ウォーズのキャラクターをデザインした手ぬぐいなど、さまざまな店舗で関連グッズが販売され、エリア全体でスター・ウォーズを盛り上げています。 稲垣吾郎さんや、ハリポタのコラボカフェも稲垣吾郎さんや、ハリポタのコラボカフェも ほかにも、2019年10月4日(金)にはタレントの稲垣吾郎さんがディレクションするレストラン&カフェ「BISTRO J_O」(ビストロ ジョー)、「J_O CAFE」(ジョー カフェ)が銀座ベルビア館(中央区銀座)にオープンし、数か月先まで予約が取りにくい状況が続いています。 「J_O」は香取慎吾さんのファッションブランド名にも使われた「JANTJE_ONTEMBAAR」の頭文字をとったもので、やんちゃ・おてんばの語源。 BISTRO J_Oでは稲垣吾郎さんセレクトのワインと料理が提供されています。J_O CAFEでは草彅剛さんプロデュースの「J_O暖(ジョーダン)ハンバーガー」も登場。店内には香取慎吾さんを含め本人が選んだ新進アーティストの作品が展示・販売されています。新しい地図の3人の世界を表現したスペースと言えるでしょう。 「ハリー・ポッター & ファンタスティック・ビースト 魔法ワールドCAFE」の映像エリア(画像:タイトー、ワーナー ブラザース ジャパン/WIZARDING WORLD and all related trademarks, characters, names, and indicia are (C) & (TM) Warner Bros. Entertainment Inc. Publishing Rights c JKR. (s19)) ほかにも、2019年はさまざまな話題のコラボがありました。 2018年11月9日(金)から2019年2月17日(日)までの間、「ハリー・ポッター & ファンタスティック・ビースト 魔法ワールドCAFE」が小田急新宿ミロード(新宿区西新宿)などにオープン。シリーズ最新作「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」の全国公開(2018年11月23日)を記念したもので、ゲームメーカーのタイトー(新宿区新宿)がワーナー ブラザース ジャパン(港区西新橋)と提携して実現した、同コンテンツでは世界初のコラボ飲食業態です。 最新のデジタル技術によって作中の街並みを再現した空間、作品とコラボしたオリジナルメニューなどが提供されました。同施設は反響が高く、会期が延長されたほどです。 また2019年9月20日から11月4日までは、テレビドラマ『きのう何食べた?』のコラボ飲食業態「きのう何食べた?のごはん処」が池袋パルコ(豊島区南池袋)などで実施されました。 人気漫画を実写化したテレビ東京系列のドラマ(原作・よしながふみ)で、高い反響のまま放送が終了した3か月後のことです。日常的な食を通して物語が展開する内容から、クリスマスに主人公が作った「ほうれんそう入りラザニア」などをワンプレートにしたメニューや、ネットで話題となった「大みそかのサッポロ一番みそラーメン」、ドラマ最終話でふたりが食べた「スコーンセット」など、その作品に登場する印象的なメニューをそのまま再現して提供しました。 「ロス」状態のファンニーズに応える演出「ロス」状態のファンニーズに応える演出 映画、テレビドラマ、タレントとのコラボ自体は以前から見られるものです。1980年代にはタレントショップがブームとなりました。また、バラエティや情報番組などテレビ番組とのコラボ飲食業態はテレビ局が主催する大型イベントの一環としてよく実施されてきました。 最近の映画、テレビドラマ、タレントとのコラボ業態はこれらとは異なり、コンテンツの世界を表現していることが特徴です。 人気シリーズ映画の公開前、人気テレビドラマの放送終了後など、コンテンツの新たな情報がなくなった(情報量が少ない)状態、いわゆる「ロス」の状態にある場合、ファンはその対象の情報消費に枯渇していると言えます。その際、コラボ業態はファンに形を変えた情報消費を提供することができます。 特に食は実際に食べに行ったり、購入したりと幅広い層が体験共有をしやすいと言えるでしょう。また、インスタグラムなどのSNSで情報拡散しやすく、食を通して話題提供することは効果的と考えられます。 アナの「欲張りサンドウィッチ&トマトスーププレート」(単品・税込2629円、ボウル付き・4389円)/「アナと雪の女王2」OH MY CAFE(画像:レッグス/(C)Disney) コラボ飲食業態の増加はテレビアニメとのコラボが活発化したことにより、コンテンツとのコラボを専門的に行う店舗やプロデュース企業が現れ、コラボの手法がブラッシュアップしていったことが背景にあります。 映画、テレビドラマ、タレントとのコラボが増えているのは、テレビアニメとのコラボがやや氾濫気味になってきたこともあるかもしれません。コラボは得てしてファンのイメージや期待を裏切ることもありましたが、現在はコンテンツ当事者が深く関わったり、開発者がコンテンツの内容を深く理解したりするなどして、できるだけファンの期待を損なわないよう努力されています。 ライトなファンを取り込むコンテンツ力ライトなファンを取り込むコンテンツ力 映画、テレビドラマ、タレントは、若いファンが中心のテレビアニメと比較するとファン層が幅広く、親子や年齢層の高い人が含まれることもあります。 そのため、商業施設や大人の多いエリアでも実施しやすいことが特徴です。特に長期間制作されている人気シリーズ映画はライトなファンが非常に多いことが特筆されます。 熱心なファンは好きなコンテンツを大切に思っているため、コラボに抵抗感がある人がいることは仕方がありません。ライトなファンは気軽にミニテーマパーク感覚で楽しむ人も多く、最近のコラボ飲食業態が非常に盛況であることから考えると、幅広い層が受け入れていると考えられるでしょう。興味のある方は、ぜひ足を運んでみてください。
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