認定司法書士とは資格試験後に実施される認定考査を、クリアした司法書士のことです。一般的な司法書士の仕事と比較して、より法律的な要素が強い業務を扱えます。
簡易な訴訟対応ができ、多くの人の役に立つ資格として社会に求められる存在です。
難関試験を突破して司法書士資格に合格した後に、認定司法書士になる必要はあるのでしょうか?
この記事では、司法書士と認定司法書士の扱える業務の違いや、認定司法書士になるための手続き、認定司法書士の社会的意義について紹介します。これを読めば、認定司法書士の役割の重要性がわかります。
認定司法書士について
司法書士が特別な研修を受け、通常の司法書士よりも法律に関する高度な知識を用いた業務の遂行ができる人材だと認められると、認定司法書士になれます。
特別研修は、司法書士試験合格発表後の1月下旬に開催。必要な講義などにすべて参加して、与えられた課題を提出すると認定を受けられます。
研修を受けた後、「簡裁訴訟代理等能力認定考査」の試験に合格できれば、認定司法書士の仲間入りです。
資格を取得することで、登記や申請業務以外の幅広い職務に携われるようになります。たとえば、弁護士にしかできない「簡裁訴訟代理関係業務」に対応することができます。
特別研修とよく間違われるのが、試験合格後に開催される新人研修です。二つはまったくの別物なので注意しましょう。
認定司法書士の「簡裁訴訟代理関係業務」とは
「簡裁訴訟代理関係業務」とは、定められた条件の中で司法書士が訴訟代理人を請け負う業務です。
具体例を挙げると、過払い金の返金訴訟、家賃催促、交通事故の損害賠償などです。比較的小規模の民事裁判に訟訴代理人として関われます。
小規模とは、140万円以下の訴訟のことです。140万円超は弁護士の独占業務と定められています。
140万円超でも訴訟に関する書類作成はできるため、中規模以上の民事裁判は、通常の司法書士として業務に携わることができます。
認定司法書士の業務は弁護士の業務内容を縮小したようなイメージです。より深く法律に関わりながら仕事がしたい人におすすめです。
【認定司法書士が請け負える具体的な業務】
- 民事訴訟代理
- 訴え提起前の和解(即決和解)手続き
- 支払督促手続き
- 証拠保全手続き
- 民事保全手続き
- 民事調停手続き
- 少額訴訟債権執行手続き、裁判外の和解の各手続きについて代理する業務
- 仲裁手続き、筆界特定手続の代理業務
認定司法書士になるルート
認定司法書士になるには、司法書士試験合格→特別研修→認定考査→認定司法書士の過程を経ることが必要です。
特別研修は毎年1月下旬から3月までの間に実施されます。司法書士試験の最終合格発表が11月頃なので、合格後の流れで特別研修を受けるとスムーズに資格を取得できます。
司法書士として就職後、認定司法書士を目指すと日々の業務が忙しく、「認定考査」対策に集中できません。認定考査で出題される範囲は、司法書士試験で勉強した内容の応用が多いため、学んだ知識がしっかり定着しているうちに受けることをおすすめします。
特別研修
特別研修は司法書士が「簡裁訴訟代理等関係業務」に携わるために不可欠な能力を学ぶための研修です。
日本司法書士会連合会が開催していて、司法書士資格保有者は誰でも参加できます。
毎年1月下旬から3月頃までに実施され、研修内容は、基本講義(座学)とゼミ(演習)の2項目です。裁判所の協力を受けて実施される法廷傍聴の実務研修や、研修参加者で行う模擬裁判、グループワークなど、実践的な課題があります。
認定司法書士になるための最終試験、「認定考査」を受験するには必ず「特別研修」を受けなければいけません。「特別研修」は司法書士試験に合格した人を対象に実施される「新人研修」の後に開催されます。
認定考査
認定考査は「簡裁訴訟代理等能力認定考査」を省略した呼び名です。例年6月頃に法務省が開催し、これに合格すれば認定司法書士として認めてもらえます。
考査の内容は、事実認定の手法・立証能力、弁論や尋問技術、訴訟代理人にふさわしい倫理観を持ち合わせているかなどです。
認定司法書士になると、司法書士より専門性の高い法律知識を用いた業務ができます。簡易裁判所で当事者の代理人として訴訟に携わったり、裁判に必要な資料を作成したりできます。
弁護士業務の縮小版なら、弁護士がいるのであまり意味がないと考えられがちですが、それは大きな誤解です。独占業務に追われ、弁護士が対応しきれない案件を補うことで、救われる依頼者が数多くいます。
認定考査の合格率は?
認定考査の認定率は毎年、50~70%程度です。
試験は70点満点で評価。40点以上獲得できれば合格。考査は記述式で合計3問出題されます。
およそ2ページある原告と被告の主張を元に、30~350字程度で回答。設問ごとに「本案訴訟手続」「簡裁代理権限」「司法書士倫理」について記述します。
高い認定率ですが、考査を受験するためには、司法書士試験に合格していなければなりません。高難度の試験に合格していることが前提であることから、レベルの高さがわかります。
過去5年間の認定考査合格率は表の通りです。
| 受験者数 | 認定者数 | 認定率 |
|---|
| 2021年 | 591名 | 417名 | 70.6% |
| 2020年 | 625名 | 494名 | 79.0% |
| 2019年 | 936名 | 746名 | 79.7% |
| 2018年 | 874名 | 377名 | 43.1% |
| 2017年 | 915名 | 526名 | 57.5% |
認定司法書士の社会的意義
認定司法書士の割合は、司法書士全体の73.7%です。(2017年6月現在)
試験合格者のほとんどが認定考査を受けるようになり、毎年約1%ずつ認定司法書士の数が増加。単純に考えると2040年には、95%以上の司法書士が認定司法書士になる計算です。
一方で問題となっているのが、司法書士試験の受験者が減少の一途を辿っていることです。
受験者数・合格者が最盛期だった1990年と2016年を比較すると、受験者は3分の2まで減少。このまま減少傾向が続けば、司法書士自体が消えてしまう可能性もあります。
認定司法書士の業務内容を巡り、一部では廃止を唱える声がありますが、議論されるべきは「認定司法書士たちを、より有効的に活躍させるためにどうすべきか」です。
そもそも認定司法書士の制度は、大型案件を優先せざるを得ず小規模案件には手を回せない状態だった、弁護士業界の深刻な人手不足をカバーすべく誕生しました。
困っている依頼主をサポートする制度として、非常に社会的意義がある役割です。
参考:司法書士の会員数問題と今そこにある危機(九州大学大学院法学研究院 七戸克彦教授)
まとめ
司法書士と認定司法書士の違いは、より専門的な法律の知識を使った業務をできるか否かです。
認定司法書士になるには、【司法書士試験に合格→特別研修→認定考査】のすべてをクリアする必要があります。小規模案件の民事裁判の代理人として携われる認定司法書士は、弁護士がフォローしきれない案件をカバーできる、非常に社会的意義がある業務です。
認定司法書士になる司法書士は年々増加しているため、将来的に「司法書士=認定司法書士」になる可能性があります。