ミシュランも包み込んだ420円ポッキリの悦楽 浅草「餃子の王さま」のギョーザ【連載】東京レッツラGOGO! マグロ飯(9)
都内散歩と食べ歩きにくわしいフリーライターの下関マグロさんが、都内一押しの「マグロ飯」を紹介します。なめらかでうまみにあふれた餡 存在は知っているけれども、なかなか入れないお店ってありませんか。 筆者(下関マグロ。食べ歩き評論家)にとってその代表的なお店は、浅草中央通りにある「餃子の王さま」(台東区浅草)でした。何度も店の前まで行くのですが、いつも満員なので「まあ、今度でいいか」ってスルーしていたのです。 看板メニューの「王さまの餃子」。420円(画像:下関マグロ) しかし、意を決して入ってみることに。一階のカウンター席は満席のようでしたが、お店の人が「奥の席が空いていますよ」とおっしゃってくださいました。ただカウンターの席と後ろの壁の間に距離がありません。 と、お客さんたちが席を引いてスペースをつくってくれました。ああ、「この店はいい店だなぁ」と感じながらカウンターの一番奥へ着席。 いただいたのは看板メニューの「王さまの餃子」(420円)とタンメン(630円)、瓶ビール。「王さまの餃子」は外がカリッとよく焼かれていて、餡(あん)はなめらかでうまみにあふれています。 タンメンは太麺で野菜たっぷり。スープがとてもやさしく、ギョーザとの相性もバッチリです。いっきに虜になりました。何度か行くうちに、一階のカウンターだけでなく二階にもテーブル席があることがわかりました。 店名は来店客のひと言で決定店名は来店客のひと言で決定 店内には創業当時のお店の写真が飾ってあります。「昭和二十九年創業当時」と書かれており、のれんには「餃子や」の文字。「ギョウザヤ」とルビがふってあります。 創業が1954年(昭和29年)だという老舗町中華「餃子の王さま」(画像:下関マグロ) たぶん、当時は「餃子」という漢字を読める人が多くはなかったのかもしれません。他にも「中華軽食」という文字や電話番号なども書いてあります。場所は、今の店舗と同じところだそうです。 「創業当時はちゃんとした屋号がなかったのですが、登記する必要があって、名前をどうしようかって考えていたときに、お客さんが『ここのギョーザは、ギョーザの王さまだね』と言ってくださり、そのひと言が店名になったと聞いています」 こう語るのは3代目の佐々木光秋さん。お客さんのつぶやきが店名になったんですね。 そして、気がつけばメディアなどに取り上げられることも多くなり、ミシュランガイドのビブグルマン(5000円以下で満足度の高い料理を楽しめる店)に選ばれたこともあって、行列の絶えないお店になりました。 非・ギョーザ専門店 ふとしたときに、こちらのギョーザが食べたくなります。中毒性があるんですね。3代目にギョーザの餡についてうかがうと、「キャベツ、ニラ、ニンニク、ちょっとだけひき肉が入っています」ととてもシンプル。しかしそのバランスが絶妙で、また食べたくなるんですね。 ちなみにギョーザ専門店と思っている人も多いかもしれませんが、そうではありません。ギョーザ以外のメニューもとてもおいしいのです。 「祖父が浅草で最初に焼きギョーザのお店を始めたんです」とおっしゃる3代目の佐々木光秋さん(画像:下関マグロ) 最初の頃はビールか酎ハイを飲みながら「王さまの餃子」をいただき、〆に麺類をいただくというパターンが多かったです。 おススメは「みそそば」というメニュー。ビジュアルがなんともすてきです。丼にはたっぷりのもやしがのっかっていて、中央にみその玉が。このみそを溶きながらいただきます。最初から全部溶かしてもいいし、少しずつ溶かしながら食べてもいいですね。 現在の黄金トリオ現在の黄金トリオ ご飯ものもけっこうおいしいんですよ。お酒を飲まないときはチャーハンなどもギョーザに合うんです。あるいは、ギョーザとライスでもいいですね。 お気に入りの一品料理は、「ニラレバいため」(780円)です。実はレバーが苦手なので自分からは注文しないのですが、妻といっしょに同店を訪れたとき、妻がこれを注文したのです。 恐る恐るひとくちいただくと、「ん、おいしい。レバーが苦手だけど、ここのはおいしくいただけるぞ」というわけで、以来よく食べています。ランチのときにうかがい、「『王さまの餃子』 + ニラレバいため + 半ライス」という組み合わせが、現在のところの黄金トリオになっています。
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